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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科14巻10号

1986年09月発行

雑誌目次

イメージ・リハーサル

著者: 堀重昭

ページ範囲:P.1173 - P.1173

 最近の学会はビデオばやりである.そして手術のビデオの会場はたいてい若い会員の熱気で一杯になる.映像の時代,当然の傾向であろう.
 これだけ人気があるのは,ビデオが手術のコツを,しばしば演者以上に,雄弁に物語るからだろう.近頃は手術の失敗も悪びれずに盛りこんだノーカット版が多くなってますますおもしろい.おもわずハッとする修羅場があって,カクカクシカジカの工夫でなんとか乗り切りましたと術者が胸を張るときなど,ゾクゾク嬉しくなって,イヨッ,大統領!と声もかけたくなる.

解剖を中心とした脳神経手術手技

Bifrontal interhemispheric approachによるCarotid-ophthalmic aneurysmの直達手術

著者: 鈴木二郎 ,   金城利彦 ,   溝井和夫

ページ範囲:P.1175 - P.1181

I.はじめに
 carotid-ophthalmic areurysmは全脳動脈瘤の約1-5%9,16)と比較的稀な動脈瘤であるが,その解剖学的特異性から直達手術は困難であるとされてきた,1968年,Drake5)によりその直達手術の報告が成されて以来,数多くの報告がみられ1,15,20,21,25),特に近年は手術アプローチに関する種々の検討が相次いでいる2,3,4,6,8,10,13,14,17,19,26,27).しかし,これらはほとんどが一側前頭側頭開頭のいわゆるpterional approachを用いた手術である.一方,われわれはcarotid-ophthalmic aneurysmに対しては初期の1例を除いて一貫して両側前頭開頭23)によるinterhemispheric approachを用いてきた.本稿ではわれわれが経験した23例の直達手術症例を基に,carotid—ophthalmic aneurysmに対するinterhemispheric ap—proachの手術の要点と有用性について述べる.

研究

破裂脳動脈瘤の臨床的出血度分類の提案

著者: 佐藤仁一 ,   益澤秀明 ,   白石一也 ,   金澤至 ,   神谷博

ページ範囲:P.1183 - P.1187

I.はじめに
 破裂脳動脈瘤によるくも下膜出血の重症度分類として,従来Botterellら1),Hunt & Hess3),Hunt andKosnik4)などの分類が広く使用され,臨床的重症度と転帰とは密接に相関していることが指摘されている.しかし,こうした分類は時間的条件や出血の程度が考慮されていないなどの難点がある.また,CT所見も出血の程度を知る上で非常に重要である2)が,やはり時期による変化が問題にされよう.
 われわれは急性期手術の経験から,破裂脳動脈瘤の予後は,出血の瞬間に,すなわちその時の出血の程度や出血部位で決まるとの感触を得て,出血時の臨床症状を基にした術前の重症度分類を試み,これを出血度と定義した.再出血の回数と出血度との相関関係についても検討を行ったが,今回はわれわれの臨床的出血度分類を紹介し,さらにHunt and Hess分類とも比較し,両者の相違点や優劣に的を絞って報告する.

徐放性制癌剤複合体による悪性脳腫瘍の治療に関する研究

著者: 久保長生 ,   氷室博 ,   井上憲夫 ,   田鹿安彦 ,   田鹿妙子 ,   遠山隆 ,   坂入光彦 ,   喜多村孝一 ,   吉田勝 ,   嘉悦勲

ページ範囲:P.1189 - P.1195

I.はじめに
 悪性腫瘍の治療には手術療法,各種の化学療法,放射線療法および免疫療法などが試みられているが,その治療成績は極めて悪いのが現状である.
 近年,癌に対する化学療法の進歩はめざましく,脳腫瘍に対しても,従来より全身投与法,動脈内投与法,髄腔内投与法,嚢胞内投与法などがある.しかし,血液脳関門の存在により,制癌剤の脳腫瘍組織内への移行が悪く,さらに制癌剤の腫瘍内貯留時問が短いなどのため,最近,投与法にいろいろと工夫がなされている10,15).にもかかわらず,副作用などを考慮すると,今までの投与法では充分な効果が得られていない.

内頸・眼動脈分岐部動脈瘤と視力,視野障害

著者: 京井喜久男 ,   外賀昭 ,   多田隆興 ,   飯田紀之 ,   角田茂 ,   内海庄三郎 ,   榊寿右 ,   森本哲也 ,   岩肇 ,   横山和弘

ページ範囲:P.1197 - P.1204

I.はじめに
 内頸・眼動脈分岐部動脈瘤(以下IC-Oph An)は蝶形骨,視神経および視交叉,海綿静脈洞に近接して発生するが,その解剖学的特殊性から直達手術が困難な場合が多く,手術成績も他の部位の動脈瘤に比して満足すべきものではない1-3,10).最近,本動脈瘤に対する手術法および手術手技6,11,13,17),接近法9,12,14)に関しての報告は比較的多くみられるが,動脈瘤の圧迫や手術操作による手術前後の視機能障害についての検討も欠かせないものと考えられる.
 今回われわれは現在までに経験したIC-Oph An症例を対象として,本動脈瘤に伴う視力,視野障害について,SAHの有無,放射線学的所見および手術所見より分析,検討した.

