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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科11巻12号

1983年12月発行

雑誌目次

音談義

著者: 三輪哲郎

ページ範囲:P.1223 - P.1224

 8月初旬のある新聞紙上にこんな記事が目にとまった.「われわれが住んでいる東京は騒音に満ちている.地方から来た人も,外国から来た人も,東京にいると疲れるという.これは目から見ためまぐるしさもさることながら,耳から入る雑音(不協和音)の不快度が生理的限界を越えてしまうからであろう」というものである.
 私は永年東京に住んでいるが,慢性化していて,いっこう苦にならない.

総説

電気刺激による除痛術—脊髄の刺激

著者: 谷川達也

ページ範囲:P.1225 - P.1236

I.はじめに
 脊髄の電気刺激による除痛術は,1967年Shealyら57)によって,dorsal column stimulation(DCS)による除痛効果が臨床例で報告されたのが始まりである.その後,1970年代初期にいくつかの報告が相次いでなされ6,16,32,39,41,45,58,61),CSは慢性疼痛の治療手段の1つとして注目されるようになった.
 さてこの時期に行われたDCSは,手術的に椎弓切除を行い,刺激電極を脊髄背側の硬膜下腔に挿入して,くも膜や硬膜に縫合固定し,硬膜を通して皮下に埋め込んだ受信器に持続するものであった(Fig.1).しかしこの方法では,手術による重篤な合併症が少なからずみられ,長期間の使用では,刺激閾値の上昇や除痛効果の減弱をきたすなどの問題点があり,一般的な除痛法として確立されるには到らなかった.

解剖を中心とした脳神経手術手技

Atlanto-axial dislocationの手術

著者: 朝長正道

ページ範囲:P.1239 - P.1245

I.はじめに
 後頭・環椎・軸椎部すなわち頭蓋・頸椎移行部は大変特異な形態とそれによる特有かつ広範な運動機能を持っている.その形態学的特徴は①後頭・環椎関節面が前後・内側方向に上方凹であること,②歯突起があり,この前面と後面に環椎前弓後面および横靱帯との問に関節を持つこと,③環椎・軸唯関節面は平坦で,関節嚢は緩やかであること,④椎間板がないこと,などである.運動機能は後頭・環椎間で前後屈13°,側屈8°,回旋0°,環椎・軸椎間では前後屈10°,側屈0°,回旋47°であり,この部は前後屈,回旋に関与し,特に頭部回転の約50%を歯突起を軸として環椎・軸椎間で行っている19
 この特異な形態は複雑な発生過程を経て完成されるため,さまざまな形の骨奇形が起こりやすく,特に歯突起の異常は環椎軸椎転位症の発現に大きく関与している,また複雑な形態と椎間板がないことは外傷による損傷を受けやすく,そのstabilityに影響する.

鼎談

モヤモヤ病

著者: 鈴木二郎 ,   西本詮 ,   細田泰弘

ページ範囲:P.1248 - P.1258

 鼎談第3回は「モヤモヤ病」です.臨床のおふたりに,今同は病理サイドからも加わっていただき,この病気の全体像に迫っていただきました.

研究

高血圧性脳出血における中枢性胃腸管出血合併例の検討

著者: 小穴勝麿 ,   鳴海新 ,   千葉明善 ,   鈴木彰 ,   冨田幸雄 ,   金谷春之

ページ範囲:P.1261 - P.1268

I.はじめに
 高血圧性脳出血後に発生する中枢性胃腸管出血は,日常臨床上しばしば遭遇し,ときには生命予後をも脅かすために看過できない疾患である.現在まで,中枢性胃腸管出血に関する研究は,主として脳出血剖検脳との関連において検討されてきたが,生存例の脳内病理については,十分には解明されていないうらみがあった.しかし最近におけるCTスキャンの導入により,脳内の病理学的変化は生きながらにして十分に観察が可能となった.このような状況のもので,CTスキャンの分析を中心として中枢性胃腸管出血を見直すことは,新しい意義を有するとともに,また臨床に直結した重要な課題であると考えられる.

