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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科12巻2号

1984年02月発行

雑誌目次

卒後研修について

著者: 石川進

ページ範囲:P.119 - P.120

 毎年各教室あるいは診療科が受け入れる若い医師は,教室・診療科の新たな活力源であり,将来の教室・診療科を背負って立つべき人材である.その中から,我が国の脳神経外科の発展に大きく貢献する人達も育ってこよう.これら若い人達の将来に大きな責任をもつ立場にいて,どのような卒後教育,研修方法が最も望ましいのかに頭を痛める.いわゆる関連病院での研修も含め,卒後教育のカリキュラムが確立された大学においても,幾つかの問題があると思う.
 脳神経外科学は神経科学の一部門であるが,同時に神経疾患を対象とする外科学の一分野でもある.従って若い医師の研修には一般外科の基礎的な訓練が必要とされ,周知のように諸外国では一定の期間一般外科を学ぶような制度のところが多い.我が国の脳神経外科認定医の中でも,少なくとも昭和30年代前半ないし後半までに大学を卒業された方は,かなりの程度の一般外科の修練を積んでおられる.またそれ以後の卒業者でも,ある程度外科で研修した人は少なくない筈である.このような研修が広く外科系一般に通じる考え方,知識,技術を習得する上に,また自分の視野を大きく広げるために有益であったと考える人はかなりあろうし,反対に自分の全力を脳神経外科一つに注ぐべきであったと思う人もあろう.それは個々の入が経験した外科における研修の期間,程度によっも異なってこよう.

解剖を中心とした脳神経手術手技

脊椎披裂の手術

著者: 林隆士

ページ範囲:P.121 - P.128

I.はじめに
 Spinal dysraphismは診断面においては水溶性造影剤の開発にてより精度の高い脊髄造影が得られるようになり,さらに全身用CTの応用により脊椎管内の占拠物の合併とその広がりが一層正確に把握可能となった.治療面では顕微鏡下での手術により,softな操作ができ,機能的成績も向上していると考えられる.その反面,患児側からいえば,長期生存者は対麻痺や膀胱,直腸障害をはじめ,その将来は大きなハンディーを背負った生活を強いられる運命となる.また,本疾患の発生機序がhydromyelic theoryに基づくにせよ,dysraphic theoryあるいはtraction theoryに基づくにせよ,多くの症例は一連の中枢神経系奇形を多発しているために,複雑な治療計画が要求される.さらに,潜在性脊髄披裂では,脊椎管内に脂肪腫,奇形腫,類上皮腫,上皮腫,血管腫などを伴うことも少なくない.また,tight filum termi-naleの存在によるtethered spinal cordも問題である.ここでは紙面の関係上,嚢胞性脊椎披裂としてmyelo-meningocele(myeloschisisを含む),潜在性脊椎披裂としてtethered cord syndrome(tight filum terminale)および腰仙部脂肪腫に関して,それらの手術手技について述べる.

研究

脳血管攣縮に対するPrazosin hydrochlorideの効果—実験的研究

著者: 石橋安彦 ,   今田隆一 ,   吉本高志 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.133 - P.139

I.はじめに
 くも膜下出血後に発現する脳血管攣縮の予知,予防あるいはその病態については種々の研究が精力的に行われており,次第にそれらが明らかにされてきてはいるが,しかしその予防,治療に関してはいまだ満足すべき方法の開拓には至っていない.
 われわれは,脳血管攣縮の発生には,その血管外膜に分布する交感神経終末が重要な役割を演じていることをすでに報告し5,11),さらにその交感神経終末は上頸神経節由来14-16)であることも発表してきた.そしてそれらの実験的事実に基づき,破裂脳動脈瘤の臨床例において上頸神経節切除術18)を攣縮発現の早期に施行し,その有効性を強調してきた.しかしその後,この手術的療法に代わる非観血的療法の開発の必要性を考慮し,その可能性を検討してきた.