Long-term outcomeを基にした高血圧性脳出血の検討—第1報 血腫進展様式の重要性とその臨床的意義

著者: 神野哲夫 ,   永田淳二 ,   星野正明 ,   中川孝 ,   ,   佐野公俊 ,   片田和広

ページ範囲:P.1207 - P.1212

I.緒言
 著者らの施設にCTが導入されて以来,約10年が経過した.その間,経験した高血圧性脳出血は610例である.この10年間,個々のCTを検討し,あるものは手術を行い,そして,幸いにして「脳卒中友の会」という著者らの施設で治療した患者よりなる親睦団体を通じて,長期間,比較的患者に密着してのlong-term followupを行う機会を得た.ここらで,CT所見を中心にした高血圧性脳出血の臨床病態,手術適応,そして最近の著者らの実験的検討を,このlong-term follow upを基にして一度まとめてみたいと思う.その第1報として,本稿では被殻出血について,その血腫進展様式とlong—term outcomeとの相関を中心にして,被殻出血の臨床病態について著者らの検討結果を紹介し,諸賢の御批判を頂きたいと思う.

脳血管緊張に及ぼす脳幹部脳血管運動中枢の役割—第3報 くも膜下出血急性期における脳幹破壊・刺激の頭蓋内圧に及ぼす影響

著者: 長尾省吾 ,   本間温 ,   西浦司 ,   筒井巧 ,   門間文行 ,   久山秀幸 ,   西本詮

ページ範囲:P.1215 - P.1220

I.はじめに
 第114)・2報11)において,脳血管緊張調節中枢である視床下部背内側核(DM),中脳網様体(MBRF)の破壊・および延髄網様体(MORF)の破壊刺激実験を行い,これらの部位の機能異常が直接脳血管緊張を低下せしめることを報告した.一方,臨床上経験する急性脳腫脹は,くも膜下出血(SAH)による髄液循環障害や脳挫傷,およびそれに伴う脳浮腫などによってすでに頭蓋腔がtightとなり,基礎頭蓋内圧(ICP)が上昇している例に合併することが多い.そこで今回は実験的にSAHを作成し,基礎ICPが亢進している状態で,1.DM,MBRF破壊,2.DM,MBRF破壊+MORF刺激を行い,特にICPの反応の様態から,これら脳幹機能異常がSAH急性期の急性脳腫脹発現にどのように関与しているか検討を試みた.

症例

脳腫瘍の放射線療法により誘発された髄膜腫の1例

著者: 加藤正哉 ,   小川彰 ,   鈴木晋介 ,   今田隆一 ,   和田徳男 ,   吉本高志

ページ範囲:P.1223 - P.1228

I.はじめに
 髄膜腫の病因に関しては,その他の腫瘍一般と同様に確立した見解は得られていない,しかし,Cushing5)が外傷が発生の要因の1つであることを唱えて以来,成因に関して数多くの論議がかわされており,放射線照射もその要因の1つに数えられている.
 今回われわれは,第3脳室腫瘍に対して放射線療法を行った後に14年を経て発生した左側頭部巨大髄膜腫の症例を経験したので報告する.

前頭骨海綿状血管腫の1例

著者: 新野清人 ,   中川義信 ,   松本圭蔵 ,   伊井邦雄

ページ範囲:P.1231 - P.1235

I.はじめに
 頭蓋骨に発生した血管腫に関する報告は,1845年Toynbee12)が最初に記載して以来,数多くみられる.しかし,その発生頻度は全骨腫瘍の0.2%2,12)と低く,比較的稀であり,本邦での報告は,現在までに調べえた限りでは,わずか9例を数えるのみであった11,13).こういった報告によると,海綿状血管腫の診断には頭蓋単純写が有用とされている9,11,14).今回われわれは,従来よりの検査法に加え行ったCT scanが術前の臨床診断に非常に有用であった前頭骨に発生した海綿状血管腫の1例を経験したので,若干の考察を加えるとともに,その特徴あるCT像について報告する.

