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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科12巻5号

1984年04月発行

雑誌目次

Restorative neurology

著者: 岩田金治郎

ページ範囲:P.549 - P.549

 昨年初夏にヨーロッパ出張の機会があり,ユーゴスラビヤへも足を延ばしました.これはZürichの神経放射線Waellauer教授の他,Ljubllana大のKlunc教授より依頼があり,holography研究の講演に招かれたのです.CTの三次元化の試みにholographyが注目され始め,原理の異なったこの立体視の実際を供覧したところ,わが国の技術開発に羨望の眼差しすら感じました.
 hologramという透明の扉をあけるのに今一歩と,内輪話もし,一緒になって真剣に工夫し,今後の共通の課題としてきました.

解剖を中心とした脳神経手術手技

バルーン・テクニック

著者: 滝和郎 ,   半田肇

ページ範囲:P.551 - P.557

I.はじめに
 balloon catheterを使用した治療法で,歴史的に有名なものにFogarty catheterを用いた外傷性頸動脈海綿静脈洞瘻(外傷性CCF)があげられる)7).近年は,detachable balloon catheterや1,3,6,9,10),leak ballooncatheter4,5,10)の開発が行われ,balloon techniqueは人工塞栓術において必要不可欠な手技になりつっある.しかしながらいまだ一般化していないのが現状であろう.その理由の1つとして,諸家により使用されているcatheterが一様でなく,これに伴う手技の違いがあげられよう.本論文では,各種カテーテルの使用方法,具体的手技,適応などについて概説してみたい.

海外だより

第13回国際化学療法学会寸描

著者: 星野孝夫

ページ範囲:P.560 - P.561

 第13回国際化学療法学会がオーストリアの首都ウィーンにて1983年8月28目より9月2日にかけて開かれた.化学療法は抗生物質,抗癌剤による治療を含む大きな学会で,約8,000人が参加したといわれている.
 発表された演題も,膨大であったため会場はHofburg,Messepalast と Auersperg宮の3会場に分散されていた.3会場には連絡バスが用意されていたが,1会場から他の会場に移動するのに最低10-15分かかるためHofburgで一部の演題や講演を聴いてから,途中でAuersperg宮の会場に行って他の演題を聴くというのは事実上無理であった.

研究

慢性硬膜下血腫における血腫腔内出血量

著者: 伊藤治英 ,   下地隆 ,   木村誠 ,   前田優 ,   上原哲 ,   山本信二郎

ページ範囲:P.563 - P.568

I.はじめに
 軽微な頭部外傷後3週以上経過した症例,または頭部外傷の既往がない症例において,手術中,硬膜下に血性液が被膜に被包されて貯留しているのが確認されたとき慢性硬膜下血腫と診断される.血性貯留液は簡便な表現であるが,血性と水様液との移行があり,鑑別に迷う例がある.Schurrは硬膜下貯留液中の赤血球数が100×104/mm3以上を血腫とし,それ未満を水腫と定義した11).しかし赤血球数が10×104/mm3,ヘモグロビンが0.3g/dl以上の貯留液は赤く,血性と言うべきである.したがって血腫と水腫の境界としては10×104/mm3またはヘモグロビン0.39/dlが妥当である.慢性硬膜の多くはCTスキャンでのHounsfield単位から貯留液が血性と読影され診断が術前に可能となるが,稀に血腫と水腫の区別が困難な症例に遭遇する.慢性硬膜下血腫の条件としての血性貯留液中の赤血球は受傷直後の出血,発症時の出血,または発症後の持続的,断続的出血かは未解決の問題である.51Cr-ラベル赤血球を使用して1日当りの出血量の算出が可能となり,慢性硬膜下血腫における出血の病態を解明する目的で臨床症状や神経放射線学的所見と対比して分析する.

破裂脳動脈瘤患者の血中カテコールアミン値の変動と予後について

著者: 池田幸穂 ,   中沢省三

ページ範囲:P.571 - P.578

I.はじめに
 血中カテコールアミン(CA)は中枢を介する全身のストレス反応の代謝動態を反映するとされており2,5,17),近時,特に脳卒中患者の種々の病態における生理活性アミンの変動が注目されている.筆者らは,今回破裂脳動脈瘤患者のCAの経時的変化を追求し,これらの患者の病態と予後との相関性について興味ある知見を得たので報告する.

