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文献詳細

雑誌文献

medicina9巻7号

1972年07月発行

文献概要

特集 これだけは知っておきたい診断のポイント IX.腎・泌尿器系 1.尿定性検査異常をどう考えるか

尿沈渣からわかること

著者: 冨田重良1

所属機関: 1県立尼崎病院・研究検査部

ページ範囲:P.1332 - P.1334

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尿沈渣鏡検のすすめ
 最近,中央検査室の整備,臨床検査の発展につれて,医師自身による尿沈渣の鏡検はなおざりにされる傾向があるようである.確かに尿沈渣鏡検の数量的精度は他の分析的諸検査に比し著しく劣っており,また形態学的検査であるからその判定には多少の知識熟練も必要である.しかし尿沈渣の成分そのものは腎・尿路系組織より尿中に排泄されたものであって,腎・尿路系病変部の直接の情報の担い手であり,その鏡検により他の手段では得られない貴重な情報が得られるはずである.しかも医師自身が鏡検をするならば,その場で結果がわかり,ただちに必要な処置をとりうる便利さもある.
 症例 64歳の家婦.10年まえより関節リウマチにて副腎皮質ホルモンその他の治療を受けていた.受診の1カ月まえより悪寒を伴う高熱,頻回の嘔吐をきたすようになり,医治によるも完全には治らず,最近再び症状悪化して強度の全身衰弱でもって緊急来院した.尿蛋白陽性,沈渣は典型的な腎盂腎炎の像を呈しており,Kanamycin,Aminobenzyl-penicllinの投与により完治した.起炎菌たる大腸菌がAminobenzyl-penicillinおよびCephalosporin以外には耐性を有していた事実より,病因不明のままの中途半端な化学療法が病気遷延の原因と推測され,尿沈渣鏡検を怠ってはならぬことを示す一例といえよう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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