icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科11巻1号

1983年01月発行

雑誌目次

コンピューター夢想

著者: 寺尾榮夫

ページ範囲:P.5 - P.6

 IBM産業スパイ事件,コンピューター犯罪,超LSI工場火災,パソコンブーム……われわれの生活はコンピューター抜きでは考えられないようになってきた.1946年,弾道計算の必要から最初の電子計算器エニアックが作られてから僅か36年,この間の進歩の驚異的な速さのため,もしこのままコンピューターが発達し続けるならば近い将来には……と途方もない夢と多少の不安を抱かせる.
 日頃,手持ちの乏しい神経学的診断知識よりも頼りにし勝ちなCTスキャン,今後次々と登場してくるdigital subtraction angiography, PETやNMR-CTなどの画像診断装置は形式理論に基く逐次演算を極めて高速かつ正確に行うコンピューターがあってはじめて実現できるものでことは述べるまでもない.

総説

頭頸部領域の人工塞栓術

著者: 滝和郎 ,   半田肇

ページ範囲:P.7 - P.15

I.はじめに
 頭頸部病変の塞栓術は,1930年,Brooks6)が筋肉片を用いて頸動脈海綿静脈洞(以下CCFと略す)の治療を行ったのが始まりである.以来,塞栓材料,カテーテル,手技の発達により,その適応も拡大し,現在inter-ventional radiology32)あるいはtherapeutic angiogra-phical embolization13)とよばれる一分野をなすようになってきた.これまでに多種類の塞栓材料,カテーテルが開発され,Dick13)の言葉を借りれば,long week endのsupermarket shopping listのように豊富である.これは,塞栓術が一分野をなすようになってきた反面,まだ未発達であることを端的に表現しているように思われる.術者の目的とするところもさまざまである.そこで明確となってくることは,この材料とこのカテーテルで,どういう手技の組み立てを行えば,どの程度の効果が得られるかを常に考えておかねばならないことである.また,ひとつまちがえば,とんでもない結果となることを心に留めておく必要がある.こういった複雑さをもっているが,極めて侵襲の少ない方法で,多大な効果もあげることができる興味深い分野である.
 本論文では,現在用いられている塞栓材料,カテーテル,手技,適応となる疾患と,それに対する塞栓法について自験例をまじえて概説してみたい.

Current Topics

レーザーマイクロサージャリーによる微小血管吻合術

著者: 林成之 ,   坪川孝志 ,   逵保宏 ,   二木力夫 ,   熊野勝文 ,   稲場文男 ,  

ページ範囲:P.17 - P.21

I.はじめに
 医学分野におけるレーザーは,そのすぐれた熱効果が主に注目され,レーザーメスという形で広く応用されている.しかし,レーザーには,熱効果のほかに,圧力や弾性反跳,細胞増殖の促進,ラマン効果やブリロインの広がりの増加,原子の衝撃による局所熱発生,二重光子の吸収,それにブリーラジカルの形成などの作用もあり4),一部,癌細胞の診断や治療2)などに応用され始めている.しかし,これまで,レーザーの医学分野での応用は,あまりにもレーザーメスに期待が寄せられ,その目的からはずれた超低出力レーザーや,レーザー光が持つ特有の性質を利用した別のレーザーなど,新しい医学分野への応用が立ち遅れているのが現状である.
 このレーザーの新しい応用の1つとして,1967年Strully10)はneodymiumを用いて,1980年Jain7)らはYAGレーザーを用いて,血管の吻合を試みている.しかし,YAGレーザーでは組織透過率がCO2レーザーより高く1),血管内膜損傷を起こしやすいため,その防止に必要な技術的煩雑さもあって,臨床に応用されるまでにいたっていない書これに対して,Freeman,Thomsonら3,11)は,レーザー出力9mWレーザービーム径125μmの超低出力CO2レーザーを用いて血管吻合術を可能にし,1982年,Conference on Lasers and Electro-Optics(CLEOと略す)の学会で報告した.時を同じくして著者らも,5mW-15Wまで安定した出力とビーム径90μmまで絞れる超低出力CO2レーザーを開発し,Freemanよりもっと安全に,容易に微小血管の吻合ができるようにし,1982年の日本脳神経外科学会,次いで日本レーザー医学会5)に発表した.今回はその内容と本法の基本的事項を中心に紹介したい.

