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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科12巻3号

1984年03月発行

雑誌目次

総説

機能的脳外科の現状と将来

著者: 大江千廣

ページ範囲:P.227 - P.236

I.Introduction
 機能的脳外科は,1947年Spiegel and Wycisがste-reotaxic apparatusを人間の脳の手術に応用して以来,新しい手術手技として世界中に受け入れられ,1960年代の前半頃までは,多くの脳神経外科の施設で行われていたことは周知の通りである.しかし,その主な対象であったパーキンソン病が,L-Dopaの使用で手術適応からいったん外されたために急激な消退をみた.ところが,パーキンソン病自体L-Dopaの長期投与による諸問題,あるいはL-Dopaがもともと振戦には比較的効果が少いということから,再び手術適応と考えられる例が多くなりつつある.一方,最近10年位の間に急速にひろまったコンピュータを主役とする諸々の診断機器,特にCTスキャンのおかげで,脳深部の小病変が容易に発見されるようになって,定位的手術手技の応用範囲が見直され広い分野で使用されるようになってきた.
 機能的脳外科の原理は,必ずしも目に見えない脳の病変に由来する脳の機能的異常に対して,脳の一定点に侵襲(これは以下に述べるように破壊だけではなく刺激や特殊な賦活を含む)を加えて,機能の異常を正常の方向へもどそうとするものである.

研究

悪性脳腫瘍術後療法,特に間歇的Adriamycin頸動脈内注入療法の検討

著者: 坂井昇 ,   近藤博昭 ,   敷波晃 ,   平田俊文 ,   船越孝 ,   田辺祐介 ,   山田弘

ページ範囲:P.237 - P.243

I.はじめに
 いわゆるmalignant gliomaに対する今日の治療は,可能な限りそれを切除することがまず推奨される現状と思われる.加えて放射線療法・化学療法の向上に伴い延命効果が期待できる.しかしながら悪性度の高いものでは,1年以内の再発・死亡は半数以上に及び,かつ再発腫瘍例に対しては,その治療の困難性を一層痛感せざるをえない場合が多い.このような見地からも化学療法は魅力的なものである.近年adriamycin(ADM),nitro-sourea系などの新しい抗癌剤の開発により,その効果が期待されているが,依然それは十分確立されていない.
 われわれは以前ADMの患側頚動脈内投与を繰り返したところ,顕著な縮小効果が得られた悪性髄膜腫の1例を経験,報告9)した.以来,悪性脳腫瘍の術後あるいは再発の症例に対する療法の一環として,ADMの間歇的頸動脈内投与を施行してきており,それら症例に対する効果と腫瘍組織へのADM移行などについて検討を加えたので,報告する.

セラミック(Bioceram®)の頭蓋形成術への応用の可能性について—基礎的研究と臨床応用

著者: 奥村禎三 ,   織田祥史 ,   森惟明 ,   内田泰史 ,   森本雅徳 ,   上村賀彦 ,   清家真人 ,   村田高穂 ,   有澤雅彦

ページ範囲:P.246 - P.252

I.はじめに
 急性頭蓋内圧亢進に対する治療のうちで,外減圧術は有効な方法の1つであるが,外減圧術をはじめとする治療が効を奏し頭蓋内圧亢進の急性期を乗り越えた際に,残された骨欠損により種々の問題が生じてくる.美容上の理山2,24)もさることながら,リハビリテーション上,さらには社会復帰に際し骨欠損部の脳保護が必要になってくる2,20,24).また,骨欠損部の疼痛やsyndrome ofthe trephinedと呼ばれるpsychosomaticな症状を訴えたり,陥没による脳そのものへの圧迫による症状(sunk-en flap syndrome)などを生じることがある2,25).また,小児例では骨膜から骨形成が生じるといわれる2のものの脳の成長に伴い骨欠損部の膨隆を生じ,ひいては進行性の脳室拡大や骨欠損部以外での脳萎縮をきたすこともあるといわれる2)
 以上のような理由で頭蓋形成術が必要になるが,この際,補填材料の選択がひとつの問題となる.補填材料として必要なことは,その強度,形態および生体組織へのなじみ,周囲の骨形成を阻害しないことなどである.現在,補填材料としては,種々の条件下で保存した患者自身の除去骨弁をはじめとした自家骨などの生体材料と,チタンをはじめとする金属,およびアクリルレジン(methyl methacrylate)などの非生体材料が用いられている2,20,24)

