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雑誌目次

雑誌文献

medicina9巻3号

1972年03月発行

雑誌目次

Editorial

電解質代謝—研究の進歩

著者: 吉利和

ページ範囲:P.303 - P.303

 電解質代謝における最近の進歩といえば,まず大きく分けて3つくらいであろう.しかし何といっても第1にあげられる第三囚子(third factor)がその中心をなすことについては異論はあるまい.生理食塩水を負荷したさいに,尿中にナトリウムの排泄が増加する機序として,糸球体濾過値,アルドステロンにつづいて第3番目に考えられるという意味でとりあげられたものであるが,その本態についての研究が進歩の中心であろう.物理的因子として説明できるという一派と,物質的基礎があると主張する一派とあることは周知のとおりであるが,後者が今や主流となりつつあるようで,ナトリウム排泄因子としてとりあげられつつある.
 しかし何といっても,物質の分離同定が行なわれないうちに生理作用のみが論ぜられているというのは,変則といわざるを得ない.一日も早くこの物質が同定されることを望みたい.それにしても,この状態は,かつて浮腫性疾患患者尿中に抗利尿,ナトリウム貯留因子が存在するという事実が多くの人にわかっていながら,アルドステロン(当時はまたelectrocortin)として抽出されるまでにはかなりの時間がかかったのとよく似ているようである.

今月の主題

むくみの成因

著者: 関清

ページ範囲:P.304 - P.311

 むくみの成因を論じる場合は,全身性因子と局所性因子に分けて考えるのが便利である.局所性因子(組織因子)面から,むくみは3型に分けられる.その分類・鑑別法も含めて,むくみの成因について現在の知見と問題点を…….

(座談会)むくみの鑑別診断と治療

著者: 大野丞二 ,   長坂昌人 ,   入江実 ,   日野原重明

ページ範囲:P.312 - P.321

 むくみは,長年にわたって,臨床医学における最も興味あるテーマのひとつとされてきた.20世紀初頭を境にして,その病態に対する解明がすすめられ,近年は電解質あるいはホルモンなど多方面からの追究も盛んであるという.一般臨床家に必要な,むくみをめぐる最新の話題をご披露いただいた.

Leading Article

医学における膜透過性

著者: 中垣正幸

ページ範囲:P.288 - P.289

膜透過性と生命維持
 生体膜の透過性は生命の維持に重要な役割を演じている.生命現象ははなはだ複雑であって,最近の生物科学の急速な発展にもかかわらず生命の本質はまだ明らかにされたとはいいがたい.このような生命現象の複雑さは,1つには生体の各種の機能が,分化と統合の上に成り立っていることによる.すなわち1つの生体は多くの部分に細かく区切られており,各部分がそれぞれ独自の機能を発揮して生命を維持しているのであって,このような分化は生体膜によって実現されているのである.しかしながら,これらの各部分は互いに全く独立ではなく,各部分が互いに連携を保ち,それらの機能の統合の上に立って1つの生命が維持されているのであって,この連携は膜透過によって行なわれているのである,したがって生体膜の透過性を明らかにすることは生命現象を理解する上できわめて重要である。また膜透過性に変調をきたせばこれが病気の原因となり,薬物によって膜透過性を変化させ得れば薬理作用が発現される.たとえばインシュリンは細胞膜に作用してグルコース透過性を増大させ,細胞内へのグルコースの移行を促し,グリコーゲンの合成を促進するといわれている.

図解対症検査 消化器シリーズ・11

下血

著者: 山口保

ページ範囲:P.294 - P.297

 下血とは,血液が肛門を通して排泄されることである.黒色で光沢のある軟便のテール便と,顕血としてみられる血便とに分けられる.テール便は,いわゆる海苔の佃煮様と形容されるが,原則として上部消化管からの出血でその出血量は50ml以上と言われる.血便は,主として下部消化管に出血巣がある際にみられる.下血は吐血と共に,消化管顕出血として,臨床上極めて重要な症状である書実地医家にとって,しばしば経験する要態であり,適切な処置を失えば,その予後は非常に重篤である.
 内科と外科では,その頻度はやや異なるが,シヨック症状を伴う症例も少なくない.急性腹部症であり,輸血・輸液の救急処置を行ないつつ,外科医と綿密な連繋をとりながら,その出血の原因を決定することを迫られる.

