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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科12巻11号

1984年10月発行

雑誌目次

楽をして先に進もう

著者: 矢田賢三

ページ範囲:P.1229 - P.1229

 つい先日,手術室に入ってみると麻酔医が何やらピッカピカの新しい麻酔器を操って麻酔をかけてくれていた.また何か新兵器を使っているなと,特に気にもとめずに手術が進んでいくと,突然ピーピーッと電子音が響き,続いて,とても美声とはいえぬmonotonousな女性の声が聞こえてきた."カンキリョーフソク,カンキリョーフソク"と.近頃車のライトを消し忘れてキーを抜くと"ライトヲケシテクダサイ"というあの声である.思わず,"麻酔器までが"と苦笑してしまった.
 小さなカメラから,車,CT,NMRに至るまで,近頃の身近なノハードウェアの進歩は猛スピードで進んでいる.これらハードの進歩は作業従事者の作業能率を著しく向上させてきている.

総説

視床下部性思春期早発症—そのⅡ

著者: 森和夫

ページ範囲:P.1231 - P.1237

Ⅲ.視床下部腫瘍
 本誌前号でふれたhamartoma(過誤腫)があまりにも有名だが,ほかに視床下部のglioma(主にastrocyto-ma)や神経細胞系腫瘍でPPを伴った症例の報告も散見される.
 視床下部腫瘍によるPPは,①後部のhamartoma,②前部の鞍上部腫瘍(ほとんどがoptic glioma)および③視床下部自体のglioma(ときにgangliocytomaなど)の3者に区分できると非常に便利であるが,古い報告例では,そのいずれであったのか明らかでないものが多い.また,このことが視床下部腫瘍によるPP症例の解析を困難にする大きな因子ともなっている.

解剖を中心とした脳神経手術手技

拡大中頭蓋窩法(慶大変法)による聴神経腫瘍手術

著者: 塩原隆造 ,   戸谷重雄 ,   神崎仁

ページ範囲:P.1239 - P.1245

I.はじめに
 1777年Sandifort22)がはじめて聴神経腫瘍の剖検報告をし,1894年Ballance3)が最初の手術成功例を報告して以来,約1世紀の間,聴神経腫瘍手術には多くの工夫が加えられ今日に至っている6,12,15,19,21).現在では聴神経腫瘍へのアプローチは基本的には経後頭蓋窩法,経迷路法,経中頭蓋窩法が行われ,他にこの三者を組合わせた方法が行われている.一方,1949年Atkinson2)が聴神経腫瘍手術における前下小脳動脈の重要性を強調して以来,聴神経腫瘍の手術死亡率は低下したが,手術顕微鏡を1961年House11)が経迷路法に,1965年Rand & Kurze20)が後頭蓋窩法に導入してからはさらに手術成績の向上をみるに至っている.しかし手術成績の一層の向上を目的として,1970年King & Morrison15,16,18)は経迷路法の長所をとり入れた経迷路経天幕法を行い1.7%と低い手術死亡率を得,Bochenek4)はさらにこれをmo-difyし,むしろ経中頭蓋窩法を主体とした拡大中頭蓋窩法を行った.

研究

急性硬膜下血腫の予後判定因子—特にCT像を中心として

著者: 林龍男 ,   吉田康成 ,   宇野俊郎 ,   小林博雄 ,   柴田憲男 ,   植木茂年 ,   鈴木宏俊 ,   高橋愛一郎

ページ範囲:P.1247 - P.1252

I.はじめに
 頭部外傷疾患のなかでも,急性硬膜下血腫はその死亡率が近年の報告でも約50-90%と極めて予後のわるい疾患である4,6,7,16,18-20).しかし同じ急性硬膜下血腫でも,外傷に基づく脳挫傷の程度,出血源および血腫の大きさ,脳幹部に対する影響の程度などの諸条件により,その予後は異なってくると思われる,そこで私たちは頭部外傷後早期にCTが施行され,急性硬膜下血腫と診断された35例を,予後の良好であった群と予後不良群の2群に分け,両群のCT所見の特徴および差異を比較観察し,急性硬膜下血腫の予後の判定因子としてCTを利用する場合,どのようなCT所見が重要であるかを中心に検討した.

