文献詳細
文献概要
研究
抗生物質の髄液および脳組織内移行—Cefoperazoneについて
著者: 伊藤治英1 船木昇1 北村佳久1 正印克夫1 永谷等1 山本信二郎1
所属機関: 1金沢大学脳神経外科
ページ範囲:P.681 - P.686
文献購入ページに移動脳神経外科における抗生物質投与の適応には3つの意味がある4).第1に頭蓋内の細菌性炎症があり,脳炎,脳膿瘍,髄膜炎,静脈洞炎,硬膜下膿瘍および慢性肉芽腫などが挙げられる.稀に頭蓋骨の骨髄炎や副鼻腔の膿瘤や粘液嚢腫などにも遭遇する.第2の分野として中枢神経系以外の臓器の感染症の合併である.脳神経外科施設において尿路感染が7.4%,呼吸器感染が2.1%,その他が1.08%との報告があり8),多くの症例が抗生物質投与の対象となる.第3の分野として中枢神経系の感染予防の見地からの抗生物質投与である.髄液漏,開放性頭蓋骨骨析,開放性脊椎破裂には感染予防の配慮が必要であるが,抗生物質投与の有効性や投与期間について異論がある.また脳室体外ドレナージ14),異物を埋没する脳室腹腔吻合術7,16),および経鼻的下垂体腺腫摘出術において感染予防に留意しなければならない.通常の開頭術においても術野に毛根が多く,長時間の手術中における空中落下菌を考慮すると感染の危険が高く,手術創感染の予防策が必要である.開頭手術の抗生物質局所投与が推奨され,その効果も認められている.また通常手術後数日間に限って抗生物質が静脈内に投与されている.しかし,脳にある血液脳関門は脳組織や髄液への抗生物質移行のバリヤーとなり,chloramphenicolを除いて抗生物質は移行し難いのである.
掲載誌情報