研究

中頭蓋窩くも膜嚢胞と孔脳症—その臨床的,神経放射線学的検討

著者: 榎本貴夫 ,   牧豊 ,   中田義隆 ,   坪井康次 ,   塚田篤郎

ページ範囲:P.23 - P.32

I.はじめに
 CT検査の普及にしたがって,頭蓋内に低吸収領野を示すextra-axial massを発見する機会は増えてきた.それらにはarachnoid cyst9),intra-arachnoid cyst15),孔脳症,その他が含まれているが,各種神経放射線学的検査を用いても診断は困難なことが多い.組織病理所見を得ても判断に苦しむこともある.
 著者らは,最近経験したintra-arachnoid cyst 1例,arachnoid cyst 1例,孔脳症2例の組織学的検索から,retrospectiveに神経放射線学的諸検査を再検討してみた.かなりの可能性をもって三者の鑑別が可能ではないかと考えるに至ったので,ここに報告する.

高血圧性および外傷性脳内血腫に対するCTを応用した定位脳内血腫除去術—35例の経験

著者: 本藤秀樹 ,   松本圭蔵

ページ範囲:P.35 - P.48

I.はじめに
 最近CTの進歩により,これを応用した定位脳手術がfunctional neurosurgeryの分野以外に,脳腫瘍のbio-psy6,11,17,25)や小線源によるX線照射治療10,29),血腫除去1,4,8,12,13)などに利用されはじめている.われわれはまず基礎実験として血腫吸引に関する実験を行い,これに基づき高血圧性脳出血33例,外傷性脳出血2例に対してCTを応用し,定位的に血腫除去を行い,従来の開頭法とほぼ変わらない結果を得たので報告する.

プロラクチン産生下垂体腺腫に対する術後Bromocriptine療法の効果

著者: 佐藤修 ,   丹羽潤 ,   井上慶俊 ,   赤川清介 ,   小林計理

ページ範囲:P.51 - P.60

I.はじめに
 プロラクチン(PRL)産生下垂体腺腫にみられる高PRL血症に対する手術療法の効果は,腺腫の大きさ,術前の血清PRL値に左右される.すなわち,腺腫の直径が10mm以上のmacroadenomaの症例,術前の血清PRL値が200ng/ml以上の症例では,腺腫剔出術後の血清PRL値の正常化はほとんど期待できない34).麦角アルカロイド誘導体bromocriptineが種々の原因による高PRL血症の症候改善に有効であるとの報告は多く,またPRL産生下垂体腺腫の大きさの縮小など,その抗腫瘍効果も報告されてきた.そこでわれわれは,PRL産生下垂体腺腫で術後血清PRL値が正常化しない例にbromocriptineを投与し,血清PRL値の低下,乳汁漏出の消失,排卵再来に及ぼす効果を検討し,またbromocriptineの抗腫瘍効果をCT scanの上から検討したので,その結果を報告する.

破裂脳動脈瘤223例の解析—特に再破裂予防の観点から

著者: 青柳訓夫 ,   早川勲 ,   竹村信彦 ,   土田富穂 ,   降旗俊明 ,   佐々木司

ページ範囲:P.63 - P.71

I.はじめに
 脳動脈瘤に対する頭蓋内直達手術の時期に関して,脳血管攣縮25,31,34,44)の観点からみた場合にはほぼ結論に達したものと思われるが,総括的にはいまだしである.
 今回われわれは脳動脈瘤の再破裂予防という観点から過去の症例を検討し,多少の知見を得たので報告した.

症例

大脳基底核とその周辺のGerm cell tumorの1例—HCG高値を示したGerminoma,choriocarcinomaの混在型

著者: 森山忠良 ,   寺本成美 ,   北島陽夫 ,   米倉正大 ,   中村稔 ,   松村豪一

ページ範囲:P.73 - P.80

I.はじめに
 近年radioimmunoassayのめざましい発展により種々の臓器におけるホルモン産生腫瘍の研究がなされ,頭蓋内原発性腫瘍によるホルモン産生に関しても同様に検討されつつある.一方,これら腫瘍の免疫組織化学も頭蓋内腫瘍に応用されてきた.著者らはprecocious puberty(以下PP)を伴った右大脳半球の視床および基底核部に病巣が見られた頭蓋内原発のgerm cell tumorの1例を経験し,その治療経過をCT scanおよびHCGで追跡しえた.また病理組織学的にはgerminomaとchorio-carcinomaの混在型を示し免疫組織化学的にHCGの局在を証明しえたので報告し,併せて若干の文献的考察を加えた.

