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研究
大後頭孔・上部頸髄髄外腫瘍の症候—特に前腕・手指の筋萎縮について
著者: 副島徹1 大神正一郎1 中垣博之1 沢田浩次1 脇坂信一郎1 米増祐吉1
所属機関: 1九州大学医学部脳神経病研究施設外科
ページ範囲:P.947 - P.953
文献購入ページに移動上部頸髄および大後頭孔附近の良性髄外腫瘍の症候は,Abrahamsonら1),Elsbergら9)によりほぼ確立された.その後も,この部位の腫瘍の多彩な臨床症状,神経放射線診断の困難さなどの観点より,多くの症例報告,解説が続き4,8,15,19,26,31),わが国でも清水ら24),北村ら17)をはじめ,いくつかの症例報告がみられる11,13).これらの報告より大後頭孔部腫瘍の症候を要約すると,次のようになる.すなわち,①後頭部あるいは頸部痛で発症することが多く,②項部強直や頸部運動制限,③四肢の進行性運動麻痺,④上肢末端部の筋萎縮,⑤四肢,躯幹の感覚障害,⑥小脳症状,⑦下部脳神経障害,⑧Horner症候群,⑨直腸膀胱障害などである.またこれらの症候は,原則として常に進行するが,ときに寛解が起こったり4,8,11,15),一部の症候のみ出現することにより,神経症,変形性頸椎症,多発性硬化症,筋萎縮性側索硬化症などと誤解される4,13-15).これら症候の大部分は,後頭蓋窩より上部頸椎における局所解剖で十分説明しうる.
しかし,しばしば出現する前腕から手指にかけての筋萎縮は下部頸髄,上位胸髄前角細胞より末梢神経にかけての障害であり,腫瘍部位では説明がつかない.この発生機序について,多くの著者が脊髄の血液循環障害で説明を試みたが,いまだ十分に納得できる説明はない.今回われわれは,上部頸髄,大後頭孔部を占拠する腫瘍の症候をまとめ,上肢末端部に生ずる筋萎縮の発生機序について考察を加えたので報告する.
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