天幕上Ependymoma,Ependymoblastomaの臨床像とCT像

著者: 花北順哉 ,   半田肇

ページ範囲:P.253 - P.260

I.はじめに
 CTスキャン導入以降,脳腫瘍の病理組織像,臨床経過とCT所見の関係について多くの報告がなされてきた1,7,11,12).このたび,京都大学脳神経外科においてCTスキャン導入以降に経験した天幕上ependymoma,ependymoblastomaについて,そのCT像を詳細に検討したところ,種々の興味ある知見が得られた.またCT像とこれらの腫瘍の臨床的悪性度はかなり相関すると考えられたので,ここに報告する.

重症脳梗塞に対する予防的外減圧術

著者: 上野一義 ,   大里孝夫 ,   佐々木寛 ,   野村三起夫

ページ範囲:P.261 - P.267

I.はじめに
 脳梗塞が広範囲の場合には,グリセロールやマニトールなどの抗脳浮腫剤やステロイドの使用にもかかわらず随伴する脳浮腫が増悪し,外減圧術の施行が必要となることがしばしばみられる.
 これまでわれわれは,天幕ヘルニアの症状,特に瞳孔不同の出現を見いだした時点で,直ちに外減圧術を施行してきたが,その予後は予想していたより悪かった.外減圧術の施行基準を再検討するため,重症脳梗塞例のCTを見直した結果,天幕ヘルニア発生の前段階ともいうべき所見を見いだした.最近はこのCT所見が出現した時点で,たとえ天幕ヘルニアの症状が出現していなくとも予防的に外減圧術を施行し良好な予後を得ているので,若干の文献的考察を加えて報告する.

脳動脈瘤術後患者のてんかん発作発現頻度と抗てんかん剤の予防的投薬—第1報

著者: 能谷正雄 ,   河村弘庸 ,   天野恵市 ,   谷川達也 ,   川畠弘子 ,   伊関洋 ,   塩飽哲士 ,   長尾建樹 ,   柿木良夫 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.269 - P.274

I.はじめに
 脳神経外科領域において,開頭術,頭部外傷後にてんかん発作が発現することは決して稀ではない.これらの発作を予知し予防することはわれわれ脳神経外科医に課せられた大きな課題の1つである.
 著者らは大脳皮質への手術侵襲が比較的少ない脳動脈瘤慢性期手術例において,術後てんかん発作の発現頻度を調べ,開頭術後の抗てんかん剤の予防的投与法について考察したので報告する.

慢性硬膜下血腫の精神症状の検討

著者: 坪井康次 ,   牧豊 ,   能勢忠男 ,   松木孝之

ページ範囲:P.275 - P.279

I.はじめに
 慢性硬膜下血腫の臨床症状としては,頭蓋内圧亢進症状,片麻痺,精神症状の3症状がよく知られている.このうち,はじめの2症状は頭蓋内の占拠性病変としての血腫に起因する症候として理解しやすいが,残りの精神症状に関してはまだ不明な点が多い.一般的にこの疾患は外科的治療によってきわめて良い結果が得られる疾患とされているが,ときに精神症状を残し,術後経過が予想に反して複雑になる場合がある.そこでわれわれは当院にて外科的治療を行った成人慢性硬膜下血腫32例について,①術前,術後にみられた精神症状の内容と特徴はどのようなものか.②術後精神症状を呈した症例に共通する因子としては何があるか.この2点につき検討を加え,さらに術後の精神症状発現に対する対策について推察を試みたので報告する.