動眼神経鞘腫の1例

著者: 野上予人 ,   西嶌美知春 ,   遠藤俊郎 ,   高久晃

ページ範囲:P.1237 - P.1241

I.はじめに
 頭蓋内神経鞘腫は大部分が聴神経や三叉神経知覚枝などの知覚神経から発生するが,運動神経より発生することは稀である15).最近われわれは,動眼神経より単独に発生した神経鞘腫を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Basal epidermoidとTrigeminal neurinomaが合併した原発性異種多発性脳腫瘍の1例

著者: 北岡憲一 ,   阿部弘 ,   田代邦雄 ,   河本峻 ,   宮坂和男

ページ範囲:P.1243 - P.1248

I.はじめに
 von Recklinghausen 病(以後vR病と略す)を伴わない種類の異なる原発性脳腫瘍の同一個体での合併は文献上では比較的稀なことである6,9)
 今回われわれは,それぞれ発生頻度の稀なepidermoldとtrigeminal neurinomaが同一後頭蓋窩硬膜内で相接して存在していた例を手術にて確認した.原発性異種多発性脳腫瘍としては非常に稀な組み合わせと思われるので文献的考察を加え報告したい.

多発性脳動脈瘤を伴ったSystemic lupus erythematosusの1例

著者: 長安慎二 ,   花北順哉 ,   三宅英則 ,   鈴木孝典 ,   西正吾

ページ範囲:P.1251 - P.1255

I.はじめに
 くも膜下出血をきたす原因の1つにsystemic lupuserythematosus(以下,SLEと略す)があることはよく知られた事実であるが,意外にそのような症例の報告は少なく,文献上においても,Dubois,Tuffanelli4,5)は,SLE 520例中3例に,Clark,Bailey2)は100例中2例にくも膜下出血を認めたにすぎないとしている.このたび当施設において,多発性脳動脈瘤を伴い,くも膜下出血を呈したSLEの1症例を経験したのでここに報告し,集め得た文献をもとにSLEにおけるくも膜下出血の原因,予後につき考察を加えた.

Cerebral venous dysgenesisの1例

著者: 佐藤和栄 ,   加川瑞夫 ,   清水常正 ,   河村弘庸 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.1257 - P.1260

I.緒言
 近年,頭蓋内動脈系に関しては多くの研究がなされているが,頭蓋内静脈系についてはわずかな報告が散見されるにすぎない.加川らは1972年,幼小児頭蓋内血管に関する一連の形態学的研究の中で,知能発育異常・痙攣発作を有する幼小児に,特異な"頭蓋内異常静脈網"がかなりの割合で認められることを見いだし,"cerebralvenous dysgenesis"と名づけて報告した2).今回われわれは,痙攣発作を有する女性に脳血管写上異常静脈網を認め,しかも手術により直接異常血管網を観察する機会を得たので報告し,あわせて静脈系奇形の分類を中心に若干の考察を加える.

前下小脳動脈・内耳動脈分岐部動脈瘤の2治験例

著者: 上出廷治 ,   松村茂樹 ,   黒川泰任 ,   大滝雅文 ,   田辺純嘉 ,   端和夫

ページ範囲:P.1263 - P.1268

I.はじめに
 椎骨・脳底動脈瘤は全脳動脈瘤の5-10%を占め,決して稀なものではない.しかしその多くは,basilar bi—furcation近傍あるいは後下小脳動脈分岐部に発生し,前下小脳動脈末梢部動脈瘤は現在まで20例の報告を見るにすぎない.われわれは,極めて興味ある発症経過を示した前下小脳動脈・内耳動脈分岐部動脈瘤の2例を経験したので報告する.

透明中隔腔およびベルガ腔に膿瘍を形成した1例

著者: 阿部博史 ,   土田正 ,   森修一

ページ範囲:P.1271 - P.1274

I.はじめに
 透明中隔腔(Cavum septi pellucidi,以下CSP)とベルガ腔(Cavum Vergae,以下CV)はCTの普及とともに偶然に発見される機会も多くなり,最近これらの臨床的意義について検討を行っている報告も散見される1-4).しかし,外科的手術の対象として取り上げられることは少ない.CSP,CV自体がcystを形成し,髄液路を閉塞し水頭症をひきおこしたり,周囲脳を圧迫したりする時に,外科的処置が必要となる.
 今回われわれは,髄膜炎後CSPおよびCVに膿瘍を形成した稀な1例を経験し,stereotaxicに吸引除去し,治癒せしめたので報告する.

第3脳室経由で到達した高位脳底動脈瘤の1例

著者: 児玉南海雄 ,   佐々木達也 ,   山野辺邦美 ,   菊池泰裕 ,   倉島康夫

ページ範囲:P.1277 - P.1281

 I.はじめに
 脳底動脈末端部動脈瘤の手術は,通常Drake4)のsub—temporal approachもしくはYasargil14)のpterionalapproachにて行われている.しかし,脳底動脈末端部が高い位置にある場合や,megadolichobasilar anomaly2)を伴ったこの部の動脈瘤の症例では,いずれのapproachにても手術は困難もしくは到達不可能な場合がある.
 今回われわれは,megadolichobasilar anomalyを伴った脳底動脈末端部動脈瘤の症例において,すでに第3脳室底部が一部破壊されていたことから,両側前頭葉間から接近し,終板,第3脳室底を経由して動脈瘤を処置した1例を経験したので報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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