Flow cytometryによる脳腫瘍の生長解析—Part 4:転移性脳腫瘍

著者: 岡信行 ,   河本圭司 ,   西山直志 ,   川上勝弘 ,   中島孝之 ,   河村悌夫 ,   松村浩 ,   玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.1255 - P.1262

I.はじめに
 脳腫瘍のDNA量についての検索は,flow cytometry(FCMと略す)またはflow microfluorometryにおける機器の開発研究により15),瞬時にして相対的DNA量の測定ができるようになり,すでに基礎的分野から臨床的分野まで幅広く報告がなされてきている8,13,14,16-21,35)
 われわれは,1975年Krishanが開発したpropidium iodie9,23)を用い,種々の脳腫瘍細胞の悪性度がFCMにより簡単かつ迅速に判明すること16-21),またglioblas-tomaにおいて部位別に異なったパターンをとることなどを指摘してきた20).しかし,転移性脳腫瘍についての検索はまだ少なく,1978年の星野らの報告にみられるにすぎない14).一方,原発巣としての面から注目すると,FCMを用いて肺癌1,11,31),乳癌2),前立腺癌4,30,37)などのDNA最分布についての検索がいくつか報告されている.今回われわれは,種々の転移性脳腫瘍について,FCMによるDNAヒストグラムのパターンおよびcell cycleについて分析するとともに,原発性腫瘍として乳癌,肺癌についても同様に分析し,両者の相関関係について検討した.

徐放性ペレットによる血管拡張剤の局所投与について—基礎的研究・第2報

著者: 奥村禎三 ,   織田祥史 ,   有光哲雄 ,   森惟明

ページ範囲:P.1265 - P.1271

I.はじめに
 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血には約40%の頻度で脳血管攣縮が続発するが15,22),ネッククリッピングの如何にかかわらず,攣縮の存在する症例の予後はそうでない例よりも不良である10,12,13,22).この脳血管攣縮に対して種々の薬剤による治療が試みられてきたが,いずれもまだ決定的な効果をあげるには至っていない8,16-18,26).今まで多くの研究者によって種々の血管拡張剤の脳血管攣縮に対する有効性が報告されている1,3,7,8,11,14-16,18,21,26,27)が,その共通した欠点として作用時間の短いことが挙げられる.
 著者らは,すでにシリコン基剤を用いた塩酸パパベリンの徐放性剤を作製し,その基礎実験につき報告した20).今回,Ca++拮抗剤である塩酸ジルチアゼム(Herbes-serR,田辺,力価は塩酸パパベリンの3-6倍),および塩酸ニカルジピン(PerdipineR,山之内,力価は塩酸パパベリンの100-300倍)にて同様の徐放性ペレットを作製し,in vitroにおける放出実験を行ったので,既報の塩酸パパベリンの成績と比較対照して報告する.

動注法による脳血管のDigital subtraction angiography

著者: 永田泉 ,   菊池晴彦 ,   唐澤淳 ,   光木徹 ,   鳴尾好人 ,   高宮誠

ページ範囲:P.1273 - P.1278

I.はじめに
 脳神経疾患の診断における脳血管造影の重要性については述べるまでもないが,最近digital subtraction an-giography(DSA)が開発され,造影剤の静注によっても脳血管の造影が可能となり,比較的non-invasiveなため主としてスクリーニング検査として使用されるようになった2,3,7-9).しかし静注法によるDSAの解像度は特に頭蓋内血管の診断に関しては不十分であり,術前の精査目的にこれを用いるのはいまだ不適当と考えられる.今回,脳神経疾患の診断におけるDSAの可能性と有用性を検討するため動注法によりDSAを行い良好な結果を得たので報告する.

Atlanto-axial dislocationに対するCTの有用性と手術適応,手技について

著者: 小山素麿 ,   内堀幹夫 ,   久保和親 ,   半田譲二

ページ範囲:P.1281 - P.1290

I.はじめに
 頭蓋-頸椎移行部は発生学的,解剖学的にも,機能の面からも独特で複雑な部位であり,その病的状態の解釈,治療の方法には議論が多い.
 そのX線単純撮影,断層撮影など,従来からの放射線学的補助検査についてはMcRae14),HinckとHop-kins9),Shapiroら30),Menezesら15)などに代表される多くの研究があり,すでに完成の域に達したかに思われた.しかしCTの導入によりさらに詳細な情報が追加されつつあり26),Levanderら13),井須ら10),宮坂ら17,18)はメトリザマイド注入後のCT(以下met.CTと略す)を行い,atlanto-axial jointが病的状態にあるときの脊髄の形態までも明らかにしている.atlanto-axial dislo-cation(以下AADと略す)の治療に関してもShapiroら30),阿部ら1)の優れた研究があり,最近,Schiessら29)は牽引や外固定よりまず手術をすべきであると強調している.