脳脊髄血管の神経支配に関する形態学的研究—I.脳血管

著者: 板倉徹 ,   中北和夫 ,   亀井一郎 ,   仲寛 ,   中井國雄 ,   駒井則彦 ,   今井治通 ,   木村宏 ,   前田敏博

ページ範囲:P.282 - P.288

I.はじめに
 各種脳血管障害の病態生理を考える上で,脳循環調節機能は極めて重要な問題である.脳循環の調節は,従来,化学的因子がその主役を担っていると考えられてきたが,近年,神経性調節の重要性が強調されるようになった.
 脳血管壁に神経線維が存在することは,1664年Willisにより初めて明らかにされたといわれているが,1960年代のスウェーデン学派によるアミン組織螢光法の確立により10),脳血管神経支配の研究は一層活発となり,脳血管にアミン性線維が豊富に存在することが明らかとなった11,28).さらにアセチルコリンエステラーゼ(AChE)染色によりコリン性線維の存在も明らかにされた2,6).また局所脳血流の研究の進歩により,これらアミン性,コリン性線維の生理的役割が明らかにされつつある22,23,45,46).さらに近年,免疫組織化学が発達し,脳軟膜血管にはsubstance P含有線維や,vasoactive intestinal pep-tide含有線維も存在することが証明された9,13,24,43)

中大脳動脈瘤の手術

著者: 鈴木二郎 ,   吉本高志 ,   嘉山孝正

ページ範囲:P.289 - P.296

I.はじめに
 中大脳動脈瘤は,その大部分がM1-M2分岐部に発生し,それはSylvius裂の深部に位置する.著者らは長年にわたり,この部の動脈瘤の安全確実な手術方法の開発を目ざし,種々の検討を重ね,開頭法も試行錯誤し,いろいろと工夫してきた5,11).本報では,1981年6月までの約20年周に,頭蓋内直接手術を施行した413例の中大脳動脈瘤症例の直接手術の経験から,現在われわれが行っている手術方法について述べる.

重症頭部外傷患者における高頻度ジェット換気法(HFJV)の頭蓋内圧への影響

著者: 福家伸夫 ,   村上泰 ,   堤晴彦 ,   有賀徹 ,   豊岡秀訓 ,   三井香児 ,   高倉公朋 ,   稲田豊

ページ範囲:P.297 - P.302

I.はじめに
 頭蓋内圧(intracranial pressure,以下単に脳圧と称す)の亢進はしばしば致命的であり,原疾患の如何を問わず,その測定と制御は重要な意義をもっている.われわれの施設では脳圧亢進を伴う重症頭部外傷患者の管理に際しては,バルビツレート療法1)やマイコンを利用した自動制御による脳圧のコントロール2)を施行しているが,しかしそうした重症患者が呼吸不全を合併していることは決して珍しくなく,しかも呼吸状態と脳圧が互いに無関係ということはありえない,たとえば低換気によるPaCO2の上昇は脳圧の上昇をきたすし,一方,呼吸不全の治療として行われる人工的陽圧換気は,胸腔内圧の上昇をもたらして静脈還流を阻害するため,やはり脳圧の亢進をひきおこす可能性がある.
 われわれは最近新しい呼吸管理法として注目を浴びている3-7)高頻度ジェット換気法(High Frequency JetVentilation,以下HFJV)を症例に応じて採用しているが,それが脳圧に与える影響についての報告はBabin-skiらのイヌを用いた実験8)およびTodd9)らのネコを用いた実験があるのみで,臨床例は皆無である.そこでわれわれは今回,重症頭部外傷患者のウィーニング期にHFJVを施行し,平均頭蓋内圧および呼吸循環系への影響を間歇的強制換気(Intermittent Mandatory Venti-lation,以下IMV)あるいは持続気道内陽圧(ContinuousPositive Airway Pressure,以下CPAP)と比較してみた.

