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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科13巻3号

1985年03月発行

雑誌目次

宇宙から見た地球の写真を見て

著者: 倉本進賢

ページ範囲:P.243 - P.243

 宇宙から見た地球の写真を見て,その美しさに驚いた.秋の夜空の玲瓏たる名月よりも,暗黒の宇宙空間に白い雲影を浮かべた青い地球が美しく,暖かさがあると思った.自分の住んでいる地球の暖かさを今日まで全く知らずに,とかく人の世は住みにくいなどと考えたりしたことが恥かしい気がした.それにしても私は今日のような科学技術の進歩した,豊かで平和な時代に生きていることを心から幸せに思うし,この地球こそが宇宙でもっとも恵まれた楽園と思うようになった.
 立花隆著「宇宙からの帰還」を読んで少しばかり宇宙や地球の認識を変えていたところ,数日前の新聞でソ連の3人の飛行士が宇宙滞在236日余の新記録を樹立して帰還したという記事を読んだ.無重力状態のもとでは人間は重力に抗して体重を支えて起立したり,運動する必要がないので,長い間無重力状態にいると骨も筋肉も心臓血管系も弱化するそうである.海水浴の際に長く水中にいて砂浜に上ると自分の体を重たく感じることがあるが,約8ヵ月間も無重力状態で生活していたら,地球に帰還してから,宇宙飛行士は自分の体重が重たくて,しばらくは歩けないのではないかと想像する.

総説

頭蓋内圧充進と圧波

著者: 林実 ,   半田裕二 ,   古林秀則 ,   石井久雅

ページ範囲:P.245 - P.253

I.はじめに
 頭蓋内圧に関する総説は本欄でもしばしばとりあげられており22,35,44),これまでの歴史的流れはこれらの総説に詳しく記載されている,本稿ではこれらを省略し,臨床の実際において頭蓋内圧を記録した場合における経過を中心に述べる.

研究

Moyamoya病の過呼吸負荷脳血管写—脳波上のRe-build up発現機序に関連して

著者: 高橋明 ,   藤原悟 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.255 - P.264

I.はじめに
 Moyamoya病小児例においては,号泣,笛を吹くなどの過呼吸により脳虚血症状が誘発されることが知られている.一方,われわれは過呼吸負荷後に脳波上,皮質および皮質下起源と考えられる再徐波化が起こることを指摘し,本現象が本症小児例に特徴的にみられることから,これをre-build upと命名し,本症のスクリーニンゲに有用であることを強調してきた2,6,10).しかし,本現象の発現機序に関しては,いまだ確固たる定説もなく,系統的検討を行った報告もみられない.
 今回われわれは,本現象を解明する目的で本症小児例に対し過呼吸負荷前後に脳血管写を施行し,本症の特微的な脳血行動態を反映すると考えられる興味ある知見を得た.本報では,この結果を報告し,あわせてre-buikupの発.現機序に関して考察を加えたい.

三叉神経痛に対するグリセロール注入法

著者: 五十嵐正至 ,   鈴木文夫 ,   岩崎孝一 ,   小山素麿 ,   梅田信一郎

ページ範囲:P.267 - P.273

I.はじめに
 三叉神経痛に対する除痛法として,脳神経外科領域では近年microvascular decompression法や,半月神経節のthermorhizotomy法が行われている8,11).1981年スウェーデンのHakansonは上記2方法とは全く異なる三叉神経槽内グリセロール注入法を発表した5),この方法による治療成績は,追跡期間2-48ヵ月,平均17ヵ月で,86%の完治率を示した.われわれの施設では三叉神経痛の治療に対して,当初は半月神経節のthermorhizotomyを行ってきたが,1982年2月以来,グリセロール注入法を三叉神経痛治療の第1選択としてきた6,7).1983年11月までに29名の三叉神経痛患者をグリセロール法により治療した.この方法についてはまだ報告例も少ないが,合併症が少なく,安全で治療効果も優れており,今後も発展してゆく治療法と考えられたので,上記29例の治療成績,合併症,技術的問題点につき報告したい.

脳腫瘍血管透過性の超微形態—第1報 グリオーマ周囲低吸収域について

著者: 柴田尚武 ,   福嶋政昭 ,   井上優 ,   堤健二 ,   森和夫

ページ範囲:P.275 - P.281

I.はじめに
 近年,computerized tomograPhy(CT)によリグリオーマに伴った脳浮腫は,腫瘍周囲に認められる低吸収域(low density area,以下LDA)として容易に把握されるようになった.しかし,その本態の解明は十分とはいえない.もちろん,このLDAが直接,脳浮腫を示唆していることについては,異論のあるところであるが,今回は便宜的に脳浮腫として把握し,以下の研究を行った.
 CT上,高度にLDAを示したglioblastoma multi-forme 4例と,軽度に示したastrocytoma 3例を用い,両群の腫瘍血管の超微形態の違いを超薄切片法に加え,フリーズ・フラクチャー・レプリカ法を用いて透過電顕により検索し,血管透過性の面から検討を加えた.

