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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科10巻3号

1982年03月発行

雑誌目次

機能的脳外科に思う

著者: 駒井則彦

ページ範囲:P.233 - P.234

 "functional neurosurgery"を本邦では「機能的脳外科」という用語で一般的に広く理解されている.これは不随意運動症,疼痛,てんかん,ある種の行動異常など,主として中枢神経系の機能異常,例えばhyperfunction(positive symptom),hypo-function(negative symptom)などfunctional unbalanceに起因する症状に対し,外科的に調整ないし矯正する脳神経外科の一専門分野である.更にneuroendocrinedisordersをも含める人がある.「強きをくじき弱きを助ける」侠客の精神が機能的脳外科の心である.
 従来,functionalという言葉はヒステリー性の痙攣,知覚脱出や麻痺などpsycho-genic originの症状を指す場合に用いられてきたことから,もう少しよい名称を考えたいと思う.

総説

中枢神経系奇形の診断基準と治療

著者: 森惟明

ページ範囲:P.235 - P.243

I.中枢神経系先天異常(congenital anomaliesof the central nervous system)
 中枢神経系の発生は,①細胞形成(cytogenesis),②組織形成(histogenesis),③器官形成(organogenesis)の3つの段階に大別される10,30).中枢神経系先天異常の分類を試みる場合,発生時期に基づくものが望ましい.

解剖を中心とした脳神経手術手技

内頸動脈—海綿静脈洞瘻(CCF)の直達手術

著者: 森和夫

ページ範囲:P.245 - P.248

 頸動脈—海綿静脈洞瘻(CCF)の治療について,差当りのゴールは,内頸動脈本幹を開存したままで,また洞内の諸神経を傷つけることなく,瘻孔だけを選択的に閉鎖することにある.この目的のため現在採られている方法は,
 1)endarterial approach:頸部より内頸動脈内を介してdetachable balloon catheterを上げ,balloonで瘻孔部を閉じたのち,catheterを抜去.
 2)venous approach:海綿静脈洞に通じる静脈系,例えばjugular veinからballoon catheter,あるいは血栓形成のための銅線などを入れて洞内に滑り込ませ,静脈の側で瘻を処置する.
 3)d董rect surgicai approach:開頭し,海綿洞部に対す  る直達手術を行う.

研究

Moyamoya病の原因に関する研究—第1報 脳血管変化に対する免疫学的機序と交感神経の関与

著者: 笠井直人 ,   藤原悟 ,   児玉南海雄 ,   米満勤 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.251 - P.261

I.緒言
 Moyamoya病31)における初期変化は,両側内頸動脈終末部付近(carotid fork)を中心とする狭窄性変化であり,その狭窄の緩徐な進行に伴って脳底部にMoyamoya血管が出現してくる.この脳底部のMoyamoya血管については,これまで種々論議12,15,15,29)があったが,現在では狭窄性変化に伴って発達した脳底部穿通動脈を母体とする側副血行路10,11,19,28,31-34)であると考えられている.しかし,本疾患のinitial causeであるcarotid forkを中心とした狭窄性変化の原因については,いまだその解決の糸口さえもつかめていない.
 本疾患におけるcarotid forkを中心とする脳主幹動脈の病理所見1,6,30)は,内膜の細胞性もしくは線維性肥厚,内弾性板の屈曲蛇行,断裂,重層化そして中膜の菲薄化がその主たるものであり,これらの所見は多発性動脈炎16,39)や川崎病2,37)などの免疫反応由来と思われる血管炎の陳旧性病変の病理所見と類似している.

後頭蓋窩疾患に対するSubtemporal transtentorial approachについて

著者: 島村裕 ,   真鍋武聰 ,   谷川雅洋 ,   柴田憲司 ,   宮田伊知郎 ,   三宅新太郎

ページ範囲:P.263 - P.268

I.はじめに
 近年,神経耳科的検査法と神経放射線学の進歩およびCT scanの導入により,小脳橋角部腫瘍の早期診断が可能となっているが,なおかなりの大きさになるまで診断されずにいるのが現状である.その手術法も,従来より行われているsuboccipitalapproachに加え,microscopeの導入以来,middle fossa approachやtranslabyrin-thine approachなども行われるようになっている.
 今回われわれは,脳幹部,小脳および脳神経を温存するという目的で,後頭蓋窩疾患,特に小脳橋角部腫瘍に対して,必要に応じてsuboccipital approachも併用しうるsubtemporal transtentorial approachを行ってきたので,その利点と同時に,問題点についても,併せて検討し報告する.

