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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科13巻12号

1985年12月発行

雑誌目次

Zooming

著者: 朝倉哲彦

ページ範囲:P.1263 - P.1263

薄く濃き野べの緑の若草に跡まで見ゆる雪のむら消え   宮内卿

総説

Redundant nerve roots—成因・診断・治療

著者: 小山素麿 ,   辻直樹 ,   半田譲二

ページ範囲:P.1265 - P.1270

I.はじめに
 腰部脊髄撮影に際し蛇行状の陰影欠損が認められた場合,その原因として,まず動静脈奇形を,これが的を射た血管撮影で否定されれば,癒着性くも膜炎あるいは肥厚性間質性神経炎(Dejerine-Sottas)1)を考慮しなければならないし,動静脈奇形自身の血栓形成ということもありうる20)
 これらのいずれにも属さず,家族歴・現病歴ともに肥厚性間質性神経炎を否定しうる原因不明の疾患で,脊髄撮影により蛇行する陰影欠損を認め,手術により馬尾神経が蛇が"とぐろをまく"ようになっている症例の報告は1960年代の終りから世界各地で相次ぎ,わが国においても小山ら11)の33歳の男の症例,鎌倉ら9)の女の2症例のほか,23,24)による成因に関する研究報告などがある.

研究

小児の脳腫瘍—予後とそれに影響する諸因子 第3報 Medulloblastomaの転移形態と生命予後

著者: 大井静雄 ,   松本悟 ,  

ページ範囲:P.1273 - P.1280

I.緒言
 小児の脳腫瘍は,種類,局在性,付随する病態,臨床症状の発現様式,そしてその予後を決定する因子などにおいて成人と異なった特徴をもつ.われわれはこれまでに,これらの特徴をさまざまの観点から分析してきた.そして,小児の脳腫瘍の予後に影響する因子については,このシリーズですでにastrocytoma23),ependymoma22)について分析し,それらの予後に関し際立った特徴を報告した.今回は,つづいてmedulloblastomaの予後の分析として,この腫瘍の特徴のひとつともいえる腫瘍の転移に注目し検討した.medulloblastomaの予後の分析は,これまでに多くの報告をみるが,その転移形態の詳細な分析から生命予後を論じたものはなく,この腫瘍の治療上の観点からも興味深いものと思われる.

Medulloblastomaの予後を左右する因子

著者: 井上達 ,   吉田純 ,   景山直樹

ページ範囲:P.1283 - P.1289

I.はじめに
 medulloblastomaは小児悪性脳腫瘍のうちで最も高頻度に認められる腫瘍であり,近年の治療法の進歩とともに,その平均生存期間の延長が報告されてきているが,それでもまだ多くの症例は多少の寛解期間ののちに局所再発やくも膜下播種を起こし,予後不良な経過をたどってゆくことはまちがいない.徐々に増加しつつある長期生存例と,早期死亡例の間には,その差を生み出す因子として手術法,放射線療法などが指摘されているが,それ以外にも種々の因子が潜んでいる可能性があり,充分な検討により,それらを明確にしてゆくことがmedul-loblastomaの予後の改善にとって重要な課題になると考えられている.われわれは過去16年間にわたる治療成績および個々の症例で背景因子の詳細な分析を行い,予後を左右する因子に検討を加えた.

顔面痙攣および三叉神経痛に対する後頭蓋窩微小血管減圧術—手術手技上の工夫について

著者: 本郷一博 ,   小林茂昭 ,   竹前紀樹 ,   杉田虔一郎

ページ範囲:P.1291 - P.1296

I.はじめに
 顔面痙攣および三叉神経痛に対して,微小血管減圧術が近年盛んに行われるようになり,その有効性は,すでに多くの施設から報告されている1-3,6-8).この手術は,いわば機能的手術であり,手術による合併症は最少限にとどめなければならない.
 われわれは,手術手技上,より安全かつ容易にできる方法につき検討を行い,特に,顔面痙攣についてその具体的な方法を紹介し,成績および合併症につき報告する.

大きな脳下垂体腺腫の臨床的検討—特にその生命予後を中心として

著者: 橋本信夫 ,   山下純宏 ,   山上達人 ,   小島正行 ,   半田肇

ページ範囲:P.1299 - P.1303

I.はじめに
 CTと内分泌学的検査法の普及によって,脳下垂体腺腫のうち相当数のものが,トルコ鞍内に限局する,あるいは軽度の鞍上進展を示す比較的小型のmassとして発見されるようになった.ほぼ時を同じくして,薬物療法の発達と6,8)transsphenoidal surgeryの改良1),普及がなされたことによって脳下垂体腺腫の治療の安全さと確実さは飛躍的な向上をみている.
 しかしながら,今なお巨大腺腫として発見される場合も少なくなく,治療法の選択に苦慮するところである.

