研究
頸部脊椎管のDevelopmental Stenosisによる頸髄障害の研究—その2.症例報告と手術法ならびに手術成績について
著者:
長島親男1
所属機関:
1埼玉医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.503 - P.512
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著者は,前報告において,本邦成人の頸部脊椎管矢状径のレ線学的正常域値をきめ,標準曲線を作成した1).これから述べる「Developmental Stenosisによる頸髄障害」とは,1964年Hinckらが提唱したもので2),発生学的な異常によって頸部の脊椎管がもともと狭いのである.発生の過程において,脊髄はどんどん発育してゆくのに,脊椎管がそれ相応に広くならないと,脊髄と脊椎管との問には余裕がなくなってくる.したがって,ある年代になると,特別な原因なしに頸髄の圧迫や頸髄の乏血状態を作ったりしてCervical Myelopathyを起してくる.一方,ほんの少しの骨棘,disc prbtrusion,過伸展・過屈曲をともなう軽い頸部の外傷などによって,頸髄は容易にdamageをうけて,頸髄障害を起してくる.このようなわけで,Hinckらは,このDevelopmental Stenosisは神経学的に意味のある異常(neurologically significant anomaly)といっている3).この診断には,頸部の脊椎管矢状径が正常より狭いことが診断の重要な条件になっている.
著者も以前からこの状態に注目してきたが,Hinckらをはじめ,欧米諸家21-23,25)の頸椎管矢状径の標準曲線の数値は,本邦成人のそれよりやや大きいように思われ,これを本邦成人にあてはめるのは適当でないことに気付いた.鈴木ら24)は,数値ではなくて椎体前後径と椎管前後径との比を問題にしている.