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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科11巻6号

1983年06月発行

雑誌目次

"山登り"に来て下さい

著者: 高久晃

ページ範囲:P.561 - P.562

 私達の学校は富山平野の中央の丘陵に立っています.その建物の屋上に出ますと,平野をさえぎる屏風のように日本アルプスの立山連峰が真白な雄姿を見せ,その峯々が日本海の夕日に映えだされて真赤に染まる姿は筆舌に尽し難く,壮厳ですらあります.
 四季折々に機会ある毎にこの山に入りますが,5月,6月でも広大な立山の弥陀ヶ原は丈余の雪に覆われskiを楽しむことができ,また,7月に入ればこの高原には高山植物が咲きみだれます.そのお花畑と雪渓の間を雷鳥の親子がhumorousに散歩している姿は,まさにこの世の極楽浄土を見る思いがします.盛夏は短く,やがて山々は真赤なもみじに染り,10月初めには初冠雪.その後,山はまた長い冬の眠りに入ります.

総説

脳振盪の病態—その形態上の変化と脳循環代謝

著者: 坪川孝志

ページ範囲:P.563 - P.573

I.はじめに
 頭部衝撃直後に一過性意識障害をはじめとする神経症状が出現し,肉眼的に認むべき脳損傷(gross brain in-jury)を伴わない場合,これを脳振盪(concussion,com-motio cerebri)といい,本邦では臨床的には荒木分類のII型に相当する.認むべき脳損傷がなくて,一過性に意識障害を発生するのが脳振盪であるとすれば,その意識障害の発生は,肉眼的にはnonvisibleな形態的変化ないしは機能的な変化に由来するものであり,しかもそれらの変化は可逆性病変でなければならない.
 この変化の本質を知ることは,意識障害の発生機序の解明にもつらなる興味ある研究対象で,古くから多くの研究が積み重ねられてきている.衝撃による脳機能の低下が脳振盪の本質とするDenny-Browliら(1941)11)の説と,衝撃により脳機能が亢進しているのが本質であるとするWalkerら(1944)80)の説が対立している.しかもその異常の発生部位は脳幹を中心に発生するとするGurdjian(1955)23)の説と,むしろ大脳半球の皮質障害が先行するとするOmmayaら(1974)55)の説が対立している.

解剖を中心とした脳神経手術手技

脳動脈の微小血管吻合術—STA-MCA anastomosis

著者: 江口恒良

ページ範囲:P.575 - P.580

I.はじめに
 脳動脈の微小血管吻合術は,1967年YasargilとDonaghyが臨床の第1例を報告して以来,既に15年が経過した6)
 頸動脈領域では主にsuperficial temporal artery-middle cerebral artery(STA-MCA)anastomosisが,椎骨脳底動脈領城では主にoccipital artery-Posteriorinferior cerebellar artery(OA-PICA)anastomosisがこれまでに施行されてきた1)

Current Topics

Balloon catheterを利用した無縫合血管吻合法による血管移植術

著者: 畑中光昭 ,   岩淵隆

ページ範囲:P.583 - P.588

I.はじめに
 脳神経外科領域における血行再建術は自家静脈片3,9,12,17)や代用血管16)の応用へと発展してきたが,一方,成績の向上とともに操作の簡便化,操作時間の短縮などにも目が向けられ6,14,19,25),研究が進められてきた.その一方法として無縫合血管吻合法の開拓4-6,8,11,13,14,18,19,22−25)が行われてきたが,著者らもsaccaroseを上成分とした可溶性支柱と生体接着剤を用いた無縫合血管吻合法を外径1mmの血管吻合に試み,実験的自家小静脈片移植術に応用できた5,6),本法では吻合血管の内腔保持が大切で,特に伸縮性や材質の異なる血管,口径差を有する血管同士の吻合には内腔のサイズや形態を自由に調節することが一層必要となり,この条件を満足できるmicroballoon catherを用いるに至った7).今回はこのballoon catheterと接着剤を用い,自家静脈片および代用血管,expanded polytetrafluoroethylere(以下EPTFE)などを移植片とした無縫合血管移植術を端々および端側吻合法により試みたので報告したい.

