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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科14巻13号

1986年12月発行

雑誌目次

医学日本語には動詞がない!

著者: 植村研一

ページ範囲:P.1527 - P.1528

 中学・高校・大学と8年間も英語を勉強させられ,かつ卒後長年英文医学論文を読み続けた日本人医学者が書いた英文論文が,「何を書いてあるのかよく分からないひどい英語だ!」と米英の編集者にクレームを付けられる場合がまれならずあるのは何故か.相当の「英文読解力」とある程度の「和文英訳力」を持っているが,「英会話力」や「英作文力」はほとんど持っておらず,「英語が使いこなせていない」からである.
 このことについて,私が10年以上Neurologia medico-chirurgicaで日本人脳神経外科医の英文医学論文の英文添削を続けてきて痛感していることを若干述べてみる.文法的誤りの多い論文は除外しても,日本人の書く英文は「抜群に良い」か「ギクシャクしている」かの2種類に分かれ,その中間がない.前者は著者の英語力が本物で最初から英文で原稿を書いたか,もしくは投稿前に良心的に米英人の添削を受けたかのいずれかであり,後者は日本語で書いた原稿を文法的に英語に逐語訳したものである.後者の論文は確かに文法上の誤りはないが,米英人に見せると「ウーン」とまず唸り,「何を書こうとしているのかよくわからない」といわれるか,「意味は十分わかるが使われている英語が"comfortable"でない」といわれるのが落ちである.英文で書かれた医学論文を日本語に逐語訳してもよく通じるが,日本語で書かれた医学論文を文法的に正しく英語に逐語訳して何故に通じないのか.

解剖を中心とした脳神経手術手技

顔面外傷に対する顔面形成術—顔面上部の骨折の形成

著者: 田嶋定夫

ページ範囲:P.1529 - P.1536

はじめに
 顔面骨骨折の症状,障害は多岐多彩であるが,大きく分けると以下のように集約される.
 ①顔面の全体的,局所的変形

研究

Long-term outcomeを基にした高血圧性脳出血の検討—第4報 被殻出血の長期予後に対する年齢および病巣半球左右差因子の及ぼす影響

著者: 神野哲夫 ,   永田淳二 ,   星野正明 ,   中川孝 ,   浅井敏郎 ,   亀井義文 ,   ,   佐野公俊 ,   片田和広

ページ範囲:P.1539 - P.1545

I.緒言
 高血圧性脳出血の手術適応,予後を論ずる際,年齢因子,病巣半球の左右の因子が重要であるといわれてきた1-4).果して,どの程度重要であろうか.
 高齢化がますます進むなか,手術適応を論ずる際に年齢因子に対する考慮がより重要な時代になりつつあるように思われる.特に,脳血管障害の場合,症例の多くが高齢者である反面,その高齢者が社会的にもまだまだ第一線で活躍しているし,生理的にも,暦での年齢に比して若々しい身体を持つ患者が多くなっているようである.一方,手術技術の進歩により手術自体がより低侵襲となりつつあり,術後のcareも格段の進歩を遂げている.つまり,手術適応決定の際の年齢因子は時代とともに変りつつある印象を持っている.

浅側頭動脈—中大脳動脈吻合術前後の局所脳循環動態

著者: 久保直彦

ページ範囲:P.1547 - P.1556

I.はじめに
 虚血性脳血管障害の外科的治療法としては浅側頭動脈と中大脳動脈を用いたバイパス血管吻合術が最も広く行われているが,その手術適応および治療効果に対する評価については一定の見解がない1-8),本治療の評価に重要である局所脳循環動態面の検討においても,従来二次元的測定法が大部分であり,脳深部循環を含む三次元的な意味での術後脳血流の変化に関しては不明な点が多いため,本手術前後における脳循環測定の意義も明らかでなく今後解決されるべきことが多い18,20)
 著者は近年開発された三次元的局所脳循環(regionalcerebral blood flow:rCBF)測定法により,浅側頭動脈—中大脳動脈吻合術前後の安静時rCBF,脳血管CO2反応性および自己調節作用(以下autoregulation)を検討した.すなわち吻合血管から虚血部への血流供給が脳深部を含む病巣周囲の脳機能に与える影響を観察し,本手術の治療効果および術後評価におけるrCBF測定の有用性につき,若干の知見を得たので報告する.

成人モヤモヤ病に対する間接的EC/IC吻合術の効果

著者: 松島善治 ,   鈴木龍太 ,   山口武兼 ,   田畑均 ,   稲葉穰

ページ範囲:P.1559 - P.1566

I.はじめに
 私どもはモヤモヤ病に対して,encephalo-duro-arte—rio-synangiosis(EDAS)と呼ぶ新しい手術を開発し11),今日までに小児モヤモヤ病50例,成人モヤモヤ病4例に対し本法を施行してきた.小児例は全例乏血性症状を示したものであり,これらに対するEDASの効果は極めて良好であり12),本手術の支持者は年々増加している7,15).一方,私どもの経験した成人症例は,全例若年であるにもかかわらず3例が出血型であり,1例のみ梗塞型であった.成人モヤモヤ病,ことに出血型のモヤモヤ病に対する外科的治療法の有用性についてはいまだに確定した意見がない14).そこで本論文では,私どもの経験した4症例に対するEDASを中心とした間接的EC/IC bypassの手術効果を述べ,成人モヤモヤ病に対する間接的吻合術の効果について考察する.

