文献詳細
文献概要
扉
ほんものとにせもの
著者: 岩淵隆1
所属機関: 1弘前大学脳神経外科
ページ範囲:P.1243 - P.1244
文献購入ページに移動学会中はいろいろと取まぎれていて忘れていたが,帰途IguaçuのHotel Bour-bonというのに夜10時頃着いたときはちょうどよく晴れていて,周囲にほとんど人家もなく,全天に星が輝いていた.そこで土地の人らしいのに二,三聞いて見たが,the Southern Crossはどれかわからないという.それはそうだろう.教育程度が高くて,普及していることを世界に誇っている日本だって,北極星を確実に教えることの出来る人はそんなに多いとは思えない.旅行団の案内をしていた若い男に最後の望みをかけて尋ねたところ,さも心得たようにあれだと教えてくれた.見れば,中天に4つの星が大きな一寸かしげた十字を画いていた.自分一人だけで見るのはもったいないと,一緒の旅行団の脳外科の先生達に確かめたところ,誰も御存知ないというので,つい先程教わったばかりの知識でお教えした訳である.どなたが居られたか詳しくは覚えていないが,高名な先生も居られたはずである.あるいは,この拙文もお読みになっておられるかもしれない.そのときの学会に日本からの参加者は200名以上と聞いていたが,南十字星をちゃんと見て来たのは我々だけかもしれないと,いささか得意になって帰って来た次第である.
掲載誌情報