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総説
脳振盪の病態—その形態上の変化と脳循環代謝
著者: 坪川孝志1
所属機関: 1日本大学脳神経外科
ページ範囲:P.563 - P.573
文献購入ページに移動頭部衝撃直後に一過性意識障害をはじめとする神経症状が出現し,肉眼的に認むべき脳損傷(gross brain in-jury)を伴わない場合,これを脳振盪(concussion,com-motio cerebri)といい,本邦では臨床的には荒木分類のII型に相当する.認むべき脳損傷がなくて,一過性に意識障害を発生するのが脳振盪であるとすれば,その意識障害の発生は,肉眼的にはnonvisibleな形態的変化ないしは機能的な変化に由来するものであり,しかもそれらの変化は可逆性病変でなければならない.
この変化の本質を知ることは,意識障害の発生機序の解明にもつらなる興味ある研究対象で,古くから多くの研究が積み重ねられてきている.衝撃による脳機能の低下が脳振盪の本質とするDenny-Browliら(1941)11)の説と,衝撃により脳機能が亢進しているのが本質であるとするWalkerら(1944)80)の説が対立している.しかもその異常の発生部位は脳幹を中心に発生するとするGurdjian(1955)23)の説と,むしろ大脳半球の皮質障害が先行するとするOmmayaら(1974)55)の説が対立している.
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