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特集 これだけは知っておきたい診断のポイント III.消化管 6.十二指腸とその周辺
Blind loop syndrome
著者: 丹羽寛文1
所属機関: 1東大・第1内科
ページ範囲:P.1042 - P.1045
文献購入ページに移動外科手術で小腸をかなり広範囲に切除しても,吸収障害をきたすことは少ないものである.しかし,小大腸間,あるいは小腸と小腸の間でも側々吻合や側端吻合が行なわれている症例では,時に閉鎖された腸管断端が拡張して盲嚢ができたり,空置された腸管内に腸内容が停滞する場合には,腹痛や腹部膨満感などの不定の消化器症状をみるとともに,高色素性貧血,舌炎,体重減少,下痢その他の吸収障害にもとづく諸症状をきたすことが知られている.これがblind loop syndromeとよばれるものである.本症候群の頻度は多くはないが,抗生物質の投与で臨床症状の改善がみられ,さらに外科的に盲嚢部を除去する,あるいは空置された腸管の走向を正常に戻せば吸収障害は消失するので,吸収障害をきたす他の疾患との鑑別が重要である.なお本症候群は腸管内に内容の停滞があって,細菌の増殖が生じた場合にみられるので,手術後の盲嚢形成ばかりでなく小腸憩室や,術後潰瘍の穿孔などによる小大腸間の瘻孔形成に基づく腸管短絡にさいしても認められる.また時に結核,クローン病,腫瘍,癒着その他の原因による小腸の狭窄でもみられることがある.いずれにしても本症候群は腸内容の停滞にもとづく腸管内細菌叢の変化によるV.B12の吸収障害が主因であって,それに種々の物質の吸収障害が加わったものがその本態であると考えられている.
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