研究

脳外科疾患における経大腿カテーテル塞栓術

著者: 高橋伸明 ,   菊池晴彦 ,   唐澤淳

ページ範囲:P.591 - P.602

I.はじめに
 血管造影の手技が発達するにつれて,選択的あるいは超選択的血管造影が可能となり,それに伴い,近年intravascular surgeryもめざましい発展を遂げつつある.
 すなわち,外頸動脈系が関与する血流豊富な腫瘍(髄膜腫,頸静脈球腫瘍,顔面血管腫,副鼻腔や咽頭の腫瘍など),顔面および頭皮動静脈奇形,頸動脈海綿静脈洞瘻,硬膜動静脈奇形あるいは脳動静脈奇形に対して,力テーテル塞栓術が一般に行われてきた.

Diltiazemによる脳血管攣縮の治療に関する実験的研究—Cinnarizine,verapamil,nifedipineとの比較

著者: 高木卓爾 ,   福岡秀和 ,   神谷健 ,   永井肇 ,   堀田健

ページ範囲:P.605 - P.611

I.はじめに
 脳動脈瘤破裂後のくも膜下出血によって発生する脳血管攣縮には臨床上しばしば遭遇するが,その治療は困難で効果的な対策は見いだされていない.著者ら9,24,30)は脳血管平滑筋においても骨格筋と同様,収縮.弛緩の調節機序に直接Ca2+が関与していることを明らかにした.
 過去10年間に,Ca2+拮抗剤8)は心臓血管障害の治療に重要な役割を担うようになった.Ca2+拮抗剤の作用機序はverapamilとnifedipine29)に代表されるように細胞内へのCa2+流入の阻害によって説明される6).このような作用機序は,心筋,心臓伝導系,血管平滑筋で明らかにされている.最近ではCa2+拮抗剤の血管拡張作用は,末梢血管平滑筋に比して脳血管平滑筋でより強いことが示され1,11,20,27),このような特異な作用はpapaverine,nitrites,adenosineにはみられない11,26).さらに,Ca2+拮抗剤は脳血管攣縮の治療にも効果のあることがわかり2,5,23),最近では虚血脳や無酸素症に対して防御作用のあることも動物実験で示唆されている12).Ca2+拮抗剤のなかには血圧にあまり影響を及ぼさない程度の量で,脳血管に作用するものもあるので,脳血管攣縮の治療に期待が持たれる.

ウサギ脳腫瘍モデルの作製

著者: 中島麓 ,   桑原武夫

ページ範囲:P.613 - P.615

I.はじめに
 悪性脳腫瘍の治療は,手術療法と補助療法とが組み合わされ,その経過中に種々の検査により経過が観察されるのだが,私たちが今日使っているマウスやラットの脳腫瘍モデルは,補助療法の実験モデルとしては十分であっても,手術操作や頻回の無菌的採血を行うには不自由であった.そこで私たちは,より大型な動物の脳腫瘍モデルを求めていたが,VX2ウサギ皮膚癌の脳内移植により,手術操作と補助療法を行うに十分な脳腫瘍モデルを作製することができた.

特発性ウイリス動脈輪閉塞症の脳循環動態(第1報)—電気生理学的所見と神経放射線学的所見の対比検討

著者: 柴田太一郎 ,   永井肇 ,   新田正廣 ,   梅村訓 ,   若林繁夫 ,   高木卓爾 ,   岩山馨

ページ範囲:P.617 - P.624

I.はじめに
 特発性ウイリス動脈輪閉塞症の小児2例,成人2例のSTA-MCA吻合術前後に,at restおよび過呼吸後の脳波(小児例)および体性感覚誘発電位(SEP)を記録した.それらの所見と,脳血管写上のウイリス動脈輪後半部の血行動態,およびCTscan上のlow density lesionとの関連を検討した上で,本症に対するbypass術の手術適応に対し考察を加えた.さらに本症の小児例に特徴的といわれる脳波のrebuild up7,8)をSEP所見と関連づけて検討した.