破裂脳動脈瘤による脳血管攣縮の脳梗塞防止を目的としたBarbiturate療法の適応,実際と臨床成績

著者: 宮城航一 ,   石島武一 ,   佐藤文明 ,   窪田達也 ,   桜谷憲彦

ページ範囲:P.303 - P.310

I.はじめに
 barbiturateの脳保護作用を応用して,臨床例で頭蓋内圧亢進,脳虚血性疾患に対するbarbiturate療法(以下B-療法と略)が試みられている5,7,9,12,25).すでにわたしたちも頭蓋内圧亢進,脳低酸素症に対するB-療法の12例の臨床報告を行つた14,15).そのうち5例は脳血管攣縮が原因で脳虚血をきたした症例で脳梗塞防止を目的にB-療法を行った症例であった.このなかで,脳主幹動脈の完全閉塞は交通動脈を介してのcross flowのなかった例はB-療法は無効であった.Rockoff22)やHoff7)の報告でもpermanent occlusionの症例は無効に終わっている.しかし脳血管攣縮は完全脳虚血をきたすものではなく,時間が経てば寛解するものである.したがって脳虚血から脳梗塞になるまで臨床的に対応できる時間的余裕が存在し,また脳血管攣縮の存在する期間,脳を保護してやればよく,脳梗塞をきたすほどの脳血管攣縮症例はB-療法のよい適応と考えた.
 破裂脳動脈瘤による脳血管攣縮に対するB-療法は,わたしたちの報告以外にSamsonら25)の3報告5,9)があるが,必ずしもよい結果は得られていない.その理由は,① どのような脳血管攣縮症例がB-療法の適応か,② B-療法の管理方法,③ B-療法の合併症の対策が成績に大きく関与していると考えた.この諸点について,わたしたちが以前発表した14)5例に加え,合計11例の経験をもとに検討を加えた.

開頭術中の超音波診断

著者: 兵頭明夫 ,   水上公宏 ,   田澤俊明 ,   富樫修

ページ範囲:P.311 - P.318

I.はじめに
 近年,超音波診断機器の発達により,開頭術中の超音波診断が再び試みられるようになってきた1,2,5-13),その応用は,現在までに脳腫瘍,脳内出血,水頭症などの手術について多く報告されているが,脳動脈瘤については,その部位や大きさの問題(すなわち,頭蓋底に近いため,直径10mm以下の小さなものが多い動脈瘤そのものの情報としては明白なものが得られにくい)もあるためか,付随した病変である脳内血腫や水頭症を伴っている場合を除いては,ほとんど応用されていないのが現状である.われわれは最近,超音波断層法による術中診断を32例施行したが,その結果,現在までに報告された有用性を十分確認することができた.さらに脳動脈瘤そのものについての情報も,large aneurysmの症例をはじめとして,有用な経験をいくつか得ることができたので,あわせて報告する.

症例

Bromocriptine療法により髄液鼻漏の消失したInvasive prolactinomaの1症例

著者: 奥山徹 ,   佐藤修 ,   大坊雅彦 ,   丹羽潤

ページ範囲:P.319 - P.323

I.はじめに
 下垂体腺腫のなかで,特にprolactinomaに対しbromocriptine療法が行われているが,その合併症に関して種々の報告がある.1979年Aronoffら1)はpro-lactinomaに対するtranssphenoidal surgery後,遺残腺腫にbromocriptine療法を行い,髄液鼻漏の生じた症例を報告し,また1982年Baskin & Wilson3)も同様な症例を報告している.
 最近われわれは,invasive prolactinomaに合併した髄液鼻漏にbromocriptine療法を行い,逆に髄液鼻漏が消失したと思われる症例を経験したので,抗腫瘍効果との関係からその機序について若干の考察を加えて報告する.

Persistent trigeminal artery aneurysmの1直達手術例

著者: 児玉南海雄 ,   渡辺善一郎 ,   佐々木達也 ,   渡部政和 ,   山尾展正 ,   丹治裕幸 ,   西坂利行

ページ範囲:P.325 - P.329

I.はじめに
 Persistent trigeminal artery(以下PTA)はQuain1)(1892)により最初の報告がなされたが,これを脳血管撮影にて確認したのはSutton15)(1950)である.以来,1980年末までに約400例の報告があり1),脳血管撮影上の頻度は0.2-0.3%とされている.これまでの報告によれば,PTAをもつ症例では,さまざまな頭蓋内血管病変の合併率が高く(25%)1),特に脳動脈瘤の合併頻度は14%前後であるとされている1,7).しかし,PTAそれ自体およびその分岐部に発生した動脈瘤の記載は数少なく(約3.5%),そのなかで直達手術を施行した報告はMor-rison11)らの1例のみである.今回われわれは,内頸動脈,PTA分岐部動脈瘤をもつ多発性脳動脈瘤症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Intrasellar arachnoid cystの1例

