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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科13巻2号

1985年02月発行

雑誌目次

マイクロコンピューター時代に向けて

著者: 谷栄一

ページ範囲:P.127 - P.127

 CT scannerを頂点としたマイクロコンピューター時代が医学界に到来している.コンピューターが導入される時,よくいわれるのは,将来コンピューターが人間の頭脳を支配するのではないかということである.幸いにその道の多数の識者の意見によれば,そのような事態は起り得ないとのことである.
 さて,CTを有力な診断技術として使用している脳神経外科ではどうであろうか.確かにCTの出現により,脳疾患が早期に正確に診断できるようになり,従来患者の神経症状より,神経内科医が入らない脳神経外科医だけで,時々まとまりなく続いた議論もある程度解消され,microsurgeryの技術進歩と相まって手術成績も飛躍的に向上している.CTで脳疾患が正確に診断できればできるほど,CT万能の気風が蔓延して,神経学的所見の把握とか他の診断法の解釈の点が疎かになりがちである.あたかもテレビの普及によりテレビ人間が生れているのと同様に,脳神経外科でもtech-nician doctorが生れているのではなかろうか.CT上の所見を的確に捕えることは勿論必要であるが,脳神経外科医は患者を直接治療する立場にある.また,症状の変動がはげしい患者ではいちいちCTをとることも事実上できないし,患者の神経症状を基盤にして,CTその他の所見を読影することが要求される.かつて,1枚の組織標本から,その裏に展開されている病的過程を教えられたことがある.

解剖を中心とした脳神経手術手技

クルーゾン病の手術

著者: 大森喜太郎

ページ範囲:P.129 - P.134

I.クルーゾン病とcraniosynostosis syndrome
 premature cranial synostosesは一般的にsimple cra-nial synostosis, craniofacial dysostosis, acrocephalo-syndactylyの3病型に分類される.この際のcraniofa-cial dysostosisはクルーゾン病と呼称される.しかし,実際にこれらの症例をつぶさに観察すると,一見単純に見えるsimple cranial synostosisにおいても,変形はときに眼窩におよび,必ずしもこの3病型がはっきりと区分されているとは考え難い.
 さらに,Gorlinらによる臨床像ならびに遺伝的考察を加味したcraniosynostosis syndromeの詳細な分類によれば,この症候群に名を連ねる疾患は少なくとも14存在し,このうちの6疾患(The Kleeblattschadel ano-maly, Crouzon’s disease, Apert’s syndrome, Pfeiffersyndrome, Saether-Chotzen syndrome, Carpenter’ssyndrome)は常に鑑別しておく必要があることが知れる1)

研究

経皮的コルドトミーのための新しい装置と定位的コルドトミー法

著者: 伊関洋 ,   天野恵市 ,   河村弘庸 ,   谷川達也 ,   川畠弘子 ,   能谷正雄 ,   塩飽哲士 ,   長尾建樹 ,   岩田幸也 ,   平孝臣 ,   小野由子 ,   小林直紀 ,   黒岩悦二 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.137 - P.142

I.はじめに
 頑痛に対してどの除痛法を選択するかは,患者の痛みの性質,程度,全身状態などにより決定される,除痛法は薬物療法,硬膜外ブロックを含めた各種の末梢神経ブロック,脊髄刺激(spinal cord stimulation)7,8),手術療法に大別できる.
 これらの除痛法のなかで,特に癌末期のり疼痛に対する除痛法として経皮的コルドトミー(percutaneous highcervical cordotomy)は極めて有効な除痛術のひとつである1,2,4-6,9-12)

Superior facet syndrome—特にそのメトリザマイドCT所見について

著者: 久保和親 ,   五十嵐正至 ,   小山素麿

ページ範囲:P.145 - P.150

I.はじめに
 腰部脊椎管狭窄症を形態学的にみると2つに大別できる.第1は脊椎管の前後径が短縮し馬尾神経全体が圧迫されるもの(major type of lumber canal stenosis)22),第2は1ないし数本の神経根がlateral recessの狭小化のために絞扼されるものである.臨床上,前者は神経原性間歌性跛行を,後者は根性坐骨神経痛を主訴とすることが多い.後者に属する疾患としてはEpsteinら7)のいうsuperior facet syndrome, Arnoldiら1)の腰部脊椎管狭窄症,国際分類の"acquired stenosis, degenerative,peripheral portion of canals(tunnels)"などをあげることができる.しかし本邦においては,この種の椎間板ヘルニヤが関与しない根性坐骨神経痛の報告は極めて少なく一般にあまり知られていない.またlateral recessのCT像に関する報告もほとんどない.今回われわれは,過去5年間に経験したlateral recessでの神経根絞扼に基づく根性坐骨神経痛症例群についてそのX線学的知見を報告し,特にそのメトリザマイドCT6)(以下met, CTと略す)の特徴に関して詳細に検討したので報告する.