頭蓋内血管カニュレーション法とその臨床的応用

著者: 根来真 ,  

ページ範囲:P.271 - P.277

I.はじめに
 従来,頭蓋内血管にカニュレーションすることは容易でなく,かつ危険を伴うという理由で,臨床的には用いられることは少なかった.しかし1974年のSerbinen-ko12)の頭蓋内血管性病変に対するdetachable ballooncatheterによる治療法の発表以来,頭蓋内血管に経皮的にカニュレーションするためのcatheter systemが考案発表されている.
 頭蓋内血管は内径も細く,屈曲が多いため,単にカテーテルをすすめるのみでは末梢まで到達することは不可能である.このため血流を利用してカテーテルを誘導する必要があり(flow guidance),それにはカテーテルの先にバルーンを取付け,このバルーンをふくらませることにより血管の中を血流にのせて末梢に運ぶ方法が最もよいといえる.

脳血管攣縮に対するドパミン昇圧療法の評価

著者: 原口庄二郎 ,   蝦名一夫

ページ範囲:P.279 - P.289

I.はじめに
 いわゆる血管攣縮(遅発性脳血管攣縮)が破裂脳動脈瘤患者の予後を左右する大きな要因の1つであるにもかかわらず,その病態についてはいまだ統一された見解がなく,その治療法に至っては試行錯誤の段階にあるにすぎない14,21,33)
 当科では,従来,症候性血管攣縮に対して,酸素吸入,ステロイド剤,浸透圧性脳圧下降剤,Kosnik & Huntの方法17),持続脳室ドレナージ,外減圧術などで対処していたが,1979年1月より,これらの方法を一部併用しつつ,Brownらの報告2)にならい,脳血管攣縮のために虚血症状を呈し将来重篤な後遺症に進展する可能性のある患者に対して,ドパミン昇圧療法(dopamine inducedhypertension therapy,以下DIHと略す)を施行し,かなりの成果を収めてきた.本稿では,脳血管攣縮による虚血症状に対するDIHの有用性と限界について検討する.

症例

新生児Astroblastomaの1例

著者: 中島麓 ,   湯田謙次 ,   桑原武夫 ,   柳下三郎

ページ範囲:P.291 - P.293

I.はじめに
 新生児脳腫瘍は極めて稀なもので,腫瘍病理学上も貴重な資料である.われわれは出生直後より痙攣重積状態となり,脳血管撮影により脳腫瘍と診断され,組織所見よりastro-blastomaと診断された症例を経験したので報告する.

慢性DICに続発した頭蓋内出血

著者: 杉浦誠 ,   森伸彦 ,   杉森忠貫 ,   今永浩寿 ,   喜多村孝一 ,   河野宏

ページ範囲:P.295 - P.303

I.はじめに
 近年,播種性血管内凝固症候群(DIC)は比較的よく遭遇する病態として認識されつつある.しかもDICの80%は,なんらかの精神・神経症状を有しており8),中枢神経系病変を疑わねばならぬ場合が多い.一方,DICにみられる中枢神経系の器質的病変としては,脳梗塞が多く,脳出血は少ないとされ9),死因となるような大量頭蓋内出血や,手術例の報告は稀である7,14).著者らは慢性DICと考えられる病態に続発した頭蓋内出血5例を経験したので報告する.

