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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科12巻6号

1984年05月発行

文献概要

研究

クッシング病の診断および治療—副腎皮質結節性過形成との関連について

著者: 三浦正毅1 松角康彦1 児玉万典1 平松良二2

所属機関: 1熊本大学脳神経外科 2熊本大学第3内科

ページ範囲:P.689 - P.696

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I.はじめに
 副腎皮質結節性過形成(adrenocortical nodular hy-perplasia)の病因に関しては副腎原発説,下垂体性ACTH過分泌による二次的発生説に分かれて論じられている.副腎原発説としてMeador8)らは原発病変は副腎皮質にあるとし,primary adenocortical nodular hy-perplasiaなる概念を提唱した.Ruder13)らは自験2例を含め12例をまとめてmicronodular adrenal diseaseとして報告した.これらは発生年齢が思春前期から思春期であり,結節以外の副腎皮質には萎縮がみられ,結節も3mm以下と小さい.結節性過形成と通常称されているものは,macronodular cortical hyperplasiaであり結節もより大きく結節周囲に萎縮像を認めない.このmacronodular cortical hyperplasiaに関してCohen2)は高度のACTH刺激が持続すると副腎皮質過形成の中に結節が多発的に発生し,さらに一部のものは発達して自律性を獲得し腺腫に変化するという下垂体説を提唱した.すでに同様の考え方は,西里10)ら,日台5)ら,小島7)ら,山本16)ら,古川4)らによって述べられており,副腎皮質結節性過形成の中には,副腎原発のもの以外に下垂体の分泌異常から二次的に発生してくる異なった病態が存在すると考えられる.
 一方,下垂体腺腫によるクッシング病の中には,大量のデキサメサゾンにも抑制されない症例があり,その中には副腎皮質結節性過形成の合併を証明した報告もある14).それらの症例では,コルチゾール過剰状態がACTH分泌性下垂体腺腫によるものか,あるいは自律性を得た副腎皮質結節性過形成によるものかを鑑別することが治療方針を決定する上で重要とな一,てくる.すなわち,下垂体腺腫に自律性副腎皮質結節性過形成を合併した例では,下亟体腺腫摘出のみではコルチゾールの正常化は困難であり,また副腎摘出のみでは副腎からのnegative feed backの解除による下垂体腺腫の増大やあるいはNelson’s syndromeへの移行を招く危険性があり,このような症例には下垂体および副腎の双方に対する手術が必要となってくる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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