徐放性抗癌剤ペレットによる脳腫瘍136例の治療成績

著者: 織田祥史 ,   上条純成 ,   奥村禎三 ,   徳力康彦 ,   山下純宏 ,   半田肇 ,   青山育弘 ,   端和夫 ,   森惟明

ページ範囲:P.1305 - P.1311

I.はじめに
 細菌に対する抗生物質の発達に比較して,制癌剤は,正常細胞には障害を与えず,癌細胞のみを選択的に破壊するという意味での選択的毒性は低く,その副作用のために癌の化学療法はまだ満足できる状態には至っていない.
 これらの解決方法の1つとして,単一薬剤の分割投与方法,投与量の工夫や,併用療法などが工夫されてきたが,いずれもまだ不十分である.

Pure shearing injury—23例の症状,診断,予後および文献的考察

著者: 池田公 ,   井口郁三 ,   権田隆実 ,   蟹江規雄 ,   橋詰良夫

ページ範囲:P.1313 - P.1320

I.はじめに
 われわれ脳神経外科医は外傷患者の診察に当たり,その予後は外傷の瞬間に加わる衝撃の強さ,方向,部位により,ある程度決定づけられているという印象を常日頃心に抱いている.急性期のGlasgow coma scale(GCS)と予後とはよく相関しているという報告21)もこの印象の裏付けの1つである.外傷の瞬間に脳全体でみられる微細な変化は,古くからshearing injuryと呼ばれる損傷であり,外傷の基本となる一次変化にもかかわらず,一般的に治療の施しようがなく,あまり注意が向けられていない.shearing injuryの患者に局所的な脳挫傷,頭蓋内血腫を伴うことは多いが,shearing injuryのみによる一次効果を調べる目的で,血腫,浮腫など外傷の二次変化を合併しなかった23症例をpure shearing injuryの症例と診断し,症状,CT所見,検査所見,予後を調べ検討を加えた.

症例

Empty sellaを伴うACTH依存性クッシング症候群の3例—特にSelective venous samplingの診断的意義

著者: 山本直人 ,   根来真 ,   横江敏雄 ,   市原薫 ,   中根藤七 ,   桑山明夫 ,   景山直樹

ページ範囲:P.1323 - P.1328

I.はじめに
 empty sellaとは,1951年Busch2)により,はじめて用いられ,その発生病理によりprimary empty sellaとsecondary empty sellaに大別される.一般的に,前者はトルコ鞍隔膜の先天的な形成不全により,くも膜下腔が鞍内に陥入し,髄液の拍動が伝達され,下垂体組織の圧排,さらにはトルコ鞍の拡大をひきおこすものとされ,また後者は,下垂体腺腫に対する手術あるいは放射線治療後に発生するものである.このempty sellaが,しばしば下垂体腺腫に伴うことはよく知られており,現在までにいくつかの報告がみられるが,クッシング病においては極めて稀である、クッシング病では,micro-adenomaが大部分であるが故に,empty sellaを伴う場合には腺腫の診断は一層困難となり,しばしば異所性ACTH産生腫瘍との鑑別診断に苦慮することとなる.
 われわれは,empty sellaを伴うACTH依存性クッシング症候群の3症例を経験したので,selective venous Samplingを中心とした検索結果を報告するとともに,empty sellaの発生病理をも含め,若干の文献的考察を加える.

外転神経麻痺を呈した"True" posterior Communicating artery aneurysm

著者: 武田直也 ,   玉木紀彦 ,   朝田雅博 ,   倉田浩充 ,   松本悟

ページ範囲:P.1331 - P.1334

I.はじめに
 今までに報告された"いわゆる"後交通動脈動脈瘤の多くは,内頸動脈—後交通動脈分岐部に発生し,"真の"後交通動脈動脈瘤は非常に稀である.今回,われわれは,後交通動脈本幹より直接発生し,外転神経麻痺を呈した嚢状動脈瘤を経験したので報告する.