著者: 藤原正昭 ,   尾藤昭二 ,   長谷川洋 ,   大槻秀夫

ページ範囲:P.331 - P.337

I.はじめに
 トルコ鞍部には下垂体腺腫をはじめとして,頭蓋咽頭腫3),empty sella19),Rathke’s cleft cyst5,15,21),類上皮腫16,26)(類皮腫)などのさまざまなspace occupyinglesionが発生する.これらの病変のうちには,のう胞を形成するものが少なくない.intrasellar arachnoid cyst(ISAC)は稀であるが,上記病変との鑑別を要する疾患である.われわれは視力障害を主訴として来院し,経蝶形骨洞手術により治癒させることのできたISACの1例を経験したので報告する.

Prolactinomaの放射線治療後に発生したトルコ鞍部線維肉腫

著者: 永谷雅昭 ,   池田卓也 ,   大槻秀夫 ,   水田忠久 ,   森信太郎 ,   生塩之敬 ,   早川徹 ,   最上平太郎 ,   松本圭史 ,   森浩志

ページ範囲:P.339 - P.346

I.緒言
 1959年Terryら21)が下垂体腺腫の放射線治療後に発生した下垂体部線維肉腫の3例を報告して以来,同様の報告が相つぎ,下垂体腺腫に対する放射線治療の遅発性副作用のひとつとして注目を集めている.
 最近われわれは,invasive prolactimmaの女性例で,54歳時に腫瘍部分摘出術と引き続く総量5,000radのLineac照射を受け,2年余を経て下垂体部線維肉腫の発生をみた症例を経験した.本症例の詳細について報告するとともに,文献上20例の放射線照射後下垂体部肉腫発生例を検討し,下垂体腺腫の放射線療法について若干の考察を加える.

Mixed pial-dural arteriovenous malformationの1例

著者: 宝金清博 ,   佐藤正治 ,   越前谷幸平 ,   中川端午

ページ範囲:P.347 - P.352

I.はじめに
 Newton10)らによれば,頭蓋内動静脈奇形(以下AVMと略す)は脳血管撮影上認められるfeederの種類により,Pure pial AVM,mixed pial-dural AVM, pure dural AVMの3つに大別されるが,mixed pial-duralAVMは頻度も低く,その報告は少ない2-5,10-14,16).また,その発生機序に関しては定説がなく,疑問点も多い.
 今回われわれは,内頸動脈の皮質枝および外頸動脈の中硬膜枝をfeederとする天幕上,頭頂部に発生したmixed pial-dural AVMの1例を経験したが,本症例はmixed pial-dural AVMの発生機序,特にrete mirabile anasto-mose1,9,18)などの生理的な側副血行路のAVMへの関与という点で極めて示唆に富むと考え,その臨床経過を報告し,文献的考察を加える.

顆粒球減少症を転機として発症したInfected subdural hematomaの1症例

著者: 上之郷真木雄 ,   栗原正紀 ,   河野輝昭 ,   森和夫 ,   安田光則

ページ範囲:P.353 - P.357

I.はじめに
 最近われわれは,慢性硬膜下血腫の診断のもとに非観血的に経過観察中顆粒球減少症を併発し,これを転機として血腫が感染し硬膜下膿瘍をきたしたと思われる症例を経験した.そのCT所見,感染経路などにつき文献的考察を含めて報告する.

皮質下Cavernous angioma 6例の臨床的検討

著者: 森本哲也 ,   竹村潔 ,   榊寿右 ,   堀浩 ,   宮本誠司 ,   京井喜久男 ,   内海庄三郎

ページ範囲:P.359 - P.367

I.はじめに
 頭蓋内cavernous angiomaは比較的稀な疾患であるが,病巣が手術可能な部位に存在することが多く,手術による治癒率が高いことより従来から注目されてきた.また,hemangioma calcificansが難治性のてんかん発作の原因となる器質的病変として重要視されつつある.著者らは最近,皮質下に存在する比較的小さいCavernousangioma 6例を経験し,そのCT像や脳血管撮影像を中心に詳細な分析を行い,それらの所見と手術所見とを対比検討したので文献的考察を加えて報告する.

