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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科1巻2号

1973年08月発行

雑誌目次

「脳神経外科」誌の発刊に際して思う

著者: 都留美都雄

ページ範囲:P.91 - P.92

 現在の日本脳・神経外科学会が研究会として,その第1回の会合を持ったのが,昭和23年5月3日の事である.その研究会の発足に世話人となられた方々が,その研究会の機関誌として「脳及神経」を発行されることになり,その第1号が発行されたのが,昭和23年11月1日のことである.その第1号の後記の中で,第1回日本脳・神経外科研究会の会長となられた故斎藤真教授が,「脳及神経」発刊に際しての考え方を記して居られる.それによると「脳及神経」は,医学の脳及び神経に於ける各分科の分れた研究を綜合して合成への道を選んだのが,此の「脳及神経」である.従来脳の方は専門的に研究せられたのであるが,基礎医学科の研究と臨床医学科の研究を綜合集積したのがこの雑誌である.であるから理論的の研究発表論文も掲載され又一方実地医家等に対して,脳及び神経疾患の診断の手ほどきものせられる.此の雑誌が実地医家に対して脳神経に幾分興味をもつ様に作用し,研究家に対して広く利用せられる様になれば吾等編輯同人の喜びはこれにしくものはない,と記されてある.
 又同じ後記の中に,清水健太郎教授は,医学のうち日本で最も後れている一部門,脳神経外科というものを,どうかして先進国の水準にまで高めようと懸命の努力をして来た我々の念願の一つが叶って,ここに「専門雑誌の発行」ということが漸く達成した,とも記されている.

総説

Microneurosurgeryの現況

著者: 佐野圭司

ページ範囲:P.93 - P.102

はじめに
 外科のなかのほかの領域でもそうであるが,脳神経外科にはphilosophicalな面が強い分野と,surgicalな面が表に立つ分野とがある.前者はたとえばstereotaxic surgeryで現在は脳や脊髄の所定の部位に針を刺入するという手技や装置はすでにほとんど完成していて,むしろそこの刺激や破壊による結果が主要な問題をなしており,いわばclinical neurophysiologyといってよいような観をなしている.
 ところがmicroneurosurgeryはsurgicalというか,手技そのものが前面に強く出ている分野であり,したがって現在それがcoverしているfieldも,ごく限られた例外をのぞいて,すでに先人がすぐれた名人芸をもって一度はたがやし,花を咲かせたfieldであることが多い.

手術手技

前交通動脈瘤の手術

著者: 半田肇

ページ範囲:P.103 - P.109

はじめに
 前交通動脈瘤は,その解剖学的位置のため少なくとも数年前までは,動脈瘤のneck ligation〜clippingは技術的に困難な場合が多く,その手術のmorbidityを考慮に入れると,その手術成績は必ずしもあまり芳しいものではなかった.このために,前交通動脈瘤の手術は,動脈瘤到達法にも種々の方法が用いられていた.
 大きくわけて,一側開頭による場合と両側開頭による場合の2つであるが,前者の揚合,Norlén(1953)の発表7)による一側の前頭開頭で,徐々に前頭葉を後上方に挙上してsubfrontalに達する方法を用いる人が多かった.この場合,必要に応じて,前頭葉極の内側において2-4cm位の範囲wedge shapeに脳葉切除を行ない動脈瘤に達する(tunnel resection〜wedge resection)方法を用いたり(Frenchら2),Kempe3)),または,両側大脳半球間裂をわけて動脈瘤に達するmedian〜transcallosal approachを用いていた(Tönnisら9)).

境界領域

腫瘍免疫研究の問題点—腫瘍抗原と免疫監視機構・1

著者: 西岡久寿弥

ページ範囲:P.111 - P.114

Ⅰ.がんへの免疫学的アプローチ
 感染症の克服に免疫学が果たして来た役割は疾患の診断,治療,予防の各面において輝かしい成果をあげてきた.腫瘍に対して同じ原理の上に築き上げられた免疫学に同じ成果が期待できるであろうという楽天的な観測の上にたって,はげしい攻撃が行なわれていたが1950年までの研究は,実験動物に対する基礎的な検討,特に免疫遺伝学的な知見の不備が致命的な欠陥となり,正常移植抗原と癌細胞の特異抗原の識別を混乱させ,根底から初期の楽観論はくつがえされた.
 その結果がんの研究はおもに形態学あるいは生化学のレベルにゆだねざるを得なかった.しかし当初の失敗にもかかわらず,がんの免疫学は移植免疫学の進歩により遺伝的に均一な正常移植抗原をもった動物をそろえることが可能になった免疫遺伝学の急激な進歩と,定量的な,また他の物理化学的な方法に比しはるかにすぐれた感度と特異性をそなえた免疫学的方法論の進歩によりここ20年間の間に完全に当初の期待にこたえる成果をあげるにいたった.