Major strokeへの進展は発症早期に推定できるか—脳虚血疾患に対する急性期血行再建術を考える際に

著者: 佐藤健吾 ,   金子満雄 ,   田中敬生 ,   村木正明 ,   川原信隆

ページ範囲:P.153 - P.157

I.はじめに
 この数年間,脳虚血疾患に対する急性期血行再建術が検討されるようになったが3,9),その必要性が最も高く,急を要するのは,major stroke typeの群である.このmajor strokeへ進展する群が,全脳虚血疾患のなかでどれ位の割合に発生し,またどのような時間経過で進展するのかが今回の要点である.
 ふり返って,一地域に発生する全脳卒中の中の脳虚血性疾患の頻度および,その内訳としてのmalor stroke,minor stroke, RIND, TIAの頻度に対してのわが国の詳細な報告はこれまでほとんど見られない,われわれの病院は,浜松市を中心に一地域に発生する脳卒中をその軽重にかかわらず発症早期にすべて収容し,しかもCT,脳血管写などを含めた精密検査を実施し,臨床診断を確定している.その観点から,今回はテント上脳虚血疾患に対してretrospectiveに分析し,上記諸点について検討を行ったので報告する.

肺癌転移性脳腫瘍の治療成績の検討

著者: 野村和弘 ,   渡辺卓 ,   中村治 ,   渋井壮一郎 ,   高倉公朋

ページ範囲:P.159 - P.165

I.はじめに
 転移性脳腫瘍の王座を占めているのが肺癌である.国立がんセンターにおける転移性脳腫瘍のうち肺癌よりの転移の占める割合は約50%6),全国統計調査でも42%となっている5).その治療成績については過去多数の報告がある1,10).しかしながら癌の脳転移は癌の進行過程における1つの現われであり,それが全身転移の症状の発現する前に脳に現われれば脳転移の予後は治療後比較的長期に生存できるし,全身状態悪化と平行して脳転移が出現すれば癌の末期の一症状として考えられ,予後は当然悪いことになる.したがって転移性脳腫瘍の治療成績を論ずることはなかなか難しい問題を含んでおり,これらを論ずるには転移性脳腫瘍治療時,あるいは癌の初期治療時におけるstageを含め,癌の進行の度合いなどが考慮されるべきと考える.

症例

前頭骨に発生したChondromyxoid fibromaの1例

著者: 渡部洋一 ,   後藤健 ,   佐々木達也 ,   山尾展正 ,   丹治裕幸 ,   児玉南海雄

ページ範囲:P.167 - P.172

I.はじめに
 chondromyxoid fibromaは,1948年,JaffeおよびLichtenstein15)により命名された軟骨組織に山来する良性腫瘍であり,その頻度は骨腫瘍全体の1%以下と稀な疾患である23).発生部位は脛骨,腓骨,大腿骨など長管骨が大部分を占め,頭蓋骨発生例は,われわれの渉猟しえた範囲ではこれまで9例の報告をみるにすぎない,最近われわれは,前頭骨に発生したchodromyxid fibro-ma の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

天幕上下に発生した多発性血管芽腫の1例

著者: 村上秀樹 ,   戸谷重雄 ,   大谷光弘 ,   佐藤周三 ,   竹中信夫 ,   大平貴之

ページ範囲:P.175 - P.179

I.はじめに
 頭蓋内血管芽腫は原発性脳腫瘍の1.5-2.0%の発生頻度とされ,発生部位は後頭蓋窩がほとんどである.天幕上に発生することは稀で,この場合いわゆるangiobla-stic meningiomaとの鑑別がしばしば問題となる.一方血管芽腫の約10%は多発性であるが,そのほとんどが後頭蓋窩,脊髄に発生し,天幕上下に発生した血管芽腫の報告は,現在まで11例である.最近われわれは,天幕上下に発生した血管芽腫の1手術例を経験したので,an-gioblastic meningiomaとの鑑別を含めて文献的考察を加えて報告する.

脳動静脈奇形の家族内発生

著者: 森田敏弘 ,   岩井知彦 ,   高田光昭 ,   三輪嘉明 ,   船越孝 ,   坂井昇 ,   山田弘

ページ範囲:P.181 - P.186

I.はじめに
 脳動静脈奇形(以下AVM)の病因は,胎生期の血管形成異常に基づく先天性疾患と考えられている2,4,7).しかし.AVMの家族内発生は特殊な疾患の合併症として起こるものを除いては,世界で5家系の報告があるにすぎない1,5,8-10).最近われわれは,2家系4症例のAVMを経験したので,症例を報告するとともに,若干の文献的考察を加えた.