カラーグラフ

Lymphography

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.300 - P.301

 Kinmonthによる手技の確立および油性造影剤の登場とともに,Lymphographyは今日では広く,リンパ系疾患,四肢浮腫,悪性腫瘍のリンパ節転移の有無あるいは程度および範囲,縦隔および胸管異常,後腹膜疾患などの診断,リンパ節廓清および放射線療法の指針あるいは効果判定などに用いられている.主に,1)下肢・骨盤・後腹膜・胸管,2)上肢・腋窩・鎖骨上窩,3)乳房およびその周囲,腋窩,などのリンパ系の造影が行なわれている.

診断のポイント

蛋白喪失性胃腸症

著者: 村尾覚

ページ範囲:P.323 - P.327

はじめに
 浮腫の成因の1つに血清蛋白濃度の低下があり,その疾患としてはネフローゼ症候群や肝硬変が臨床的に最も多く,また栄養失調症などでもこの関係がみられることはよく知られている.この際の浮腫の原因の主要な役割は血中アルブミン低下であることも周知のところである.いずれにせよ,浮腫が低蛋白血症によって生じている場合は,その原因が一般診察や簡単な検査で容易に推定しうる場合が大部分である.一方,このような低蛋白血症を生ずる原因が全くわからず,本態性低蛋白血症と呼ばれていた特殊疾患がまれながら存在することも昔から知られていたが,今日では(1960年以後)少なくもその大部分は蛋白喪失性胃腸症に属するものであることが明らかにされている.また既知の胃腸疾患で特に著明な低蛋白血症を伴うことがあり,漠然と吸収不全と考えられていたものの中にも蛋白喪失性胃腸症という特殊機転が関与していることもわかっているし,収縮性心膜炎にしばしば合併する低蛋白血症も,うっ血肝における蛋白代謝異常よりも,この特殊機転が大きな役割を果たしていることが明らかになっている.
 血中蛋白の正常分解代謝過程に胃腸系が関与し,胃腸系に血中蛋白が漏出することは1957年頃から,初めは免疫学的手法により,次いで放射性書同位原素使用により,しだいに明らかになり,別記の今日蛋白喪失性胃腸症を合併しうる諸疾患の中には,この過程が過剰に働いて低蛋白血症の原因となっているものがあることも1960年前後より次々と確立された.その臨床的検査法としてGordonの131I-PVP試験(1959)が導入され,この臨床概念確立の上に大きな役割を果たし,また比較的簡単に本症の診断を可能にしていることも既によく知られている.

頸静脈怒張をみたとき

著者: 岸本道太

ページ範囲:P.328 - P.330

はじめに
 頸静脈の怒張は静脈圧の上昇,今少しつきつめていうと右心房圧の上昇の反映を意味する.頸静脈の怒張を示す疾患は後に述べるように,右心不全,心臓タンポナーデ,上大静脈閉塞症候群(superior vena caval syndrome)などいろいろあるが,その前に「病的な頸静脈の怒張」の定義について述べる必要があろう.

治療のポイント

利尿剤の使いかた

著者: 柴垣昌功

ページ範囲:P.332 - P.337

 最近,各種の強力な利尿剤が次々に開発され,浮腫や高血圧の管理はきわめて容易になった.利尿剤といえば水銀剤しかなかった十数年前とくらべれば,昔日の感が深い.
 それだけに,利尿剤の種類がふえてくれば,それぞれのもつ特性をよく理解した上で,個々の患者の病態にあわせてこれらを上手に使いわけることが,治療を成功させ,不快な副作用を未然に防ぐ上で大切になつてこよう.