脳血管緊張におよぼす脳幹部脳血管運動中枢の役割—第1報 特に脳血液量および頭蓋内圧の変化について

著者: 筒井巧 ,   本間温 ,   角南典生 ,   門間文行 ,   土本正治 ,   長尾省吾 ,   西本詮

ページ範囲:P.581 - P.589

I.緒言
 重症頭部外傷などに伴う急性脳腫脹は,その急激な脳容積の増大と,治療の困難な点とにおいて,より緩徐に進行する脳浮腫とは臨床上区別されている.その病態に関しては,脳血管緊張の低下に基づく急激な脳血液量の増加が主体をなすと考えられている.
 脳血管緊張の低下をきたす一因子である神経性因子に関しては,Ishiiの視床下部背内側核(DM)破壊による急性脳腫脹作成の報告9)以来,脳血管運動中枢が注目され,種々の脳幹レベルでの刺激・破壊実験が報告されてきた15,16,22).しかし,脳血液量の変動を直接測定し,脳血管運動中枢の破壊時の脳血管床と頭蓋内圧との関係を検討した報告は見あたらない.

症例

頭蓋内脊索腫の3例—Typical chordomaとChondroid chordoma

著者: 大島勉 ,   坂本学 ,   高杉晋輔 ,   松本圭蔵 ,   浅野登 ,   神山悠男

ページ範囲:P.591 - P.598

I.はじめに
 脊索腫は,胎生期の脊索遺残組織notochordal remnantから発生する腫瘍であり,頭蓋内では斜台部に好発し,全頭蓋内腫瘍の0.1-0.5%を占める.腫瘍は頭蓋底部正中線上硬膜外に発育し,骨を浸潤破壊しつつさまざまな方向に進展するため,大きなものは全摘出が困難なことがある.また放射線治療も期待されるほどの効果をみないことが多く,再手術を繰り返すうちに不幸な転帰をとることが多い.
 一方Heffelfinger8)らは55例の脊索腫を組織学的見地と生命予後の関係から検討し,typical chordomaと比べ手術+放射線治療によりはるかに生命予後が良好なものがあり,これをchondroid chordomaと名づけている.

巨大な脳石灰化を伴った脳日本住血吸虫症の1例

著者: 森本哲也 ,   竹村潔 ,   榊寿右 ,   堀浩 ,   横山和弘 ,   京井喜久男 ,   内海庄三郎

ページ範囲:P.601 - P.606

I.はじめに
 日本住血吸虫症は,本邦において比較的頻度の高い寄生虫疾患である.他の寄生虫疾患と同様に好発地域があり,本疾患の脳合併症の頻度は少ないため,脳神経外科医が日常診療において本疾患に遭遇することは極めて稀である.しかしながら,脳日本住血吸虫症は急性期から慢性期のいずれの時期にも,手術療法を必要とする可能性があり,常に念頭に置かねばならない疾患である.
 一般的に,脳寄生虫疾患では頭蓋内に石灰化病変を伴うことが多いとされているなかで,脳日本住血吸虫症ではその頻度は非常に少ないといわれている15).ところが私たちは最近,巨大な脳石灰化を伴い,慢性期の臨床症状出現までに19年という長期を要し,更にその後10年経過して脳局在徴候が現われた脳日本住血吸虫症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

Rathke’s cleft cystの2例

著者: 山本昌昭 ,   高良英一 ,   今永浩寿 ,   神保実 ,   久保長生

ページ範囲:P.609 - P.616

I.はじめに
 symptomatic Rathke’s cleft cystは稀であり,1920年Duffy6)の最初の手術例以来,Yoshidaら23)は20例を集計しており,その後の報告を合わせても41例の文献報告をみる程度である1,2,5,7-16,20-22)
 本稿ではRathke’s cleft cystの2例を報告する.第1例は典型的なsympto-matic Rathke’s cleft cystであり,第2例は脳動脈瘤の手術時,偶然に発見されたものである.しかし,第2例もその病歴中に,視神経障害や下垂体機能低下を強く示唆する症状が既にあり,一応symptomatic,もしくはsubclinicalRathke’s cleft cystと考えた.

小さな硬膜欠損により生じた術後性脊髄硬膜外くも膜のう腫

著者: 内堀幹夫 ,   絹田裕司 ,   小山素麿

ページ範囲:P.619 - P.624

I.はじめに
 腰椎椎間板ヘルニア摘出術には,さまざまな合併症があり,腹部大動脈や尿管の損傷のほかに,Ford5)は手術局所の合併症を詳細に報告している.
 われわれは,術後数ヵ月を経過し,いったん順調に社会復帰したのち,再び強い腰痛が出現した2症例を経験した.この2人を再入院させ精査したところ,手術部位に一致してくも膜下腔の後方への異常拡大を認めた.
 再手術の結果,初回手術時の小さな硬膜欠損が原因で生じた硬膜外くも膜のう腫であることを,組織学的にも確認した.これに類似した報告は,われわれの調べ得たかぎりではGrumme8)のもののほか意外に少ない.そこでくも膜のう腫の成因について文献的に調査した結果,腰部の手術では,小さな硬膜欠損の果す役割が非常に大であることがわかった.

