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症例
下垂体腫瘤と原発性甲状腺機能低下症—高プロラクチン血症を呈した1例
著者: 篠田宗次1 岩佐英明1 山田武1 山田直司1 増沢紀男1 佐藤文明1 川井俊郎2
所属機関: 1自治医科大学脳神経外科 2自治医科大学病院病理
ページ範囲:P.635 - P.639
文献購入ページに移動近年,放射性同位元素を用いた内分泌学的検査や放射線医学的検査の進歩により,microadenomaや比較的小さな下垂体腺腫の早期診断が可能となり,また,下垂体腫瘍による無月経乳汁分泌症候群を呈した患者でも,外科的手術療法によって妊娠可能となり,視力視野障害を未然に防ぐことが可能となった.特に経蝶形骨洞手術の再開発により6),脳に障害を加えずに手術治療することができる.また,薬物病法の開発もめざ主しく,CB 154やホルモンの補充療法も進歩し,内科療法のみでも治療可能な症例もある.このように下体疾患に対する治療法が進んだにもかかわらず,その下垂体腫瘤発生病態がわれわれ脳神経外科医にとり,注意を要するものがあると痛感した症例を経験したので報告する.
この患者は無月経乳汁分泌症候群を呈し,CTスキャンにてトルコ鞍内に造影剤投与後高吸収域を認めたため,下垂体腫瘍として手術を行った.術後に原発性甲状腺機能低下症の存在が判明し,この疾患が症状の発現やCTスキャン上の所見に大きく関与したのではないかと思われた.今後,下垂体腫瘍の診断に関して注意せねばならない病態と思われる.
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