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症例
脳宮崎肺吸虫の1手術例
著者: 双津正博1 西田伸1 中村紀夫1 片倉賢2 小林昭夫2 荒木国興3
所属機関: 1慈恵会医科大学脳神経外科 2慈恵会医科大学寄生虫学教室 3国立公衆衛生院
ページ範囲:P.865 - P.870
文献購入ページに移動脳肺吸虫症は,わが国においては1887年,大谷により最初の症例が,また1931年,赤岩により最初の開頭手術例が報告されて以来,その症例数も多いが7,11),それらはいずれも,Paragonimus westermani(以後,P.w.とする)によるものと考えられている.ところが近年,P.w.とは異なるParagonimus miyazakii(以後,P.m.)が発見され,これの人体寄生例も,1974年,横川らの報告以来,ふえつつある.喀痰,糞便中に虫卵が発見されないため,血清学的にしか確認されず,その診断は容易でない場合も多いが3,14),報告のなかには,脳内寄生の考えられるものもいくつか含まれている4,6,32).今回われわれは,入院時,全く胸部所見を欠き,脳腫瘍として手術を行なったが,組織学的には肉芽腫であり,のちになって胸部症状を現わし,血清学的に宮崎肺吸虫症と診断された1例を経験したので報告する.
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