研究

脳動脈瘤に関する実験的研究(第1報)—力学的にみた脳動脈瘤壁組織構築と実験的動脈瘤

著者: 森竹浩三 ,   半田肇 ,   林紘三郎 ,   佐藤正明

ページ範囲:P.115 - P.123

Ⅰ.はじめに
 一般に,血管系の機能は,血管壁の力学的性質と,これに加わる血流動態などの力学的条件が密接に関係しており,血管系障害における諸問題を解決していくうえで,力学的側面からの詳細な研究が必要かつ有益な手段になると思われる.
 従来より脳動脈瘤に関して,その発生,増大,破裂などの機序を解明するため,様々な角度から実験的研究が行なわれてきた4,6,10,25).しかし,それらの研究の大半は動脈瘤モデルの作成や実験条件の設定に際して,真の脳動脈瘤との類似性に関する十分な検討が行なわれておらず,また得られた結果の解釈に一般力学や流体力学の知識を深い考察なしに,そのまま生体にあてはめたものが多い.

脳ミトコンドリア酵素活性の失活阻止因子に関する研究—特にその臨床的応用の可能性について

著者: 小林督志 ,   渡辺一郎 ,   野中利房 ,   渡辺博 ,   佐藤潔 ,   石井晶三

ページ範囲:P.125 - P.134

 Ⅰ.はじめにわれわれは脳浮腫の発生機序に関しこれを生理学,生化学ならびに形態学的立場から多角的な検討を行なってきた.その結果脳ミトコンドリアの機能障害が脳浮腫の発生ならびに広く脳の機能障害に重要な相関を示すことを見出し,報告してきた.これらの研究の中で脳ミトコンドリアの機能,特にエネルギー形成過程の障害に関与する少なくとも2つの因子を明らかにしてきた.すなわち脳圧迫,脳循環障害などの病的条件下において脳ミトコンドリアのエネルギー形成過程を阻害する物質(Endogenous Inhibitor)が細胞内に代謝過程を通じて蓄積してくることを見出した11,20,21,31,33).更に同様な病的条件下においてEndogenous Inhibitor(EI)とは別にミトコンドリアの酵素系からある種の活性物質(Active Factor)が脱落し,これがミトコンドリアの失活と関係していることも発見した.
 これらの実験結果に基づき,それぞれの因子を除去ないしreplaceしてやることが可能であれば,障害された脳ミトコンドリアの機能を回復せしめ,ひいては脳全体としての機能回復をも期待しうるのではないかと考えた.今回は既に発表した牛血清アルブミンによるEIの無害化並びにActive Factorの添加によるミトコンドリアの失活防止に関する知見をin vivoの条件下で応用することを試み2,3の知見を得たのでここに報告する.

脳腫瘍の免疫学的治療法に関する研究—骨髄血輸血の役割

著者: 高倉公朋 ,   三木啓全 ,   久保長生 ,   小川信子 ,   松谷雅生 ,   佐野圭司

ページ範囲:P.135 - P.142

Ⅰ.はじめに
 悪性脳腫瘍治療の現状を考える場合,脳神経外科医ならば誰でも,その治療成績にかなり明確な限界のある18)ことを知っているであろう.放射線治療はMedulloblastomaのような感受性の高い腫瘍に対しては一時的に著しい臨床効果が認められるものであるが,radiation necrosisによる正常脳組織の障害から,ある限界以上の照射量を与えることはできない.化学療法については,抗腫瘍作用の認められる薬剤はあっても,その効果は一時的であり投与を中止せざるをえない副作用の壁がある.
 今日まで,悪性脳腫瘍治療の原則は手術によってできる限り広範な除去を行ない,感受性のある薬剤を選択し,投与法を改善して,いかにその効果を最大限にもたらすか,あるいはBAR療法13),または硼素中性子捕捉療法4)のように放射線に対する腫瘍細胞のみの感受性を高めて,いかにしてもっとも効果的な治療を行なうかという方向に向けられてきた.これらの努力はすべて正しいものではあるが,腫瘍に対する生体の防衛力を増強するという方向も,今日問い直される必要があるのではなかろうか.悪性腫瘍に対する防衛現象として生体に免疫監視機構2)の存在することが近年ますます明確になってきたからである.