Medulloblastomaに対する放射線化学免疫療法—RAFP療法

著者: 鈴木倫保 ,   森照明 ,   渡辺孝男 ,   片倉隆一 ,   鈴木二郎 ,   和田徳男

ページ範囲:P.1271 - P.1276

I.はじめに
 medulloblastomaは全脳腫瘍の6%に発生し21),主として後頭蓋窩に発生し,小児脳腫瘍の25%を占め,小児悪性脳腫瘍の代表である.近年,侵襲が少なく再現性のよいCTスキャナーの普及とともにmedulloblastomaに関する報告も散見されてきたが10,15,18,24),CTによる治療経過の検討とそのfollow-upに関する報告はいまだ少ない23).今回われわれはCT導入以降に経験したmedulloblastomaに対して,手術療法あるいはradia-tion,ACNU,FT−207(5—fluorouracilの誘導体.商品名フトラフール,大鵬薬品KK),PSK(Coriolus ver-sicolor菌糸体の熱水抽出物.商品名クレスチン,三共KK)の4者併用療法すなわちRAFP療法13)を行い,CTによりその治癒過程を追跡し,また同時にRAFP療法後の組織所見を検討し,興味ある所見を得たので若干の文献的考察を加え報告する.

頭蓋咽頭腫33例のCT像—異常伸展,Iso-dense cyst,造影効果の分析

著者: 長澤史朗 ,   武内重二 ,   山下純宏 ,   半田肇

ページ範囲:P.1279 - P.1285

I.はじめに
 近年トルコ鞍周辺部疾患の診断にはcomputerizedtomography(CT)が不可欠とされている.特に高解像度CTの導入や撮影方法の工夫により,頭蓋咽頭腫の典型的なCT像は石灰化およびcystを伴いcontras en-hancement(CE)をうける鞍上部占拠性病変であることが広く知られるようになった3-5,10,11,13,14).しかしながら,最近症例数が増加するにつれて鑑別困難な,非典型的CT像を呈する頭蓋咽頭腫の報告が散見される3,5-9,15).これらの非典型例は,占拠性病変の部位あるいは伸展の異常,cyst densityの異常,CEの様相の異常などに由来すると考えられる.
 著者らは自験頭蓋咽頭腫33例について,そのCT像を,異常伸展,cyst density,CEに注目して分析したので報告する.

外傷性硬膜外血腫除去後の機能回復に関与する因子の検討

著者: 中川翼 ,   大塚邦夫 ,   阿部弘 ,   都留美都雄 ,   角田実 ,   小岩光行

ページ範囲:P.1287 - P.1295

I.はじめに
 外傷性頭蓋内血腫中,硬膜外の血腫のみで,硬膜下あるいは脳内に血腫を合併しない,いわゆる"硬膜外血腫単独症例"の手術的除圧後の救命率は比較的良好といわれている2,3,5,7,10,12,13).しかしながら,血腫除去後の機能回復の程度を手術前の種々の要素と対比しつつ詳細に検討した報告は少ない7,10,14).脳内血腫あるいは硬膜下血腫を伴わず,脳挫傷,頭蓋骨骨折のみを有した,比較的純粋な硬膜外血腫の手術後の機能回復の程度を検討することは,とりもなおさず大脳および脳幹の可逆可能限界を知る研究に通じうる.
 したがって著者らは,外傷性硬膜外血腫単独症例の血腫除去後の機能回復の程度を,手術前の種々の要素と対比しつつ検討した.