脳動脈瘤と中大脳動脈分岐形態およびいわゆる血管奇形との関連性について

著者: 北見公一 ,   上山博康 ,   安井信之

ページ範囲:P.283 - P.290

I.はじめに
 中大脳動脈は他の脳動脈瘤好発部位に比べ,母血管の分岐様式が非常にバラエティでに富んでいる.この分岐形態と動脈瘤の発生頻度との関連を調べることは,動脈瘤の発生発育に母血管の形態学的要素が関与しているのか否かを解明する上で有意義と考える.また,いわゆる中大脳動脈奇形として,重複中大脳動脈(dtlplication,Dup.と略),副中大脳動脈(accessory, Acc.と略),中大脳動脈窓形成(fenestration, Fen.と略)などが知られているが,近年それらの"奇形"と脳動脈瘤との合併が多く報告されている1,2,7-9,14-16,18,20,23,27,28).そこでこれら奇形が動脈瘤の発生しやすい条件となっているのか否か,つまりこれらが何らかの胎生期過誤を伴う真の意味での奇形なのか,あるいは単なる稀な分岐形態の1つなのかを究明し,これらの奇形の病的意義を明らかにすることが必要と思われる.われわれは今回,脳動脈瘤と診断のついた症例を母集団とし,その脳血管撮影より中大脳動脈分岐形態および中大脳動脈奇形を検索し,いままでにないduplicationとaccessoryの同側合併という稀な奇形(分岐形態)を報告するとともに,脳動脈瘤発生に及ぼす分岐形態および奇形の影響,奇形の意義ならびに形態学的位置付けについて検討し,若干の文献的考察も加えてここに報告する.

抗てんかん薬長期服用患者における骨病変のマイクロデンシトメトリー法による評価—第1報 外来患者221例のスクリーニング調査

著者: 岩田幸也 ,   天野恵市 ,   河村弘庸 ,   谷川達也 ,   川畠弘子 ,   能谷正雄 ,   伊関洋 ,   塩飽哲士 ,   長尾建樹 ,   平孝臣 ,   久保長生 ,   喜多村孝一 ,   小林直紀 ,   小野由子 ,   柿木良夫

ページ範囲:P.293 - P.299

I.はじめに
 1967年Schlnidt13)により抗てんかん薬による骨病変に関してはじめて記載されて以来,数多くの報告がなされている.近年,抗てんかん薬長期服用患者にみられる副作用のひとつとして,骨軟化症などの骨萎縮性病変が注目されている.
 従来,この骨萎縮性病変の把握は生化学検査として血清カルシウム・燐・アルカリホスファターゼ(以下Ca,P,Al-pと略す)などの変動,X線検査として,骨陰影濃度・骨梁・骨形態の変化などの総合判断を基にして行われている.最近,骨萎縮性病変の早期発見方法として,井上ら2,3)により開発されたマイクロデンシトメトリー法(以下MD法と略す)が脚光を浴びている.本法は非侵襲性で,骨萎縮を定最的に評価し,反復検査が容易なため,経時的観察に優れている.

症例

頭蓋内および脊髄くも膜下腔へ播種性転移をきたした原発性脊髄グリオームの1例

著者: 高良英一 ,   井出光信 ,   山本昌昭 ,   今永浩寿 ,   神保実 ,   今井三喜

ページ範囲:P.301 - P.305

I.はじめに
 頭蓋内腫瘍が,くも膜下腔へ播種または転移することはよく知られているが,脊髄腫瘍が頭蓋内へ播種性.転移することは稀である.著者らは,今回脊髄腫瘍が経髄液的に脊髄くも膜下腔を経て,脳室系,さらに一部脳実質内へ播種性に転移したと考えられる症例を経験した.本稿では,この症例の症状とCTの経時的変化,および剖検所見を中心に症例の呈示を行い,あわせて若干の文献的考察を行う.