女性のむくみとその扱いかた—特発性浮腫の成因と治療

著者: 小沢幸雄

ページ範囲:P.338 - P.341

はじめに
 原因不明の浮腫を主訴とする女性の診断検査を進めると,その成因が肥満に伴う静脈瘤,肥満に伴わない静脈瘤,貧血,潜在性心不全,甲状腺機能低下,低カリウム血,アレルギー,薬物などによる浮腫,リンパ浮腫,血管神経浮腫と判ることもあるが,成因の全く判らない浮腫に遭遇する場合がしばしばある.その中とくに月経周期と関連し月経前期に浮腫の増強する場合を月経前浮腫,妊娠と関連している場合を妊娠浮腫,閉経期に現われるものを更年期浮腫と呼ぶが,こういった女性特有の生理的現象と必ずしも結びつかず成因不明の場合,特発性浮腫の範疇に入れる.
 これらの名前は原因不明の浮腫を少しでも分類区別して考えようとする努力の上に立ったものであるが,同じ性ホルモンの基盤の上に互いに関連して臨床的にも厳密に区別し難く,浮腫も症状も治療も共通した点が多い.成因の判った如く分類されている心腎肝に由来する浮腫でさえ,未だその成因の核心には触れられていない今日,原因不明の特発性浮腫には,浮腫の成因として可能性のある多くの因子が羅列されているといってよい.

グラフ

じん肺のX線像

著者: 中島重徳

ページ範囲:P.344 - P.349

 じん肺は,その歴史は古いが,最近,産業の発達とともに,種々の無機および有機じんの大気内への排出が増加し,その原因粉じんの種類も増加している,主なじん肺の種類は表1のごとくである.
 じん肺のX線像を理解するには,じん肺の病理像を把握しておかねばならないが,佐野は,肺の病理像をリンパ型(大結節型)と肺胞型(小結節型)に分け,リンパ型は,nodularまたはmicrono-dularであり,肺胞型はpunctiformまたはlinear markingとしている.結節の大きさ,線維化,局所肺気腫および融合の程度などによって陰影も変化してくる.わが国のじん肺法のX線型分類は表2に示すごとくである.ここでは2,3の症例を中心に供覧する.

症例

慢性静脈不全症の2例

著者: 関清 ,   石田恵一

ページ範囲:P.350 - P.353

緒言
 慢性静脈不全は腸骨大腿部の血栓性静脈炎,静脈瘤,その他外部からの圧迫,腫瘍の浸潤,広範な血管腫,静脈系の先天性発育不全あるいは動静脈瘻などのために下肢の静脈血行不全ないしうっ滞をきたした状態をいう.そのうち,先天性のものは,Curtius1)(1928)が優性遺伝の可能性を示唆して以来,欧米の文献には散見され,Allen2)の成書にも記載されている書筆者らは,四肢,殊に下肢に若年より発生し,慢性の経過をとり,浮腫を主訴とした先天性と思われる慢性静脈不全の2例を経験したので報告する.

全身性疾患と心電図

代謝異常と心電図

著者: 宮下英夫

ページ範囲:P.354 - P.356

 "代謝異常と心電図"を考える場合,何らかの代謝異常がどのような変化を心電図にもたらすかという面と,ある種の特徴的な心電図変化から,何らかの代謝異常を推定できるかという面とがある.このうち特に後者の面が臨床的には重要であり,この意味で問題にされるのは,電解質代謝異常であろう.もちろん電解質代謝異常も,flamephotometerで測定すればわかるわけであるが,心電図はもっとも簡単にその様相を想像できるという意味で見逃がすわけにはゆかない.またときには,高K血症の場合のごとく,直接,心停止と直結する危険のあるような場合には,電解質の測定に先行して心電図がとられるべきである.
今日では,電解質代謝異常と心電図変化については周知の事実としてみとめられているが,実際の臨床上にはまだまだ不明の点が少なくないしまた最近の心疾患の治療の進歩とともに新たに注意すべき点が少なくない.次に電解質代謝異常,ことにKの異常について注意すべき点を含んだ2症例をあげる.