前大脳動脈(A1 segment)紡錘形動脈瘤の1治験例

著者: 田村勝 ,   塚原由夫 ,   淀繩昌彦

ページ範囲:P.1337 - P.1340

I.はじめに
 紡錘形動脈瘤はアテローム硬化をもとに脳底動脈や内頸動脈などに形成される紡錘形の動脈拡張である9).前大脳動脈にこの種の動脈瘤をみることは稀で,たとえみられても,前交通動脈部に認められた報告が数例ある4,6)のみで,precommunical segment(A1)に限局して認められた報告はこれまでのところないようである.
 著者らは比較的軽症の脳出血で発症し,脳血管撮影を施行したところ,脳出血とは別に,偶然左A1 segmentに動脈瘤を認め,手術的に紡錘形動脈瘤と確認し,クリッピング術を行い,良好な経過をとった1例を経験したので報告する.

くも膜下出血後の脳血管攣縮に対するHemodynamic therapyに合併した脳室内および脳内血腫—2症例の検討

著者: 石黒修三 ,   木村明 ,   宗本滋 ,   池田正人 ,   正印克夫

ページ範囲:P.1343 - P.1347

I.はじめに
 破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血後に発生する脳血管攣縮の対策として,volume expansionやinduced hy-pertensionによるhemodynamic therapyが行われるようになり,脳梗塞症状出現の防止や治療に有用であることが一般に認められるようになってきた6).しかし,この治療法はKosnik and Hunt7)が最初指摘したように,いくつかの危険性をはらんでいる,にもかかわらず,これまでhemodynamic therapyの合併症についての報告は極めて乏しい.最近われわれは,hemodynamic ther-apy中に脳室内および脳内出血を合併した2症例を経験したので報告し,本治療法の問題点に言及する.

Moyamoya病に脳動静脈奇形が合併した1症例

著者: 永山徹 ,   嘉山孝正 ,   鈴木晋介 ,   桜井芳明 ,   小川彰 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.1349 - P.1354

I.はじめに
 モヤモヤ病に合併する脳血管障害としては脳動脈瘤が稀ならず報告1,4,9,10,13,14,19-22,24)されているが,脳動静脈奇形を合併した症例の報告は,われわれの140例余りのモヤモヤ病の経験18)を含め,文献上渉猟し得た限りでは見当らない.
 最近われわれは,脳動静脈奇形を合併したモヤモヤ病の稀有なる1例を経験したので,若干の考察を加え報告する.

脳動脈瘤クリッピング後の再発—症例報告と文献的考察

著者: 関貫聖二 ,   岡島和弘 ,   佐藤浩一 ,   日下和昌

ページ範囲:P.1357 - P.1362

I.はじめに
 脳動脈瘤に対する治療法としては,現在のところネッククリッピングが最も根治的な治療法とされている.そして術中操作に問題がなく,術後脳血管写で柄部を含め,脳動脈瘤陰影が完全に消失していれば,通常はその脳動脈瘤は根治されたと判断される.ところが,われわれは破裂左中大脳動脈瘤に伴う未破裂右前大脳動脈瘤に対しネッククリツピングを行い,術後脳血管写で柄部を含め脳動脈瘤陰影の消失を確認したにもかかわらず,約1年後に脳動脈瘤の再発を認めた1例を経験した.そのような合併症が生じうるという事実は,現在広く行われているネッククリッピングの信頼性を再検討する必要性のあることを示唆している.そこで脳動脈瘤クリッピング後の再発という問題につき若干の文献的考察を加え報告する.

脳動脈瘤を合併した心房内粘液腫の1例

著者: 中田博幸 ,   山田和雄 ,   早川徹 ,   生塩之敬 ,   宮尾泰慶 ,   最上平太郎 ,   志水正敏 ,   淡田修久 ,   広瀬一 ,   奥田彰洋

ページ範囲:P.1365 - P.1369

I.はじめに
 心房内粘液腫は稀な疾患であるが,脳栓塞や脳動脈瘤を合併し,それによりさまざまな神経症状が出現することがある,また神経症状が初発症状のことも多く,それらのなかには脳外科的治療の対象となるものもある.そのため脳血管障害の診断のさい念頭にいれるべき疾患であると思われるが,本邦での剖検所見をも含めた詳細な報告例は少ない.
 今回,著者らは心房内粘液腫により発生したと思われる脳動脈瘤を脳血管撮影にて証明し,また剖検により確認し得た症例を経験したので若干の考察を加え報告する.

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「脳神経外科」第13巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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