大脳Gangliogliomaの臨床—6例の報告と文献的考察

著者: 今永浩寿 ,   久保長生 ,   井沢正博 ,   天野恵市 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.627 - P.633

I.はじめに
 gangliogliomaは脳腫瘍全国統計では0.1%,Zülch24),Russell と Rubinstein19)の報告では0.4%と,きわめて発生頻度の低い腫瘍とされている.しかし,近年多数例の報告が散見されており,われわれもCT導入前に1例,CT導入後に5例の計6例の本腫瘍を経験しており,従来考えられていたほど稀な腫瘍ではないと思われる.
 大脳のgangliogliomaはてんかん発作を主訴として,神経症状や頭蓋内圧亢進症状を欠くことが比較的多く,原因不明のてんかんとして治療されているものが少なくなかったが,CTの導入により脳腫瘍として外科的治療をうける機会がふえてきている.

下垂体腫瘤と原発性甲状腺機能低下症—高プロラクチン血症を呈した1例

著者: 篠田宗次 ,   岩佐英明 ,   山田武 ,   山田直司 ,   増沢紀男 ,   佐藤文明 ,   川井俊郎

ページ範囲:P.635 - P.639

I.はじめに
 近年,放射性同位元素を用いた内分泌学的検査や放射線医学的検査の進歩により,microadenomaや比較的小さな下垂体腺腫の早期診断が可能となり,また,下垂体腫瘍による無月経乳汁分泌症候群を呈した患者でも,外科的手術療法によって妊娠可能となり,視力視野障害を未然に防ぐことが可能となった.特に経蝶形骨洞手術の再開発により6),脳に障害を加えずに手術治療することができる.また,薬物病法の開発もめざ主しく,CB 154やホルモンの補充療法も進歩し,内科療法のみでも治療可能な症例もある.このように下体疾患に対する治療法が進んだにもかかわらず,その下垂体腫瘤発生病態がわれわれ脳神経外科医にとり,注意を要するものがあると痛感した症例を経験したので報告する.
 この患者は無月経乳汁分泌症候群を呈し,CTスキャンにてトルコ鞍内に造影剤投与後高吸収域を認めたため,下垂体腫瘍として手術を行った.術後に原発性甲状腺機能低下症の存在が判明し,この疾患が症状の発現やCTスキャン上の所見に大きく関与したのではないかと思われた.今後,下垂体腫瘍の診断に関して注意せねばならない病態と思われる.

頭蓋内に多発したFibrous histiocytomaの1例—自験1例と文献的考察

著者: 船越孝 ,   山田弘 ,   三輪嘉明 ,   高田光昭 ,   大熊晟夫 ,   下川邦泰 ,   池田庸子 ,   牛丸泰久

ページ範囲:P.641 - P.648

I.はじめに
 fibrous histiocytoma(xanthoma)は比較的新しい腫瘍概念で,主に軟部組織に発生するとされ,その報告例は少なくない.しかし頭蓋内に発生したfibroushistiocy-tomaの報告は極めて稀で,未だ数例を数えるのみである.われわれは10歳女児の頭蓋内に多発性に発生したと思われるfi-brous histiocytomaの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

フロセミドおよび高張食塩水投与が著効を奏した外傷性SIADHの1例

著者: 岩佐英明 ,   山田武 ,   中原昇 ,   島袋洋 ,   篠田宗次 ,   印出井一男 ,   山田直司 ,   佐藤文明 ,   斉藤寿一

ページ範囲:P.651 - P.655

I.はじめに
 一般にADH(antidiuretic hormone)の過剰によるとされるSIADH(syndmme of inappropriate secre-tion of ADH)は1957年Schwartz & Bartter9)らの肺癌の報告以来,数多くみられる.脳外科疾患においても髄膜炎,くも膜下出血,頭部外傷,慢性硬膜下血腫などの症例によるSIADHの報告7)がみられる.
 今回,われわれはフロセミドおよび高張食塩水の併用が低Na血症と意識検査の改善に有効であった頭部外傷後のSIADHの1症例を経験したので,文献的考察も含めて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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