疫学

肺動脈血栓塞栓症

著者: 村尾誠 ,   長谷川淳

ページ範囲:P.360 - P.361

 肺血栓塞栓症に関する疫学の研究方法としては分析疫学的方法,特に症例調査による研究方法がとられ,その方法に基づいた成績の報告が多い.この研究方法で重要なことは本症の診断が正確にされており,またその記載が確実にされていなければならないということであるが,臨床医も病理学者も本症への関心の持ちかたに差があり,さらに観察基準も一定していないことが諸統計間の相違を生ずる一因になっていると考えられる.たとえば,本邦で最も信頼度の高い総合資料と思われる日本病理剖検輯報によって,剖検時の主要病変としてゴチック活字で特記された1964-1968年の本症(114症例)について,その臨床診断名と比較してみると,肺血栓塞栓硬塞症としているのが12.3%であり,心不全14%,肺炎10.5%,心筋硬塞4.3%,閉塞性肺疾患2.6%,冠硬化症0.8%,肺癌1.7%で,その他胸膜炎,肺化膿症,縦隔腫瘍等4.3%,脳卒中,高血圧性脳症,症候性精神病等と記載されたもの14.0%,診断不明のまま急死したと思われる症例が10.5%を占めている.また,Veterans Administration Hospital(Boston)において,本症と確定した72症例の最初の臨床診断が本症と診断されたものは58%であり,残りは心不全35%,肺炎17%,その他心筋硬塞,閉塞性肺疾患,冠疾患,肺癌等であった1).剖検時の主要病変と臨床診断との比較にも問題もあろうが,肺血栓塞栓症の頻度の高い欧米においてさえ前述の統計のように本症以外の疾患と診断することも多いことを考えると,本症の臨床統計,症例調査等の疫学的資料の検討・整理にはそれなりの考慮が必要であろう.

新しい検査技術

TPHAテスト

著者: 富沢孝之

ページ範囲:P.362 - P.363

ワ氏反応とTPHA
 従来ワッセルマン(ワ氏)反応といわれ,現在行なわれているものは,牛心臓から精製した,カルジオライピンとレシチン,コレステロールという脂質を(梅毒血清によりよく陽性に出やすく,3者を適当な比でまぜあわして作られたものを)抗原として反応を行なっているものである.
 ゆえにトレポネーマ,パリーダム(梅毒病原体)の感染があると,ほとんど陽性にでて鋭敏度のすぐれた反応である.しかしながら梅毒以外にも時に陽性を呈し,特異性がややおちるいわゆる生物学的偽陽性(Biological Folse Positive, BFP)というもので,このワ氏反応陽性例中,少なくとも10%あるといわれている.なにもこの反応ばかりではなく,全生物学的反応においては,その性格上,このような非特異反応が出ることは止むを得ないわけで,100%の正確さを求めることは困難なことである.

救急診療

いわゆるガス中毒患者が運びこまれたら

著者: 武谷敬之

ページ範囲:P.364 - P.366

 日常みられるガス中毒の大半は,一酸化炭素中毒であろう.一酸化炭素(CO)は,都市ガス中に10-20%,自動車の排気ガスには1-7%の致死的濃度が含まれている.さらに家庭燃料(石油,プロパン,石炭,木炭)の不完全燃焼でも,無色,無臭の状態で発生してくる.
 本症の本態は,吸入されたCOが,血中のヘモグロビンと結びつき,酸素運搬能のない一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)が形成される結果,惹起されるHaelnoglobic hypoxiaである.その治療の眼目はCO-Hbを速やかに解離させることにあるが,それだけでは不十分である.以下にのべる本症の治療に関する基本的考えかたは,他の原因によるガス中毒の際の治療にも,また応用できるであろう.

小児診療

小児に対する注射

著者: 浦田久

ページ範囲:P.368 - P.369

注射をするまえに
 日常小児科の臨床において,輸液,緊急の場合,薬剤も摂取できないような重症など特殊の場合以外には注射を必要とすることはほとんどない.
 一般にかぜなどの発熱に対して,安易に下熱剤の注射が行なわれることが多いが,対症的に一時熱を抑えることが直接治癒に結びつくわけではないし,一時的に下熱させても,かぜはかぜで一定の経過をたどる.乳幼児は成人に比べ熱に対して強く,かぜのような一般状態がおかされない病気では,たとえ39℃位の高熱があってもあまり苦痛を感じないのがふつうである.