Dermoid cystを合併した原発性頭蓋内黒色腫の1剖検例

著者: 本道洋昭 ,   杉山義昭 ,   川崎昭一 ,   嘉手苅勤 ,   鷲山和雄 ,   福田光典 ,   三輪淳夫 ,   北川正信

ページ範囲:P.305 - P.310

I.はじめに
 黒色腫はneural crest 由来のmelanocyteを母地として発生する腫瘍とされている.そのImlanocyteは皮膚や粘膜に多く存在するが,中枢神経系においては軟膜や脳実質中の血管鞘に沿って存在するため,黒色腫が頭蓋内に発生してもおかしくない.しかし中枢神経系に原発した黒色腫は比較的稀な疾患である.
 われわれは,複視と左片麻痺とJackson型の痙攣で発症した中枢神経系原発の悪性黒色腫に,dermoid cystを合併した非常に稀な1例を経験したので,その症例について,臨床経過,剖検所見ならびに若干の文献的考察を加えて報告する.

脊髄硬膜外Hemangiolipomaの1例

著者: 花北順哉 ,   小山素麿

ページ範囲:P.313 - P.316

I.はじめに
 全脊髄腫瘍のなかで脂肪腫は約1%から4.2%の頻度で認められるが4,15),その大部分は潜在性脊椎披裂などの閉鎖障害(dysraphic condition)を伴っており,これらの先天奇形を伴わない成人の脊髄脂肪腫は稀である.組織学的に脂肪細胞の成分以外に,豊富な血管成分を含むものはhemangiolipomaと呼ばれる11).これは胸椎レベルの硬膜外に好発し,脊髄圧追症状の自然増悪,寛解を繰返すという特異な病像を呈することが多いことで知られているが2),今まで文献上16例の報告をみるのみである.今回われわれは,約1年2ヵ月の経過で徐々に進行してきた42歳男の胸椎硬膜外hemangiolipomaの1例を経験したので,これを報告し,併せて脊髄脂肪腫,ことにhemangiolipomaについて文献的考察を加えた.

髄膜腫の頭蓋外転移—2例報告と文献的考察

著者: 木野本均 ,   岩崎喜信 ,   中川翼 ,   伊藤輝史 ,   田代邦雄 ,   阿部弘 ,   都留美都雄 ,   樋口政法 ,   金田清志

ページ範囲:P.319 - P.326

I.はじめに
 頭蓋内脳腫瘍が頭蓋外に転移する事実は,比較的稀ではあるがよく知られている7,14,24).しかし,その大部分はgliomaである7,24)
 髄膜腫は良性の脳腫瘍といわれているが,12-21%は再発を来たす6,22).しかし頭蓋内髄膜腫が頭蓋外に転移することは極めて稀であり,その頻度は0.1%といわれ2),著者らの知りえた範囲では文献上69例を数えるにすぎない1,2,5,7-11,15-17,20,21,23,25,26)

Hemangioma calcificansの1例

著者: 元持雅男 ,   牧田泰正 ,   鍋島祥男 ,   板垣徹也 ,   鄭台預 ,   欅篤

ページ範囲:P.329 - P.334

I.はじめに
 hemangioma calcificansは1948年,Penfield andWard15)により命名されたclinical and radiological en-tityで,石灰化した脳実質内海綿状血管腫とてんかんを合併する稀な疾患で側頭葉に多い.出血防止,てんかん源病巣除去の目的で,全摘出術が勧められるが,CT導入以前には術前診断がほとんど不可能であった.最近われわれは,10年来の側頭葉てんかんの既往のある32歳男の患者のCT上,本病巣を認めた.定位脳手術的考慮の下に全摘出術を施行し,術後,脳波上の改善を認め,また無症状に復職せしめえたが,この症例報告を行うとともに若干の文献考察を加えたい.

脳主幹動脈の血管変化を伴ったRadiation necrosisの1例

著者: 石橋安彦 ,   岡田仁 ,   峯浦一喜 ,   児玉南海雄

ページ範囲:P.337 - P.341

I.はじめに
 脳腫瘍に対する放射線療法の普及に相伴って,照射後数ヵ月から数年後に発症するradiation necrosisの症例が報告されるようになり,その発生機序,病理組織所見などが論議されている.今回われわれは,下垂体腺腫摘出後に放射線療法を受け,その6年後にradiation ne-crosisを生じ,かつ脳血管写上,脳主幹動脈に放射線照射によると思われる血管変化を呈した症例を経験したので,radiation necrosisにおける血管変化について,若千の文献的考察を加えるとともに,CT所見も併せて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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