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研究
脳腫瘍の免疫学的治療法に関する研究—骨髄血輸血の役割
著者: 高倉公朋1 三木啓全1 久保長生1 小川信子1 松谷雅生2 佐野圭司2
所属機関: 1国立がんセンター脳神経外科 2東京大学脳神経外科
ページ範囲:P.135 - P.142
文献購入ページに移動悪性脳腫瘍治療の現状を考える場合,脳神経外科医ならば誰でも,その治療成績にかなり明確な限界のある18)ことを知っているであろう.放射線治療はMedulloblastomaのような感受性の高い腫瘍に対しては一時的に著しい臨床効果が認められるものであるが,radiation necrosisによる正常脳組織の障害から,ある限界以上の照射量を与えることはできない.化学療法については,抗腫瘍作用の認められる薬剤はあっても,その効果は一時的であり投与を中止せざるをえない副作用の壁がある.
今日まで,悪性脳腫瘍治療の原則は手術によってできる限り広範な除去を行ない,感受性のある薬剤を選択し,投与法を改善して,いかにその効果を最大限にもたらすか,あるいはBAR療法13),または硼素中性子捕捉療法4)のように放射線に対する腫瘍細胞のみの感受性を高めて,いかにしてもっとも効果的な治療を行なうかという方向に向けられてきた.これらの努力はすべて正しいものではあるが,腫瘍に対する生体の防衛力を増強するという方向も,今日問い直される必要があるのではなかろうか.悪性腫瘍に対する防衛現象として生体に免疫監視機構2)の存在することが近年ますます明確になってきたからである.
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