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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科11巻8号

1983年08月発行

文献概要

研究

悪性脳腫瘍に対する新しい治療法の試み—2:Adriamycin局所注入療法について

著者: 中沢省三1 伊藤保博1 志村俊郎1 松本正博1 矢嶋浩三1

所属機関: 1日本医科大学脳神経外科

ページ範囲:P.821 - P.827

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I.はじめに
 膠芽腫をはじめとする悪性脳腫瘍の治療法には,手術療法に加え,放射線療法と抗癌剤の全身投与法が現今最も普通に行われている治療法である.しかし最近では,現在行われている抗癌剤の治療法に対する限界と副作用に言及する論文が数多くみられるようになった6,8,14,15)
 われわれは全身投与法の欠点を補うため抗癌剤の局所注入療法を考案改良し,前報にてbleomycin(BLM)局注療法についての効果を報告した10).そのなかで,静注された57Co-BLMが腫瘍部位にわずかなhot Spotを作り,僅々2-3時間でwash-outされてしまうのにひきかえ,局注された57Co-BLMは数日間も腫瘍床内にとどまり,ゆっくりとwash-outされることを確認した,しかし,臨床例の欠点として,局注されたBLMは腫瘍床組織と極めて強い反応を起こし,強度な線維性結合組織の増生を来たすため,反復投与するBLMの深部腫瘍組織への浸透が著しく妨げられることがわかった,これはBLMによる局注療法の大きな欠点であり,このため悪性グリオーマの治療成績が必ずしもよくない結果に終ったものと反省される.今回は,線維性反応を来たしやすいBLMに代えて,組織への浸透性が極めて高いと考えられているadriamycin(ADM)を使用することにより,悪性グリオーマに対してはなはだ良好な治療成績が得られたので,脳腫瘍組織におけるADM濃度の静注法と局注法の比較検討を加えて報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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