脳動脈瘤破裂後の尿崩症—特に直達手術前の症例について

著者: 宮坂佳男 ,   別府俊男 ,   松森邦昭 ,   中山賢司 ,   朝日茂樹 ,   高野尚治

ページ範囲:P.369 - P.376

I.はじめに
 脳動脈瘤破裂後尿崩症(diabetes insipidus,以下DI)に関する報告は散見される1,3,5,9,11,13,17-20,22,23)が,これらは主にDIが直達手術後に発症した症例である9,13,18,19,22).われわれは手術操作の影響が全く関与しない,直達手術前にDIの出現を認めた4症例を経験した.そこでこれら4症例を報告し,さらに直達手術前における脳動脈瘤破裂後のDIについて,その発現頻度および発現要因に関する検討を行ったので報告する.

外頸動脈起源の眼動脈を有し,一過性黒内障を頻発した外頸動脈狭窄症の1手術治験例

著者: 沢村豊 ,   中川翼 ,   桜木貢 ,   島功二 ,   杉本信志 ,   都留美都雄

ページ範囲:P.377 - P.381

I.はじめに
 一過性黒内障は他の内頸動脈系TIAと同様に,その原因が頸部頸動脈狭窄性病変に存することは古くから知られており,またそれは,頸部頸動脈血栓内膜剥離術のよい適応となることが少なくない,一方,近年,一過性黒内障が同側の内頸動脈閉塞例にみられることが注目され,外頸動脈狭窄性病変がその病因として論じられている1,2,4-7).しかしながら,その多くは内頸動脈閉塞後の側副血行路として機能していた外頸動脈-眼動脈系の虚血症状としての一過性黒内障であり1,2,4-9),眼動脈の分岐異常に起因すると思われるものはWeinberg(1981)の1例17)のみで,本邦での報告例は見当らない.著者らは最近,外頸動脈起源の眼動脈を有し,一過性黒内障を呈し,外頸動脈起始部の狭窄がその原因として考えられた極めて稀な1例を経験した.外頸動脈狭窄と一過性黒内障の関係につき多少の考按を加え報告する.

Congenital subclavian stealの1例

著者: 佐和弘基 ,   古瀬清次 ,   岡本好史 ,   斉藤正一

ページ範囲:P.383 - P.387

I.はじめに
 Subclavian steal syndromeは1960年Contorni8)によって記載され,翌年Reivich33)によってclinical syn-dromeとして確立された.その原因は動脈硬化性のものが最も多く80-90%を占めるが40),他に先天性心血管発育不全または欠損,手術後遺症,大動脈炎,外傷などがある.今回われわれは先天性心血管奇形による1例を経験したので報告する.

後下小脳動脈末梢部に発生した多発性脳動脈瘤の1例

著者: 桑山直也 ,   高橋慎一郎 ,   園部真 ,   池田秀敏 ,   香川茂樹 ,   池田俊一郎

ページ範囲:P.389 - P.393

I.はじめに
 椎骨脳底動脈系における動脈瘤の発生頻度は全脳動脈瘤の3-10%程度といわれており,なかでも頻度の高い部位は,脳底動脈分岐部,後大脳動脈,椎骨後下小脳動脈分岐部などである.一方,後下小脳動脈末稍部の動脈瘤になるとその頻度は少なく,さらに同部の多発性のものになると,その頻度は極めて少ない.
 最近われわれは,後下小脳動脈末梢部に多発した動脈瘤を経験したので,若干の考察を加え報告する.

Proteus mirabilisによる新生児脳膿瘍の1例

著者: 大久保忠男 ,   白根礼造 ,   増山祥二

ページ範囲:P.395 - P.400

I.はじめに
 脳膿瘍は稀な疾患でなく,また,その治療法も次第に確立されつつある.しかしながら新生児の脳膿瘍はその報告例も極めて少なく,文献的にみての予後は悪い.主た,その臨床像も,成人のそれに比して,後述するように極めて特徴的である.最近われわれは,proteus mirabilisを起炎菌とする新生児脳膿瘍の1例を経験し,手術を行い,現在経過観察中である.文献的考察を加えて報告する.