実験的グリオーマ特異的キラーT細胞に及ぼすT細胞増殖因子(TCGF)の効果

著者: 山崎俊樹 ,   山下純宏 ,   半田聡 ,   難波雄二郎 ,   花岡正男

ページ範囲:P.141 - P.150

I.はじめに
 脳腫瘍に対する免疫療法のひとつとして,腫瘍抗原特異的キラーT(Tc)細胞をインターフェロン(IFN)とT細胞増殖因子(TCGF)とともに腫瘍内に直接投与する局所的免疫療法は大いに抗腫瘍効果が期待される.
 われわれは,すでに実験的マウスグリオーマの系を用いて,脳腫瘍に対しTc細胞が誘導されることを確認し36),Tc細胞の活性化と分化に対するIFNの効果の有用性に関して報告した37)

マンニトールによる脳梗塞の抑制—CTおよび組織像による実験的研究

著者: 大石光 ,   西嶌美知春 ,   小川彰 ,   吉本高志 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.153 - P.158

I.はじめに
 われわれはマンニトールの脳梗塞発現抑制効果を実験的,臨床的に種々検討し,その有効性について既に多くの報告を行ってきた7-10,13-15,18-21)
 近年CTの出現により脳梗塞による脳損傷の映像による経時的変化をダイナミックに把握できるようにはなったが,CTで描出される種々の所見が脳の組織変化とどのような対応を示すかについて検討した報告17)は少ない.

小児頭蓋内Germ cell tumorのびまん性発育および転移例の臨床病理像

著者: 田鹿安彦 ,   久保長生 ,   氷室博 ,   井上憲夫 ,   神谷増三 ,   本阿弥妙子 ,   遠山隆 ,   吉田伸子 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.161 - P.168

I.はじめに
 頭蓋内germ cell tumorは脳室壁,頭蓋内・脊髄くも膜下腔へびまん性発育をきたすことが報告されている.しかし報告例の大部分は剖検例である10).ところが近年CTが導入されてからは臨床例での報告が目立っている7,14,17,22,23,26).当科では15歳以下の頭蓋内germ celltumorを,現在までのところ19例経験している.そのうち播種性またはびまん性発育をきたした例は8例あり今回この8例の臨床病理像を検討したので報告する.

各種抗酸化剤などの虚血脳保護作用の実験的研究—特にMannitol,vitamin E,dexamethasoneおよびPFCの併用効果

著者: 藤本俊一 ,   溝井和夫 ,   大庭正敏 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.171 - P.180

I.はじめに
 われわれはすでに20%mannitolが虚血脳に対して保護作用を有することに注目し,この10年以上の間,各種脳虚血モデル犬19,37,54)を用いて,その有効性を各方面より検討報告し,また臨床応用についても発表してきた31,35,36,52,53).また本剤に人工血液として開発されたperfluorochelnicals(以下PFC)を追加することによって,さらに有効な抗虚血能力を生ずることも証明し22,38,39),これを脳梗塞急性期の臨床例に用い,その成果を発表してきた40)
 このmannitolの虚血脳への保護作用が何に基づくものかは判然としていなかったのであるが,木剤が活性酸素種の捕捉作用物質(free radical scavenger)としての作用を有することが知られるようになり3),また近年,脳組織障害過程に活性酸素に起因する生体膜の脂質過酸化反応の関与が新たな仮説として注目されるようになって9-11,20),脂質過酸化反応を抑制する薬剤,すなわちmannitolをはじめとする抗酸化剤が虚血脳の治療に有効であろうと推定するに至った.

急性期脊髄損傷に対する観血的治療法Posterior longitudinal myelotomyの効果について

著者: 橘滋国 ,   岡田耕造 ,   大和田隆 ,   矢田賢三

ページ範囲:P.183 - P.188

I.はじめに
 急性期脊髄損傷症例の観血的除圧術の適否についてはいまだ意見の一致をみない.損傷脊椎の支持機能再建の必要性は論を待たないが,損傷脊髄に対する積極的治療が,有効か否かで意見が分かれている.われわれは従来より,急性症例に対し積極的に除圧術を試みてきたが,その成績は満足するものとはいい難い.今回,観血的治療法として,さらに損傷脊髄の後方正中切截術(poste-rior longitudinal myelotomy)にて髄内減圧を行った急性期頸髄損傷例について分析したので報告する.