統計

わが国の傷病状況について

著者: 小林秀資

ページ範囲:P.370 - P.372

 先月号では,患者調査よりわが国の患者数の推計数を報告したのであるが,これは医療施設を通じての調査であるので,施設を利用しない傷病者(潜在患者)の把握は不可能である.したがって,国民の傷病量を把握するには一般住民側から調査する必要がある.
 今月号では,昭和45年9月30日から15日間にわたって,全国2万1千世帯,7万7千人を対象として行なわれた国民健康調査の概況の一部を紹介したい.

免疫学入門

Ⅲ.免疫反応の調節機構

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.375 - P.379

 前回は免疫細胞の活動の結果認められるもっとも重大な反応,すなわちつくられた血中抗体の性質を中心としてのべたが,今回はかかる免疫反応の調節機構を中心としてのべる.
 同一の抗原刺激に対する免疫反応において,同一種属でも,各個体により著しい差が認められることは昔から有名である.たとえば高度純系(遺伝的に単一に近いある系)のマウスやモルモットは同一の免疫反応を示し,他の純系のそれとは明らかに反応に差がみられる.このことは免疫反応が遺伝的な要素によってかなり強く規定されていることを意味している.

臨床家の薬理学

Ⅲ.筋弛緩薬

著者: 今井昭一

ページ範囲:P.380 - P.382

 筋弛緩薬という言葉は,通常,運動神経と横紋筋との接合部である神経筋接合部(Neurornuscu-lar junction)に作用して,横紋筋の弛緩を起こす薬物,すなわち神経筋遮断薬(Neuromuscularblocking agent)を指すのに用いられているが,本稿では,中枢性に横紋筋の弛緩を起こす薬物もその中に含めることにする.臨床的には,痙攣性疾患や外科的手術の際に用いられる.

専門医に聞く・1

不整脈

著者: 太田怜 ,   五十嵐正男

ページ範囲:P.384 - P.390

【質問1】
 普段の心電図は図2a-dの通りで,日によって,形がずいぶん違っていますが,これはどういうことでしょうか.

私の治療方針

じんま疹—考え方と治療

著者: 杉田和春 ,   野波英一郎

ページ範囲:P.392 - P.396

 本欄では,じんま疹について,専門を異にする2人の専門医に日頃のじんま疹についての考え方・治療方針をご披歴いただいた.
 1つの病気について,2人で論ずる場合,全然違うことを書いてはおかしいし,同じことを書いたら2人で書く意味がなくなるのでむずかしい,という筆者のご意見もあったが,むしろ治療にいたる思考過程の違いに意味があろうと考える.

medicina CPC

右肩痛,腹痛に始まり,食欲不振,やせを伴って入院してきた65歳男子の例

著者: 斎藤隆 ,   星和夫 ,   古屋光太郎 ,   光永慶吉 ,   石井兼央

ページ範囲:P.397 - P.405

症例 T. H. 65歳 男 医師
 既往歴家族歴 特記すべきことなし.飲酒(-),喫煙20本/日.
 現病歴 昭和42年5月初めより右肩関節部に運動時疼痛あり.5月10日上腹部激痛,その後右季肋鈍痛が持続す.食欲良好,悪心嘔吐なし.5月24日国立がんセンター病院受診し,胆嚢造影で胆石症と診断.胃検査では著変なく,血液生化学は高コレステロール血症〔396mg/dZ)以外は正常.肝を乳線上2横指触知し下縁に圧痛あり.腹痛は軽快したが右肩の疼痛増悪し,7月18日および27日に某病院整形外科にてX線検査をうけた.

話題

興味あるいくつかの症例報告など—第9回関東甲信越糖尿病学会地方会から

著者: 池田義雄

ページ範囲:P.358 - P.358

 第9回の関東甲信越糖尿病学会地方会は,2月5日,日本医大講堂で開かれた書底冷えのする土曜日の午後にもかかわらず,利書地会長(日医大)のもとに多くの参会者があり,充実した学会がもたれた.

