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文献概要
解剖を中心とした脳神経手術手技
聴神経腫瘍の手術
著者: 小林茂昭1 杉田虔一郎1
所属機関: 1信州大学脳神経外科
ページ範囲:P.357 - P.364
文献購入ページに移動聴神経腫瘍は良性腫瘍の1つであるが,腫瘍の発生する解剖学的位置が重要組織に近接しているために従来より脳神経外科手術の内でも最も難かしい手術の1つとされている.しかしながら一方,大多数の聴神経腫瘍はいずれも同じような病態生理ならびに位置関係を示している.したがって手術的治療にあたっては,それぞれの術者によってほぼ一様な方針,方法が行われている.現在主で聴神経腫瘍に対して種々のアプローチが行われてきたが,そのなかには経後頭蓋窩到達法(suboccipitalapproach)4,7,8),経中頭蓋窩到達法(transpyramidalapproach,subtemporal approach)2,6)ならびに耳鼻科医によって導入された経迷路到達法(translabyrinthineapproach)1)がある.かつて聴神経腫瘍手術の達人といわれたOlivecronaの手術死亡率が20%であったが,現在では3%以下となっている7,8).
現時点での聴神経腫瘍手術の日的は腫瘍全摘に加えて,いかにして顔面神経と蝸牛神経を保存するかとなりている.手術方法および手術成績の観点からは,聴神経腫瘍の大きさが重要な因子となっており,最大径3cm以上の腫瘍とそれ以下の腫瘍では技術的な困難性において格段の差があり,異なったカテゴリーの腫瘍といえる.3cm以下では手術のみならず顔面神経,蝸牛神経の温存も容易にできうる.
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