神経膠芽腫に対する高線量率分割腔内照射の試み

著者: 中田博幸 ,   神川喜代男 ,   本崎孝彦 ,   新垣安男 ,   原田貢士 ,   井上俊彦

ページ範囲:P.1297 - P.1302

I.はじめに
 脳腫瘍,特に悪性脳腫瘍に対する治療としての放射線治療の占める役割は大きい.現在,照射法としては,Telecobalt,Linac,Betatronによる遠隔照射が一般的である.一方,密封小線源を定位脳手術により腫瘍内に植え込む組織内照射や,手術腔内に線源を挿入する腔内照射は,一部の施設においてのみ行われているにすぎない.その理由として,手技の繁雑さ,術者の被曝,患者管理の問題とともに,線源の確保や特殊な設備を必要とすることなどが原因として考えられる.
 ところで密封小線源治療では線源が腫瘍中心部に位置するために,遠隔照射とは比べものにならない大線量を選択的に腫瘍組織に投与することが可能である.そのため正常組織の損傷を少なくし,治療可能比をあげるという利点がある.したがって,悪性脳腫瘍に対する組織内あるいは腔内照射は有力な放射線療法の1つと考えられる.

症例

Bromocriptine療法により気脳症を呈した男性プロラクチン産生腺腫の1例

著者: 寺本明 ,   高倉公朋 ,   北原茂美 ,   福島孝徳

ページ範囲:P.1305 - P.1310

I.はじめに
 bromocriptine(2-bromo-α-ergocriptine)は種々の原因による高prolactin(以下PRLと略)血症に対して著効を呈することが知られている.すなわち,血中PRL値の低下ないし正常化,およびこれに伴った,月経の再来,乳汁分泌の停止などである2).さらにPRL産生腺腫に対してbromocriptineを用いた場合,多くの症例で腺腫容積の縮小が認められる1,6,15)
 一般にPRL産生腺腫は,他の腺腫に比し浸潤性発育の傾向を有する10).海綿静脈洞内への浸潤も頻繁にみられ,またmicroadenomaの段階でもすでに下垂体硬膜への浸潤を認めることが稀でない.

外頸動脈異常走行による舌下神経麻痺の1手術治験例

著者: 高瀬憲作 ,   上川伸 ,   神山悠男

ページ範囲:P.1313 - P.1318

I.はじめに
 総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に分かれる分岐部には,さまざまな奇形や異型がみられることは,古くからよく知られている6),特に従来非常に稀とされてきた外頸動脈外側位1,3,4,10,11)は,最近それほど稀なものではないということが認められるようになってきた.しかし,この変化は臨床的には従来あまり意義がないと考えられており,これが原因で神経症状を呈したとする報告は極めて稀であり6),それに基因した脳神経麻痺がみられたという報告は見当たらない.一方,頸部頸動脈の拡張を伴う蛇行性変化あるいは屈曲といった病態はかなりの頻度でみられるが,これにより脳神経が障害されたとする報告も極めて稀である8,12).われわれは,外頸動脈外側位,内頸動脈—外頸動脈分岐部高位,さらに内頸動脈の拡張を伴う蛇行性変化が合併することにより生じたと思われる末梢性舌下神経麻痺の1例を経験し,手術により治癒せしめえたので報告する.

放射線照射が著効をみた特発性—頸動脈・海綿静脈洞瘻の1例

著者: 佐藤透 ,   山本祐司 ,   浅利正二

ページ範囲:P.1321 - P.1325

I.はじめに
 いわゆる特発性頸動脈・海綿静脈洞瘻(spontaneouscarotid-cavernous sinus fistula,以下特発性CCFと略す)は中・高齢者に発生し,血管写上dural fistulaを呈することが多く,direct fistulaを呈する外傷性CCFに比べ短絡血液量は少なく,症状も比較的軽度である.しかしながら,その治療方針,手術術式に関してはい表だ決定的なものはなく,ことに血管写上,流入動脈に内頸動脈枝が関与する症例は治療上,最も問題となってくる6)
 最近われわれはmeningohypophyseal trunkを流入動脈とした特発性CCFが放射線照射により完全に消失した1例を経験したので,自験例を呈示し,若干の考察を加えて報告する.

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「脳神経外科」第11巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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