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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科10巻4号

1982年04月発行

文献概要

総説

経皮的電気刺激による除痛法—1/f変動の生理学的意義

著者: 高倉公朋1

所属機関: 1東京大学脳神経外科

ページ範囲:P.349 - P.357

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I.はじめに
 近年,神経系電気刺激による除痛法が広く治療に用いられるようになってきている.これは外科的な痛覚伝導路の破壊によって痛みをとる従来の方法が神経機能の脱落を伴うのに対して,電気刺激法では,機能を保存することができるし,患者に不安や苦痛を与えることがなくて好まれるからである.電気刺激法には,定位脳手術的に中心灰白質へ電極を埋め込んで電気刺激を行うHoso-buchiら1,2)の方法,脊髄後索を直接または硬膜外から電気刺激する方法3-5)(spinal cord stimulation=SCS,またはdorsal column stimulation=DCS)と経皮的末棺神経電気刺激による除痛法6,7)(transcutaneous elec-trical nerve stimulation=TENS)とがある.
 痛みを除くということは,医療のなかでも最も基本的な目的の1つであるが,痛みを除くことは,同時に患者の不安を取り除くことでもある.したがって,その目的を達する手段もできる限り非侵襲的であることが望ましいし,痛みを除くために手術のようなより大きな不安を患者に与えることは,本来望ましいことではない.実際,癌末期の患者の痛みを治療するに際しても,大多数の患者と担当医師は手術的な治療よりもむしろ麻薬の使用を好むのであって,それを単に安易な治療法であるとは言いきれないのである.医療の本質を考えれば経皮的電気刺激による除痛法は危険性,副作用と不安感がなく理想的ではあるが,反面,その欠点は除痛が不確実で,完全な痛みの消失が得られ難いことである.しかし現実には,この方法は年々広く普及し,その治療を求める人の数も増加している.そこで,本稿では経皮的電気刺激による除痛法について概説する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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