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文献詳細

雑誌文献

medicina9巻5号

1972年05月発行

文献概要

Leading Article

Sutherlandとcyclic AMP

著者: 吉田博1

所属機関: 1阪大薬理

ページ範囲:P.580 - P.581

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cyclic AMP発見のきっかけ
 アドレナリンを注射すると血糖が上昇することは古くから知られている.同様に肝臓の灌流液中にあるいは肝切片浮遊液に,アドレナリンを添加しても肝臓からブドウ糖が遊出してくる,そしてこのとき肝臓中のグリコーゲンは減少する.すなわちグリコーゲンからブドウ糖への解糖系がアドレナリンで促進される,しかし,細胞をつぶした肝臓エキスなどを用いると,いくらアドレナリンを添加しても解糖作用の促進は見られない.このようにアドレナリンなどのホルモン作用の発現には完全な細胞構造が必要であるとの考えが永く医学界の常識となってきた.これを打ち破ったのが昨年ノーベル賞(医学生理学賞)を受けたSutherlandである.
 1950年代の中頃,アメリカ,オハイオ州のウェスターンリザーブ大学の薬理学教室でアドレナリンの解糖促進効果を細胞をつぶした系(無細胞系)で再現しようとの研究に没頭にしていたSutherlandは,この研究の経過中にcyclic AMPを発見した.肝臓ホモジィネートを遠心して得られた顆粒分画にATP,Mg++とアドレナリンとを共存させ反応させると熱に安定なある因子ができ,この因子を肝臓の可溶性分画に添加すると肝細胞にアドレナリンを添加したのと同様な効果,すなわち解糖系の促進が見られたのである.この耐熱性の解糖促進因子が3′,5′-cyclic adenosine monophosphateなる構造を持ったものであることが明らかとなったのは1958年のことである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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