研究
脳腫瘍の免疫学的診断
著者:
高倉公朋1
佐野圭司3
小林富二男4
江田淳二4
所属機関:
1国立がんセンター脳神経外科
2インドネシア大学脳神経外科
3東京大学脳神経外科
4興和株式会社東京研究所
ページ範囲:P.219 - P.224
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脳腫瘍の免疫学的研究は,すでに1936年,Sirisがglioblastoma組織のアルコール抽出成分を抗原とし,兎に注射して抗体を作った研究12)にはじまる半世紀におよぶ永い歴史を持っているが,多くの研究者の努力にもかかわらず,脳腫瘍の特異抗原を見出すことはきわめてむずかしい問題であった.最近の脳腫瘍特異抗原の分析に関する研究を見ると,その研究方法は本質的には半世紀前と変わりがないが,2つの点で明らかな進歩が認められる.抗原,抗体の分析法の精度が著しく高くなったことと,腫瘍からの抗原物質の精製法がより発達したことである.Mahaley,Dayらは抗原としてgliomaのhomo-genateをそのまま用いて兎に抗体を作り,正常組織で吸収したのちに,抗原抗体complexを作り,これから抗原を再分離する方法で特異抗原を抽出した.この方法によれば特異抗原に対する抗体は全抗体globulinの0.05%で,これを更に精製するとわずかに0.0002%が得られるにすぎないと報告している6).このように微量な特異抗原の検出は最近の免疫学的分析方法を用いなければ果し得なかった結果である.抗原の精製に関してはglia細胞に多い10B蛋白質(Bogoch2))をカラムクロマトグラフィーにより抽出して,これに対する抗体を作り,astrocyteに特異的な抗原蛋白質(astroprotein)を見出した森,Benda,Sweetの業績1,7,8)が発表されている.