Carotid-ophthalmic aneurysmを伴うPituitary apoplexyの1例

著者: 中川原譲二 ,   末松克美 ,   中村順一 ,   堀田隆史 ,   鎌田一 ,   佐々木雄彦 ,   瓢子敏夫

ページ範囲:P.307 - P.311

I.はじめに
 報告により発生頻度に差はあるが,pituitary apoplexyはそれほど稀な現象ではない.また下垂体腫瘍が脳動脈瘤を合併することもそれほど稀ではない.しかし,脳動脈瘤を合併している下垂体腫瘍がphuitary apoplexyで発症することは極めて稀である.著者らは最近,非破裂carotid-ophthalmic aneurysmを伴い,くも膜下出血で発症したpituitary apoplexyの1例を経験したので報告する.

嗅神経を含んだ頭蓋底脳髄膜瘤の1例

著者: 天笠雅春 ,   吉本高志 ,   鈴木二郎 ,   草刈潤 ,   神林潤一

ページ範囲:P.313 - P.319

I.はじめに
 脳瘤のうち頭蓋底脳髄膜瘤に関する報告はわが国では少なく,数例1,12,16,21,26,29-31)を数えるのみである.今回われわれはCTにより診断され篩板に欠損孔があり,その部に嗅神経が陥入し膨隆している頭蓋底脳髄膜瘤(transethmoidal type)の1例を経験し,外科的に良好に処置し得たので若干の文献的考察を加え報告する.

成人型Chiari奇形の5手術例

著者: 下瀬川康子 ,   新妻博 ,   新海準二 ,   鈴木二郎 ,   望月広

ページ範囲:P.321 - P.325

I.はじめに
 Chiari I型奇形は,多くは成入に認められるが,その症状はしばしば多彩であり,他の大孔部奇形,syringo-myelia,頸髄腫瘍などとの鑑別は必ずしも容易でない.また前二者とは,Chiari奇形そのものが合併して認められることもあり,診断上注意を要する.しかし,highresolution CTの登場により,頸部のかなり詳細な所見を非侵襲的にとらえることが可能となり,特にCT me-trizamide myelographyを行うことにより比較的容易に本症の診断ができるようにな一、た.著者らはCT metri-zamide myelography導入後2年間で5例の成人型Chiari奇形患者を経験し,手術を行ったので報告し,若干の考察を加える.

髄膜播種で発症した小児頭蓋内原発悪性リンパ腫の1例

著者: 高橋立夫 ,   中村鋼二 ,   佐々木康夫

ページ範囲:P.327 - P.334

I.はじめに
 頭蓋内原発悪性リンパ腫はCTの導人以来数多く発見されるようになり,そのCT像はplainでisodensityかhigh densityの結節性腫瘤を示し,造影剤で均一に強く造影され内部にlow densityを伴うことは稀とされている5,11,17,18,20,24,35,37,39,40,42,44,45,48,49,57,58,61,62,68,70).また,これが病初期から髄膜播種像を呈することも稀で,従来わずか1例の報告しかないが66),われわれは頭蓋内圧亢進症状で発症し髄液細胞診で悪性リンパ腫の診断のついた6歳女児を報告し,その特徴的な髄膜播種のCT像を述べる.

松果体部血腫の1例

著者: 馬場元毅 ,   杉浦和朗 ,   滝沢英夫 ,   立沢孝幸 ,   鎌塚栄一郎 ,   葉山典泰 ,   亀田典章 ,   秋間道夫

ページ範囲:P.337 - P.342

I.はじめに
 松果体部は出血あるいは血腫形成の場としては稀な部位である.
 著者らは最近,比較的突然に視力障害をきたし,CTスキャン上,松果体部に高吸収域を認める症例を経験した.20年前の鞍上腫瘍の既往歴から松果体腫瘍の疑いで摘出術を行ったが,組織学的検索では腫瘍細胞は認められず,単なる血腫と診断せざるを得なかった.この稀な経験をもとに,その出血源について文献的考察を試みた.

両側性硬膜外血腫の自然発生をみたSystemic lupus erythematosusの1症例

著者: 石毛尚起 ,   角南兼朗 ,   佐藤章 ,   渡辺攻 ,   桜田正也

ページ範囲:P.345 - P.349

I.はじめに
 頭蓋内硬膜外血腫の自然発生は稀であり,その原因としてこれまでには硬膜の血管異常,出血傾向,副鼻腔炎,中耳炎などの波及があげられている19).今回われわれは,明らかな外傷機転がなく両側性に硬膜外血腫が自然発生し,その後に全身性エリテマトーデスsystemiclu-pus erythematosus(SLE)と確定診断された症例を経験した.
 SLEでは,精神神経症状が主要症状の1つであり,そのなかにはCTスキャンなどで,脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血が確認された症例もみられるら1,5,9,14)が,硬膜外血腫との合併は報告されておらず,また,本症例は両側性の硬膜外血腫の自然発生という点でも極めて稀と考えられたので,若干の考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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