超音波定量的血流量測定装置ならびに脳波等電位地図による頭蓋内外血管吻合術後の評価

著者: 兵頭明夫 ,   水上公宏 ,   河瀬斌 ,   長田乾 ,   柚木和太 ,   山口克彦

ページ範囲:P.627 - P.633

I.はじめに
 閉塞性脳血管障害に対する頭蓋内外血管吻合術(EC/ICバイパス)は,1967年Donaghy5)とYaşargil23)によって報告されて以来,現在では広く行われている手術法である.その手術適応は,臨床症状ならびに脳血管撮影をはじめとする種々の補助検査によって決定されているが10,18),その結論はいまだ明確なものとはなっていない.また,その効果判定についても,臨床症状の改善および脳梗塞発作の予防という観点から,種々の補助検査を駆使して検討されているが10,18),十分な結論は得られていない.現在,カナダ,アメリカ,日本,ヨーロッパ各国において,頭蓋内外血管吻合術の術後の長期予後や保存的治療との比較検討などについて,EC/ICバイパス国際協同研究3)が行われているが,その結果が待たれているのが現状である.
 本研究の目的は,近年わが国において開発された超音波定量的血流最測定装置(Ultrasonic Quantitative FlowMeasurement:UQFM)6,11)ならびにマイクロコンピユータを用いて脳波を半定量的に画像表示するシステム(脳波等電位地図/Computed Mapping of EEG:CME)17,22)を用いて,EC/ICバイパス手術の有効性を客観的にかつ非侵襲的にとらえることである.

症例

側頭動脈炎—血管写上広範な血管炎を認めた1例

著者: 山本悌司 ,   冨士達史 ,   中村勉 ,   広瀬源二郎 ,   角家暁

ページ範囲:P.635 - P.640

I.はじめに
 高齢者の頭痛の原因の1つとして側頭動脈炎は忘れてならないものであるが,わが国ではいまだ稀な疾患である1).この動脈炎は側頭動脈のみならず,他の動脈系をも侵すことが知られている.特に眼動脈系への炎症波及による失明は約1/3の症例に出現するといわれ3),本症の重篤な合併症として知られている.本報告では側頭動脈炎の定型的臨床像と動脈生検所見を示した1症例を呈示し,広範な頭部の血管炎が頭蓋血管写上証明されたので,その意義について考察を試みた.

頭蓋骨および硬膜転移を来たした膀胱Carcinoidの1例

著者: 村山享一 ,   志村俊郎 ,   諫山和男 ,   松本正博 ,   大脇潔 ,   中沢省三

ページ範囲:P.643 - P.649

I.はじめに
 carcinoidとは本来主として消化管に発生する発育が緩徐な腫瘍であり,転移は比較的少なく,癌より良性の経過をとるものとされている7).しかし稀に悪性化し,肝臓・副腎・骨に転移が認められる2,5).頭蓋への転移は極めて稀である.今回箸者らは,頭蓋骨および硬膜に転移したcarcinoidの1症例を経験したので報告する.

DICを合併し硬膜下血腫を呈した硬膜転移癌の1例

著者: 平島豊 ,   神山和世 ,   遠藤俊郎 ,   高久晃

ページ範囲:P.651 - P.656

I.はじめに
 突然の激しい頭痛,嘔吐,めまいというくも膜下出血様発作にて発症し,経過中disseminated intravascularcoagulation syndorme(以下DIC)を合併し,剖検によって癌の頭蓋骨,硬膜への転移と硬膜下血腫を認めた症例を経験した.その病態に関する若干の文献的考察を加え報告する.

血友病Aに併発した後頭蓋窩急性硬膜外血腫の2手術治験例

著者: 大石光 ,   小沼武英 ,   溝井和夫 ,   森和夫

ページ範囲:P.659 - P.664

I.はじめに
 最近,第VIII因子製剤の開発により血友病患者の外科的治療法は著しい進歩をとげている,しかし,頭蓋内出血に関しては,いまだ死亡率も高く2,8),問題の多いところである.
 われわれは血友病Aに併発した後頭蓋窩急性硬膜外血腫の稀な2症例を経験し,いずれも手術により救命治癒せしめたので報告する.そのうちの1症例は重症例で,開頭術後に消化管出血や腸閉塞の合併症を来たし,3回の開腹術を行い,第VIII因子製剤の長期大量投与を行ったので,その使用法などについても検討考察を加えた.

頭蓋内出血を来たしたvon Willebrand病の1治験例

著者: 溝井和夫 ,   小沼武英 ,   甲州啓二 ,   森和夫

ページ範囲:P.667 - P.671

I.はじめに
 出血性素因を有する患者に合併した頭蓋内出血は死亡率も高く,早期の適切な止血管理と治療が患者の救命につながることはいうまでもない.最近,われわれは血友病の類縁疾患であるvon Willebrand病に合併した外傷性大脳基底核部出血および脳室内穿破の稀な1小児例を治癒せしめたので,若干の考察を加え報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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