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研究
頭蓋内圧亢進症における脳静脈系機構
著者: 林成之1 田村寿雄1 井上英雄1 菅原武仁1 坪川孝志1 森安信雄1
所属機関: 1日本大学脳神経外科
ページ範囲:P.143 - P.151
文献購入ページに移動頭蓋内圧亢進症の病態は,従来Vasoparalysisによって惹起される急激な脳血管床の増加や,それに伴う血管透過性の亢進などによる急性脳腫脹7)を中心に検索がなされてきた.その発生原因として,神経説(Forbes 1928, Meyer 1971),代謝説(Lassen 1959, Harper 1963),筋源説(Fog 1939)がとなえられ,議論の多いところである.
しかし,Revich(1971)らは,外傷脳における脳血管自動調節機構の消失は部位により異なると報告しており,脳血管系の解剖学的な構造やその外部環境の特異性を考えても,脳の血管系をすべて同一条件のもとに考えることはできない.さらに,Smith(1969)らの頭蓋骨窓法による観察では,頭蓋内圧亢進時の病態は,脳静脈系の環流障害が最初に出現すること,そのさい,脳血管内因子も無視できないことをHekmatopanah(1970),林(1971)らは報告しており,頭蓋内圧亢進症の病態発生のTrigger機構がVasoparalysis説のみでは不充分であるといえよう.したがって,今後,頭蓋内圧亢進症の病態を解明するためには,脳血管の太さや部位による反応性の特異性,脳動脈系と脳静脈系の反応様式,脳血管内因子,脳組織代謝の部位的な変化,髄液の変化,さらに,Extracranial Hemodynamicsなど,各方面より検討を加える必要があろう.
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