症例

甲状腺機能低下症に随伴したTSH-PRL産生Microadenomaの1再発例

著者: 栗坂昌宏 ,   武井義雄 ,  

ページ範囲:P.1569 - P.1575

 I.はじめに
 thyroid stimulating hormone(TSH)-prolactin(PRL)産生腫瘍の発生頻度は極めて少なく,今までに13例が報告されているにすぎない5,9,11,12,15,18,20,23,26,28,30).その多くは甲状腺機能亢進症やmultiple endocrine ade—nomatosis(MEA)に随伴するものであり14,17,19,22,27),これを除いたTSH-PRL産生腫瘍は極めて稀で,このような腫瘍の組織—免疫組織化学的検討はいまだ十分に行われていない.また,TSH産生腫瘍は時々hyperpro—lactinemiaを合併することがあり,今日までにHornら(1976)11),Baylis(1976)3)およびDuelloら(1977)6),Khalilら(1981)15)によって報告されているが,このうち免疫組織化学的検索を行っているのはHorn(螢光抗体法)11)とDuello(酵素抗体法)6)およびKhalil(酵素抗体法)ら15)である.さらに電顕的観察まで行っている報告は極めて少ない現状である15).われわれは,甲状腺機能低下症に合併したTSH-PRL産生Inircoade—nomaの再発例を経験し,その組織所見を光顕,電顕および免疫組織化学的に検索し,腫瘍の発現機序についても検討したので報告する.

CT上脳室内にFree fatを認めた松果体奇形腫の1症例

著者: 上出廷治 ,   高谷了 ,   新谷俊幸 ,   田辺純嘉 ,   端和夫 ,   相馬勤

ページ範囲:P.1577 - P.1582

I.はじめに
 頭蓋内奇形性腫瘍,特に類上皮腫では,腫瘍被膜の自然破裂,あるいは摘出手術に際して,刺激性の強い脂質成分が脳室内あるいはくも膜下腔に拡散し,組織反応性の著しい肉芽腫性髄膜炎を呈することはよく知られており,頭蓋単純撮影にて腫瘍内あるいは脳室内にfat-fluidlevelを形成することがある2,9).しかし,皮様嚢腫,奇形腫を含めCT上free fatとして描出されることは,極めて稀なものである.われわれは,経過中CT上,側脳室前角内にfree fatを認めた松果体奇形腫を経験したので,神経放射線学的所見とともに症候学的特徴について,文献的考察を加え報告する.

外傷性前大脳動脈瘤—自験例4例を含む48例の検討

著者: 天笠雅春 ,   小沼武英 ,   鈴木二郎 ,   藤本俊一 ,   桜井芳明

ページ範囲:P.1585 - P.1592

I.はじめに
 外傷性脳動脈瘤は稀ではあるが多くの報告があり,Fox12)(1983)は1979年までに232例の文献的集計を報告している.われわれは最近4例の外傷性前大脳動脈瘤を経験したので本症の文献的考察を行い,特にその臨床像とCT所見を検討し,診断と治療についても若干の考察を加える.

頭頂より後頭蓋窩にかけての広範AVM症例

著者: 石黒修三 ,   木村明 ,   宗本滋 ,   正印克夫 ,   二見一也 ,   清水博志

ページ範囲:P.1595 - P.1599

I.はじめに
 頭蓋の動静脈奇形(AVM)は,放射線学的には関与する流出入血管によりscalp, calvarial, dural, pialの各タイプに分類されている11).これまでcalvarialAVMの報告例はなく,またdural AVMでも頭頂部AVMの報告例は少ない.われわれは最近,放射線学的にはcalvarial AVMを合併していると考えられる頭頂部から後頭蓋窩にかけての広範なAVM症例を経験したので報告し,治療面における放射線学的分類の意義について言及する.

高PRL血症を呈したMale cystic pituitary adenoma—Male prolactinoma 6例の検討

著者: 八塚如 ,   北島具秀 ,   田口芳雄 ,   坂井春男 ,   中村紀夫

ページ範囲:P.1601 - P.1605

I.はじめに
 血中prolactin(以後PRL)値のradioimmuno—assayの確立とともに,それまでのいわゆるnon-functioning chromophobe adenoma と称されていたもののうち,血中PRL値の高値例が少なくとも30%を占めることが判明した15).しかもprolactinoma(以後PRLoma)は女性例の報告が多く男性例は稀とされていた.しかし,最近血中PRL値の測定が容易となり男性例の報告も散見されるようになった10)
 今回,高PRL血症を呈したmale cystic pi—tuitary adenomaを経験したので,当科で現在まで経験したmale prolactinoma 5例とともに呈示し文献的に考察する.

原発性大脳半球間裂部硬膜下膿瘍の1例

著者: 松井豊 ,   安部倉信 ,   安田隆彦 ,   吉峰俊樹 ,   谷岡恒雄

ページ範囲:P.1607 - P.1611

I.はじめに
 原発性大脳半球間裂部硬膜下膿瘍は稀な疾患であり,頭蓋内膿瘍の症状に加えて特異な局在徴候もみられる.CTスキャン出現以来,膿瘍完成後の診断は比較的容易となったが,病初期の診断はいまだ困難である.保存的治療の結果,一時症状は緩解したが再び増悪をきたし,開頭・ドレナージ術を要した大脳半球間裂部に限局する硬膜下膿瘍の1例を経験したので報告する.

Medial proximal striate arteryの圧迫症状を呈した未破裂動脈瘤の1例

著者: 岡博文 ,   沖英雄 ,   大林正明 ,   深見常晴

ページ範囲:P.1613 - P.1617

I.はじめに
 脳動脈瘤による脳虚血症状の発現機序として動脈瘤破裂後の脳血管攣縮によるものが最も多いが,動脈瘤内由来の血栓塞栓による例も報告されている.今回われわれは動脈瘤自体が近接する血管を圧迫し,その血管の血流障害により脳虚血症状を呈していたと思われる稀な症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

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「脳神経外科」第14巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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