蝶形骨縁内側より前頭葉内に発育したYolk sac tumorの1例

著者: 菅原孝行 ,   鶴見勇治 ,   桑原健次 ,   片倉隆一 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.401 - P.406

I.はじめに
 頭蓋内原発yolk sac tumorは稀な疾患の1つでありgerm cell tumorの数%を占めるにすぎない,しかもそのほとんどが松果体部に発生しており,前頭葉内に発育したyolk sac tumorの報告は,われわれが渉猟しえた範囲ではいまだ見られない.
 今回われわれは,蝶形骨縁内側より第3脳室前方から前頭葉内に発育したyolk sac tumorに対し,手術,放射線療法および化学療法を行い完全寛解が得られた症例を経験したので,若干の考察を加え報告する.

頭蓋内内頸動脈Dolichoectasiaの1手術治験例

著者: 島健 ,   岡田芳和 ,   玄守鉄 ,   魚住徹

ページ範囲:P.407 - P.412

I.はじめに
 巨大脳動脈瘤は,脳血管の頭蓋内占拠病変として周囲の脳神経や脳組織の圧迫症状を示す代表的な脳血管病変としてよく知られており,近年,直達手術例の報告も増加している5,7,12,17,19,21).一方,脳血管が異常に拡張,延長し,巨大な紡錘型脳動脈瘤様所見を呈する疾患としてdolichoectasiaと呼称されるものがある14).この疾患は巨大脳動脈瘤とは異なる疾患群に属するものと考えられており,その外科的治療の報告は極めて少ない1,16).著者らは脳虚血症状を呈した頭蓋内内頸動脈に限局したdolichoectasiaの1症例に直達手術(浅側頭動脈-中大脳動脈〔STA MCA〕吻合術と内頸動脈近位部のclip-ping)を行い,症状を軽快させることができたので,文献的考察を加えて報告したい.

蝶形骨巨細胞腫の1例—臨床的特徴と放射線感受性について

著者: 松元幹郎 ,   長沢貞継 ,   宍戸大 ,   柴田家門 ,   寺尾栄夫 ,   木下真男

ページ範囲:P.413 - P.418

I.はじめに
 頭蓋骨巨細胞腫は1936年,Geshickter8)により蝶形骨に発生した巨細胞腫の1例が報告されて以来,文献的には五十数例にすぎず,未報告例も少なくないとしても,比較的少ない疾患である,頭蓋骨での発生部位をみると,報告例では蝶形骨がその半数以上を占め,次いで側頭骨に多い,中尾18)らは1982年,本誌上に側頭骨に発生した巨細胞腫の1例を報告している.
 蝶形骨に発生した巨細胞腫は,頭蓋骨巨細胞腫のなかではその頻度が多いのみならず,腫瘍の位置する解剖学的関係の複雑さのために,臨床上,特に治療上,側頭骨などの表在性の巨細胞腫とは異なった幾つかの問題を有している.われわれは最近,放射線療法が著効を呈した蝶形骨に発生した巨細胞腫を経験したので報告するとともに,焦点を蝶形骨の巨細胞腫に絞って,臨床上の若干の問題点を文献的考察を加えて論じてみたい.

頭蓋内良性軟骨芽細胞腫の1例

著者: 三宅裕治 ,   端和夫 ,   任清 ,   下竹克美 ,   小林映 ,   半田寛 ,   浜田芳隆 ,   阿部一清 ,   宮川秀樹

ページ範囲:P.419 - P.425

I.はじめに
 良性軟骨芽細胞腫(benign chondroblastoma)の多くは長管骨骨端に発生し,頭蓋骨,頭蓋内に発生することは極めて稀である6,7,14,23).最近われわれは頭蓋内に発生した本腫瘍を経験したので,その発生病理,診断,治療などにつき,他の軟骨性腫瘍と比較しつつ,若干の文献的考察を加えたい.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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