頭頂部Monostotic fibrous dysplasiaの1例

著者: 古賀信憲 ,   新田泰三 ,   保坂泰昭 ,   畑下鎮男 ,   杉村純 ,   榊原常緑 ,   高木偉

ページ範囲:P.189 - P.194

I.はじめに
 頭蓋骨に発生するfibrous dysplasiaは,顔面骨と頭蓋底に多く,全身多発性のいわゆるpolyostotic fibrousdysplasiaの場合には,しばしばその部分所見として頭蓋冠にもみられる1,10,14,16,17)一方,単発性のmonostoticfibrous dysplasiaが頭蓋冠に発生することは稀であり3,6),検索し得た範囲では,本邦にはその報告がみられない.最近,私どもは,頭部外傷を契機に偶然発見された頭頂部monostotic fibrous clysplasiaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

外傷後,床状突起上部内頸動脈に動脈瘤様陰影を生じた1例

著者: 榎本一巳 ,   柴田孝行 ,   伊藤明雄 ,   原田努

ページ範囲:P.197 - P.200

I.はじめに
 外傷性脳動脈瘤は,穿通性および非穿通性頭部外傷や,手術時の血管損傷に起因して発生することはよく知られており3,6,9),中大脳動脈,前大脳動脈の分枝や,頭蓋底部あるいは海綿静脈洞部の内頸動脈に起こることが多いとされている2,3,7).今回われわれは,非穿通性頸部外傷直後に頭蓋底骨折を伴い,床上突起上部内頸動脈に動脈瘤様陰影を認めた1手術例を経険したので報告する.

頭蓋骨Aneurysmal bone cystの1例—EstrogenによるChemical embolization

著者: 池田秀敏 ,   新妻博 ,   鈴木二郎 ,   長嶺義秀 ,   亀山元信

ページ範囲:P.203 - P.208

I.はじめに
 われわれは,一側性の眼球突出,眼球結膜充血を伴う,中硬膜動脈・板間静脈瘻に同部位の頭蓋骨肥厚を認めた1症例を経験した,本症例では組織所見は得られていないが,X線単純写,血管写所見よりaneurysmalhone cystと診断し,結合型エストロゲンの持続動注療法により動静脈瘻の閉鎖と症状の寛解をみたので,若干の考察を加えて報告する.

後下小脳動脈末梢部動脈瘤の3例

著者: 小倉浩一郎 ,   原誠 ,   景山直樹

ページ範囲:P.211 - P.215

I.はじめに
 後頭蓋窩における脳動脈瘤の発生頻度は,全頭蓋内脳動脈瘤の4-15%と少ないが,なかでも後下小脳動脈末梢部の脳動脈瘤は稀である.今回われわれは,3例の後下小脳動脈末梢部動脈瘤を経験したので,文献的考察を加え報告する.

Pycnodysostosisの1症例

著者: 宇藤章 ,   中島啓次 ,   下地武義 ,   前田稔 ,   井上幸雄

ページ範囲:P.217 - P.222

I.はじめに
 pycnoolysostosisは,1962年Maroteaux and Lamy8)により命名された疾患で,ギリシャ語でPycnos(thickor dense),dys(defectivc), and ostosis(bone)を意味し,小人症,骨硬化性変化,頭蓋縫合・泉門の開存,下顎骨形成不全,指趾末節骨の溶骨性変化などを臨床的特徴とする常染色体性劣性遺伝疾患である.このような特徴をもった症例は,1923年Montanari12)によりachom-droplasiaの異型として発表されたのが初めての報告とされている.わが国においても1946年,青池・石塚1)にょりcieid-cranio dysostosisの異型として報告.され,また1958年,青池は2)Dysostosis petmsansという名称を提唱しているが,現在ではpycnodysostosisという名称が一般的に使用されている.今同われわれは,この疾患に硬膜外血腫の合併した症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

顔面神経鞘腫—2症例の報告

著者: 龍浩志 ,   文隆雄 ,   植村研一 ,   横山徹夫 ,   中島正二 ,   西沢茂 ,   嶋田務 ,   内山晴亘 ,   野末道彦 ,   星野知之

ページ範囲:P.225 - P.231

I.はじめに
 顔面神経鞘腫(以下VII-Nm)は,極めて稀な腫瘍で,これまでに114例が報告されているのみである.顔面神経麻痺の患者をみた場合に,この疾患を念頭に置いておかなければ見過してしまう危険がある.われわれは最近このVII-Nmを2例経験し,これまで報告されていないCT上の所見で興味ある知見が得られたので,諸家の注意を喚起する意味でこの2症例を文献的考察を加えて報告する.

外傷性深側頭動静脈痩の1治験例

著者: 清水幸彦 ,   小沼武英 ,   香川茂樹 ,   菅野三信

ページ範囲:P.233 - P.237

I.はじめに
 側頭部に発生した頭皮下動静脈旗としては,外傷性浅側頭動静脈瘻が最も多く報告されているが,深側頭動脈を流入動脈とする動静脈瘻は稀である.われわれは外傷後に症状が発現した,深側頭動脈を主な流入動脈とする動静脈瘻の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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