Von Recklinghausen病に合併した多発性脳腫瘍9例の検討

著者: 増山祥二 ,   森照明 ,   関博文 ,   菅野三信 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.83 - P.90

I.はじめに
 von Recklinghausen病は,禍色素斑と特異な軟らかい皮膚腫瘍を主病変とする母斑症であるが,脳腫瘍をはじめとする中枢神経系の病変を伴うことはよく知られている.なかでも聴神経鞘腫が両側性に発生することが特徴とされ17,24),その報告も多いが,その他には髄膜腫,神経膠腫などを伴うこともあり,これらが多発する報告も散見される4,7,12,16,17)
 われわれは過去10年間に33例のvon Recklinghau-sen病を経験したが,うち9例に多発性の脳腫瘍を伴っていた.今回この9例の多発性脳腫瘍につき検討し,代表的症例2例を呈示するとともに,3個以上の脳腫瘍を合併していた症例に関する文献的考察を加えた.

Von Recklinghausen病に合併した多発性脳内悪性神経鞘腫の1例

著者: 土井英史 ,   尾崎文教 ,   藪本充雄 ,   森脇宏 ,   林靖二 ,   駒井則彦

ページ範囲:P.93 - P.98

I.はじめに
 脳内に発生する神経鞘腫は極めて稀で,Gibsonら7)(1966)の報告が最初であり,現在までに9例6,7,11,12,14,15,16,19)が報告されているにすぎない.また,本邦での報告は見られない.これら9例の報告はすべて単発性で他の合併症は認めていない.
 数多くのvon Recklinghausen病の報告のなかにも,脳内に発生した神経鞘腫を認めたものはない.神経鞘腫の悪性転化はよく知られているが,頻度はあまり多くない1).またmalignant schwannomaの脳転移の報告も見られない.

外傷性急性小脳内血腫—特にCT follow-upの有用性について

著者: 佐藤透 ,   山本祐司 ,   浅利正二

ページ範囲:P.101 - P.106

I.はじめに
 最近のCT scanの普及によって,外傷性後頭蓋窩血腫の診断は比較的容易となり,その報告例も増加してきているが,後頭蓋窩硬膜外および硬膜下血腫に比べ,小脳内血腫についての報告は稀である.ことに急性期例においては,後頭蓋窩特有の巣症状に乏しく,急速に脳幹圧迫症状を来たし重篤な転帰をとるため,その診断および治療に関して多くの問題が残されている.
 今回われわれは,CT scanにより診断し,手術にて救命しえた外傷性急性小脳内血腫の1例を経験した.そこで自験例を呈示し,われわれが集めえた12例1,2,5,10-13,16)の既報告例に自験例を加えた13例についてまとめ,特に早期診断,病態把握および予後判定におけるCT follow-upの有用性について考察を加えて報告する.

Detachable balloon catheter法による内頸動脈海綿静脈洞瘻の1治験例

著者: 蝶野吉美 ,   阿部弘 ,   佐々木寛 ,   阿部悟 ,   竹井秀敏 ,   小岩光行 ,   斎藤久寿

ページ範囲:P.109 - P.115

I.はじめに
 内頸動脈海綿静脈洞瘻(以下CCFと略す)の理想的な治療とは,瘻孔のみの完全閉塞であり,神経組織や脳循環をいささかも損わないことであるといえる7).この意味で従来のCCF諸治療法の趨勢が,extra-vascularapproach15)よりintra-vascular approach6,8,9,11,13,14,17)へと変遷し,なかでもSerbinenko18),Debrun2-5)らにより開発されたdetachable balloon catheter法が注目を集めているのは当然である.
 最近われわれも,同balloon catheterを外傷性CCF患者に用いる機会を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?