今日的問題が集約されていた例会—第100回「実地医家のための会」例会から

著者: 編集室

ページ範囲:P.407 - P.407

 全国的な開業医師たちの集まりである「実地医家のための会」の第100回例会が,さる1月16日,麻布の都市センターホールで開催された。シンポジウムのテーマは「患者と医師」で,いわゆる医師・患者関係から医の倫理,医学教育にまで広く討議が及んだ.その中からいくつか話題を拾ってみよう.
 冒頭,目黒区の浦田卓氏は「これからの医の倫理を求めて」と題して,個人や地域社会を超えた入類の歴史と将来という巨視的な観点からこれからの医師のあり方についてのべた.一つは遺伝学の観点から医師はみずから用いる手段書くすりや診断手技など一が全体としての人類の遺伝子に悪影響を与えないよう細心の注意を払うべきであるとのべ,また先進国における著しい工業化の促進,人口の急増による公害問題の発生という事態にあって,地球は生物・無生物を含めて,一つの有機的なシステムと見做すべきであり,人間は入間以外の全生物との共存共栄をはかる生物倫理に基づいて行動すべきである,とのべた.すなわち,現代の医師は単に地域社会の人々の生命を守り,これを延長し,かつ人口増加をはかるというだけで安んじておれない事態にたち到っている,としてこれからの医師は人類の未来という点に深く思いをいたすべきであると結んだ.

病院訪問

日本に唯一の塵肺専門病院—医療法人・博生会西多摩病院

著者: 編集室

ページ範囲:P.408 - P.411

●誰もやらぬなら自分が…
 「ここのほかには,世界中にあと3つあるだけ」と院長の平田重吉先生は事もなげに言う.医療法人・博生会西多摩病院(以下西多摩病院と略)は,公・私立を含め,日本に唯一の塵肺症専門の病院である,病床総数126床.『塵肺法』の適用を受ける,塵肺症の管理区分VIに該当する要治療患者の入院加療だけを行なっている.外来診療はやらない.まことに世界でも珍しい病院である.
 この西多摩病院は,去る2月12日に,15歳の誕生日を祝ったばかりだ.『塵肺法』の成立を3年後にひかえた,昭和32年の創立であった.

インタビュー

生涯研修と医療のシステム化を目ざして—上田篤次郎先生にきく

著者: 編集室

ページ範囲:P.412 - P.414

 本誌前号で「実地医家のための会」が第99回例会('71年12月)において生涯教育をとりあげたことを話題として紹介した(83頁)."生涯教育"とは耳新しいことばだが,その内容・現状などについて,さっそく同会員の上田先生に意見をきいてみた.

読後随想

—断絶の時代 P. F. ドラッカー,林雄二郎訳 悪魔の辞典 Ambrois Bierce,西川正身選訳—知識とは何か—持続の問題(その1)

著者: 長洲光太郎

ページ範囲:P.415 - P.417

1.暗記は知識であるか?
 いわば保健サービスを業とするわれわれ医者から見ると,次に引用するドラッカーの文の前半は合点のゆかぬ点があるが,それだからといって彼の言がすべてこれ荒唐無稽のざれ言だとは言いきれまい.括弧内は私が補足した.
 「製薬産業はこの30年間に薬の用法をほとんど変えてしまった.新薬のおかげで健康管理というものは,マーケットでの最善の買物となり……—(社会か会社が買手という意味なのであろう)—保健サービスとその財源調達とはいずこにおいても政府の(利益を約束する最大の)関心事となってきたわけである.(それにしては政府の投資は貧弱だと言わざるをえないが.)

診療相談室

いわゆる"血の道症"の定義

著者: 九嶋勝司

ページ範囲:P.419 - P.420

質問 いわゆる"血の道症"の定義について九嶋先生に. (神奈川A生)

病理夜話

ノイローゼ(その2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.421 - P.421

 こんな調子で入院したが,今度の痛みは半日以上続いた.モルヒネやら,ブスコパンやら注射したがなかなかおさまらない.それでも翌日になったら痛みは無くなった.このへんでソロソロ退院したほうがいいかな,それとも思い切って手術をするかな,と考えているうちに黄疸が出てきた.
 おそらく結石の1つが胆嚢から飛び出して,総胆管に入り込んだのだろう.そのために胆汁が十二指腸に流れなくなったものだろう.とすればこのままでは死んでしまう,手術をするよりほかに方法が無い書ようやく手術の決心をした.手術は3月24日に決定した.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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