頭蓋内圧亢進症における脳静脈系機構

著者: 林成之 ,   田村寿雄 ,   井上英雄 ,   菅原武仁 ,   坪川孝志 ,   森安信雄

ページ範囲:P.143 - P.151

Ⅰ.緒論
 頭蓋内圧亢進症の病態は,従来Vasoparalysisによって惹起される急激な脳血管床の増加や,それに伴う血管透過性の亢進などによる急性脳腫脹7)を中心に検索がなされてきた.その発生原因として,神経説(Forbes 1928, Meyer 1971),代謝説(Lassen 1959, Harper 1963),筋源説(Fog 1939)がとなえられ,議論の多いところである.
 しかし,Revich(1971)らは,外傷脳における脳血管自動調節機構の消失は部位により異なると報告しており,脳血管系の解剖学的な構造やその外部環境の特異性を考えても,脳の血管系をすべて同一条件のもとに考えることはできない.さらに,Smith(1969)らの頭蓋骨窓法による観察では,頭蓋内圧亢進時の病態は,脳静脈系の環流障害が最初に出現すること,そのさい,脳血管内因子も無視できないことをHekmatopanah(1970),林(1971)らは報告しており,頭蓋内圧亢進症の病態発生のTrigger機構がVasoparalysis説のみでは不充分であるといえよう.したがって,今後,頭蓋内圧亢進症の病態を解明するためには,脳血管の太さや部位による反応性の特異性,脳動脈系と脳静脈系の反応様式,脳血管内因子,脳組織代謝の部位的な変化,髄液の変化,さらに,Extracranial Hemodynamicsなど,各方面より検討を加える必要があろう.

急性頭蓋内圧亢進時における脳代謝・脳循環

著者: 口脇博治

ページ範囲:P.153 - P.161

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内圧が亢進すると血圧が上昇し呼吸が不整となり脈搏数が減少し,意識障害を伴って生体は急速に死の転帰をとることは古くから知られている,Kocher9)は1901年すでにこのような経過を主として臨床症状から4期に分類し最近ではLangfitt11)がやはりvital signsの動きから同様4期に分類した.池山6)は犬における急性実験から,脳循環動態と脳機能の指標としての脳波の変動とを組合わせて詳細に検討し,次のごとき4期に分類した.すなわち頭蓋内圧を漸次上昇させて行くと脳血流が一定に保たれる時期(Ⅰ期)を経て,次いで脳血流は軽度減少しはじめる(Ⅱ期).更に頭蓋内圧を上昇させると脳血流減少は血圧上昇反応の出現により代償され脳波には徐波の混入が多くなる(Ⅲa期).頭蓋内圧を更に上昇させると血圧上昇反応によっても脳血流が維持できなくなり脳波も平坦化し(Ⅲb期),ついに動物は末期(Ⅳ期)に至り死亡する(Fig.1).
 次いで坂野1)の検討によればこれらのうちⅢa期とⅢb期では脳血管反応性に差がみられ脳血管反応性を失う,Ⅲb期になると薬物あるいは減圧手技による治療効果が期待薄であることがわかった.

頸部脊椎管のDevelopmental Stenosisによる頸髄障害の研究—その1.本邦成人の頸部脊椎管矢状径のレ線学的正常域値とその診断学的意義

著者: 長島親男

ページ範囲:P.163 - P.171

 脊椎管canalis vertebralisは,脊柱各部の椎孔faramen vertebralisが連続してつくられている.この脊椎管の内に新生物などができると脊椎管の内径が広くなり,内径を測定することによって,脊椎管のどのレベルに新生物などの病変があるのかを診断することができる.この1つの方法として,有名なElsbergとDykeの標準曲線がある1).これは周知のように,前後方向に撮影した脊椎のレ線フィルムで,interpedicular distanceすなわち左右の椎弓根pediculus arcus vertebralisの距離を測定し,正常人のカーブと比較して病変の部位を知る方法である.しかし,ElsbergやDykeらも指摘しているように1),この方法は胸椎や腰椎においては有用であるが,頸椎の上部では,さほど有用ではない.なぜなら,頸椎では上部になるほど,椎弓根は椎体から斜め外・後方にのびているために(Fig.1,次ページ),interpedicular distanceを明確に測定しにくいからである.
 さらに,頸部ではinterpedicular distance--つまりこれは脊椎管の「横径」に相当するが,この横径よりも「矢状径」の方が短いのである.

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日本脳神経外科学会事務局ニュース

ページ範囲:P.172 - P.173

W. F. N. S. 第5回国際脳神経外科学会(The 5th International Congress of Neurological Surgery)事務局からのお知らせ
 本年10月7-12日東京にて開催予定の国際脳神経外科学会の準備はかなり難渋しながらも,予定どおり進んでおります.さる5月10日より18日まで,Dr. Pertuiset(Paris),Dr. Kurze(Los Angeles),Dr. Carrea(Buenos Ailes)の諸教授の来日出席を得,また日本側の委員もこれに加わり,長い時間をかけてプログラムの選択決定の作業を行ないました.
 本学会では開期5日間の午前中をすべてSymposiumに当てたこと,また,Free Communicationに海外より予想をはるかに上回る,多数の演題申し込みがあったことから,国内から申し込まれた演題の採択は最少限にとどめざるをえなくなりました.誠に申し訳ないこととは存じますが,国際学会の慣習上,主催国は何かにつけ遠慮しなければならず,やむをえずとった処置でございます.よろしく御了承下さい.

キーワード基準例

著者: 編集部

ページ範囲:P.175 - P.175

 本誌ではキーワードの統一のために下記の基準例を設けました.投稿されるかたはこれを中心にキーワードをおつけ下さい.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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