文献詳細
文献概要
疫学
過敏性大腸症候群
著者: 中野重行1 中川哲也2
所属機関: 1九大・薬品作用学(薬学部) 2九大・心療内科
ページ範囲:P.654 - P.655
文献購入ページに移動下痢,便秘症状は,日常臨床でしばしば遭遇する症状である.これらの便通異常,および腹痛,ガス症状などを主訴とし,しかも各種の検査によっても,これらの症状の発生を説明するに足る器質的病変が証明されず,心理的に積極的に誘因と考えられるものが認められ,従って治療上心理療法を含めた機能疾患としての取扱いが重要な意義をもつ疾病像が,過敏性大腸症候群(Irritablecolon syndrome)と名付けられていることは衆知の通りである.
本症の初発ないしは再発・再燃の誘因として,心理的問題が高い頻度で認められることは諸家の報告しているところであるが,本症の発生のmechanismを心理的側面からみると,次の2点が重要と考えられる.すなわち,第1に,心理的問題(葛藤状態など)によって実際に大腸の機能異常が起こるかということ,換言すれば,情動と大腸機能との関連性が実証されるかということと,第2に,もしそのようにして大腸機能異常が起こるとしたら,どの程度からを病的と考えるかということ,換言すれば,患者自身の病感(自分の状態を病気と感じること)がどのようにして出現するかということである.第1の点については,これも幾多の諸家の実験的研究がある(Graceら,Almyら,福元).
掲載誌情報