症例

原発性頭蓋内悪性リンパ腫の2例

著者: 安藤彰 ,   斎藤和子 ,   鈴木重晴 ,   岩淵隆

ページ範囲:P.191 - P.196

I.はじめに
 悪性リンパ腫は,最近の網内系学の進歩と相まって,その免疫学的,病理学的側面からの分類研究が特に盛んである.脳神経外科領域においても,近年頭蓋内悪性リンパ腫の報告は増えつつあるが,全脳腫瘍中に占める割合は少なく,稀なものの1つである.今回我々は,初回手術後15年余という長年月を経て局所再発をみた症例,および多発脳神経麻痺を主症状として発症し,病理組織学的にBurkitt typeと診断された症例,計2例の頭蓋内原発性と考えられる悪性リンパ腫を経験した.

眼窩静脈撮影後に自然治癒を示した外傷性内頸動脈海綿静脈洞瘻の1例

著者: 岩井良成 ,   堀江幸男 ,   西嶌美知春 ,   岡伸夫 ,   塚本栄治

ページ範囲:P.199 - P.203

I.はじめに
 内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)の自然治癒はそれほど稀ではなく,従来より約10%前後5,17,18)と報告されているが,自然治癒を脳血管撮影上で確実にとらえ,その治癒機転について考察を加えている報告7,11,21,22,24,26,28,30)は少ないようである.
 今回われわれは,眼窩静脈撮影直後より急速に症状が軽快し自然治癒した外傷性CCFを経験したので,若干の考察を加え報告する.

急性外傷性水頭症

著者: 酒井英光 ,   岡田耕造 ,   田辺貴丸 ,   森井誠二 ,   高木宏 ,   大和田隆 ,   矢田賢三

ページ範囲:P.205 - P.209

I.はじめに
 頭部外傷後の脳室拡大は,通常重症脳挫傷例に続発し,受傷後数日から数週後に発生すると報告されている1,2,5,6,8,11,13).しかし頭部外傷後,数時間以内に急速に脳室拡大が進行した症例の報告は極めて少ない3,6,14).したがって,頭部外傷後,早期に神経症状が急速に悪化する症例では,一般にその原因が頭蓋内出血や脳挫傷に求められており,進行性脳室拡大は注目されていない.また外傷後早期に脳室拡大を示す症例では,合併する脳損傷の程度が強いために,脳室ドレナージが無効であると報告されている2,4,6)
 最近われわれは,受傷時の意識障害が怪度であり,以後,数時間以内に急激な神経症状の増悪をきたし,CTscan上,頭蓋内出血や脳挫傷を伴わず,進行性脳室拡大のみを示した2小児例を経験し,脳室ドレナージのみにより予後良好に救命しえたので報告する.

Diencephalic syndrome—3症例の報告と考察

著者: 西本詮 ,   難波真平 ,   柳生康徳

ページ範囲:P.211 - P.219

I.はじめに
 著明なるいそうと血漿成長ホルモン(GH)の異常高値を特徴とするdiencephalic syndromeは,1951年のRussellの報告20)以来,文献上89例がみられるが5,15,23),本邦例は14例であり8-10,15-17,23,24),比較的稀な疾患であるといえる,本症ではその発症がほとんど2歳以下に限られる5)という臨床的特徴を有することから,症状の発現に年齢が重要な意義を有すると考えられる.このたびわれわれは本症の3例を経験し,そのうち2例は比較的長期間follow-upできたので〔このうち1例(下記の症例1)の経過の一部はすでに本誌にcase studyとして報告した17)〕,これらの症例を中心として,本症の臨床的側面,内分泌学的異常の意味などにつき考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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