症例

頸動脈内膜剥離術バイバルーン内シャントの使用経験

著者: 古井倫士 ,   浅野良夫 ,   下沢定志 ,   蓮尾道明

ページ範囲:P.1293 - P.1297

I.はじめに
 従来本邦では頸動脈の狭窄に由来する脳血管障害は少ないとされてきたが1),近年徐々に増加しつつあるという報告もみられ2),今後,脳外科における内膜剥離術の機会は増えることが予想される.頸動脈内膜剥離術の術式はすでに確立されたもので大きく議論となる点はないが,術中にシャントを用いるか否かは諸家によって意見の異なるところである.われわれは手術時間を懸念することなく確実な手術操作が可能であるという基本に立ち,これまで使用を原則としてきた.しかしシャント使用はかえって手術操作を困難にし,また合併症の原因にもなるとの指摘もある.そこでわれわれはこれらの欠点を除くべく新しい内シャントを試作し3),これまでに7症例に使用,満足する結果が得られたので,症例を呈示しながらその有用性について報告する.

小指球筋を回避する尺骨神経深枝麻痺

著者: 橘滋国 ,   三井公彦 ,   酒井英光 ,   大和田隆 ,   矢田賢三

ページ範囲:P.1299 - P.1304

I.はじめに
 尺骨神経の絞扼性神経障害については,肘管症候群(cubital tunnel syndrome)がよく知られている.さらに末梢の手根部での尺骨神経障害については,ギオン管症候群(Guyon canal syndrome)として報告されているが,絞扼性神経障害としては比較的稀なものであり,また,その発生機序についても不明な点が多い.最近われわれは,尺骨神経浅枝麻庫による感覚障害を欠き,手指筋の運動障害のみを示す尺骨神経深枝の単独麻痺で,しかも小指球筋を回避する特異な2症例を経験したので,その発生機序,診断・治療上の問題点について若干の考察を加え報告する.

透明中隔より発生したSubependymomaの1例

著者: 小林清吉 ,   本田英一郎 ,   東健一郎 ,   古賀誠 ,   杉原甫 ,   小林清市

ページ範囲:P.1307 - P.1312

I.はじめに
 1945年Scheinker21)がsubependymal glia由来と考えられる2例の第4脳室腫瘍を報告し,その組織学的特徴よりsubependymomaという新しいentityを提唱した.本腫瘍は中年以降の年代で,剖検時偶然発見されることが多く,そのほとんどは第4脳室にみられる17).その他に,側脳室,透明中隔,モンロー孔,中脳水道,脊髄にも発生し,種々の神経症候を呈し,外科的治療をうけたものも少なくない1-4,6-8,10-12,15,18,21-23,25,26)
 今回われわれは,両側側脳室前角内に大きく発育し,手術および組織学的検討により透明中隔より発生したと考えられるsubependymomaの1例を経験した.透明中隔のsubependymomaは,われわれの調べ得た範囲ではこれまで7例の報告に留まり(Table 1),稀であると考えられ,ここに若干の文献的考察を加え報告する.

四丘体部くも膜嚢胞—5症例の臨床的考察

著者: 藤田勝三 ,   佐藤博美 ,   玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.1315 - P.1322

I.はじめに
 くも膜嚢胞は良性の非腫瘍性脳実質外占拠性病変で,その内容液として脳脊髄液様の液体を貯溜した嚢胞で,くも膜の存在するあらゆる部位に発生可能であり,その主要発生部位として,sylvian fissure2,6),interhemi-spheric fissure13),supra-sellar region10,16,17,20,22),cere-bello-pontine angle2,6),quadrigeminal cistern8,9,14),retrocerebellar region15),convexity2,6)などがあげられるが,このなかでsylvian fssureに接して生じる中頭蓋窩くも膜嚢胞が最も頻度が高い7,18).くも膜嚢胞はCTの出現以来,その特徴的な所見からCTにより比較的容易に診断することができ,このくも膜嚢胞に関する報告例が増加してきたが,今まで極めて報告の少ないquadrigeminal cisternに発生したと考えられるくも膜嚢胞5例を経験したので,その5例の臨床所見および外科的治療法を中心に若干の文献的考察を加えて報告する.

外傷性脊髄空洞症の1例

著者: 中村勉 ,   角家暁 ,   江守巧 ,   郭隆璫 ,   伊東正太郎 ,   山本信孝 ,   寺中正昭 ,   戸島雅宏

ページ範囲:P.1325 - P.1331

I.はじめに
 脊髄外傷のあと数ヵ月から数年を経て損傷部位とは別の髄節に新たに痛みや筋萎縮と解離性知覚障害が起こり,これが脊髄内に生じた空洞に起因することは周知の事実であるが,この頻度は脊髄損傷症例の0.7-2.03%と極めて稀と報告されている5,11,20).またこの発生機序についても不明な点が多い.
 著者らも病歴と神経症状およびmetrizamide CTで確診し得た外傷性脊髄空洞症の1例を経験したので,症例の臨床経過を報告し,空洞の発生機序について考察を加える.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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