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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科14巻2号

1986年02月発行

雑誌目次

人類悪性腫瘍細胞論

著者: 内海庄三郎

ページ範囲:P.121 - P.121

 どれほどか前,初めての「扉」の原稿「道」—と題するエッセイ—の中で,宇宙へどんどん人工衛星が打ち上げられる,これも新しい道,しかし宇宙へのmetastasisの初まり,と書きました.「人類悪性腫瘍細胞論」の一端です.ときにこれと同類の言葉をマスコミの中でも耳に,目にするようになりました.
 人類の持っている智慧の裏付けを持った知識は,悪性腫瘍細胞のnatureに,そしてその対応に,極めてmulti-factorialな問題を実に多角的なアプローチで,一つ一つ一歩一歩解決を見出さんとしている,少なくとも見出さんと努力している.道は遠くとも,何らかの可能性を感じさせてくれます.

総説

CTを利用した定位脳手術

著者: 駒井則彦

ページ範囲:P.123 - P.133

はじめに
 定位脳手術はSpiegel & Wycisにより脳神経外科臨床に導入されて以来,機能的神経疾患の神経核や伝導路を破壊するために専らレントゲン・コントロールにより行われてきた.
 目標点の座標値決定は気脳写像より患者のCA(前交連),CP(後交連),FM(モンロー孔)などを求め,これらを基準にして脳内の手術目標部位を決定し,この目標点を頭蓋に装着した手術装置内の一点として座標値を求めてきた.定位脳手術のため,CA-CPを基準にしたStereotactic Atlasが数種発表されている1,67,73)が,Atlasはあくまで標準脳で,個々の患者には固体差があり,萎縮脳ではその補正に苦慮していた.また,破壊目標核の同定には活動電位の誘導や,電気刺激効果などが用いられてきたが,実際どの部位がどの程度破壊されたかは剖検を待たねばならなかった.

研究

開頭術中誘発電位モニターの技術的問題点ならびにその対策

著者: 森竹浩三 ,   武部吉博 ,   小西常起 ,   諏訪英行 ,   高家幹夫 ,   半田肇 ,   藤原哲司

ページ範囲:P.135 - P.141

I.はじめに
 神経機能の客観的評価法として感覚誘発電位(Sen—sory Evoked Pctentials,以下"誘発電位"と略す)が急速に普及しつつある.われわれ脳神経外科医がこれに最も期待する分野が術中の神経機能モニターとしての応用であるが,アーチファクト対策の十分に施された検査室とは逆に,種々さまざまな電気機器が使用される手術場は,誘発電位の記録の場として最も不適当といえる.術中モニター法については多くの報告があるが,その多くは電気的パラメーターなど電気生理学的観点からの研究や実際上の誘発電位に対する麻酔の影響など医学的問題を論じたものがほとんどで,アーチファクト対策など技術的な問題点を詳しく取り上げて検討したものは少ないようである1-10).本稿ではわれわれの過去約3年間の経験に基づき,これから開頭術中の誘発電位モニターを始めようとする者が遭遇すると思われる技術的なポイントを幾つか取り上げ,それらを解決するための具体策とともに述べてみたい.

頸髄損傷のCT-myelography

著者: 小柳泉 ,   井須豊彦 ,   岩崎喜信 ,   杉本信志 ,   阿部弘 ,   斎藤久寿 ,   井原達夫 ,   三森研自 ,   中川端午 ,   桜木貢

ページ範囲:P.143 - P.147

I.はじめに
 近年,脊推・脊髄外傷に対して水溶性造影剤によるCT-myelography(以下CTMと略す)が行われるようになり,脊椎管内へ突出した骨折片や椎間板突出による脊髄の圧排像が横断面から描出され,脊髄自体の形態,特に腫大像も容易に診断可能となってきた.
 今回われわれは,急性期頸髄損傷のCTM所見について,特に脊髄腫大と神経症状および予後との関連を検討したので報告する.

人工補填材料を用いたOsteoplastic laminectomy

著者: 小山素麿 ,   岩崎孝一 ,   渡辺一良 ,   半田譲二

ページ範囲:P.151 - P.159

I.はじめに
 頸椎軟性椎間板ヘルニア(soft disc)や硬性椎間板ヘルニア(hard disc)(骨軟骨症)に対し,それが1-2椎間に限られておれば,椎間板や骨棘を除去し椎体を前方から固定するのが今日最も広く行われている外科的療法である.しかし脊椎管の狭窄がある患者に前方到達法を選択する場合は,GaleraとTovi6),GuldettiとFortuna7)Phillips18)などが警告しているように,手術合併症は決して少なくない.したがって,頸部脊椎管狭窄症ではStratford22),Epsteinら4)などのように,後方から到達し広範椎弓切除術を多椎体にわたり行うことが一般化した.しかしこの術式では脊椎の後方要素がすべて除去されてしまうため,構築的に頸椎の支持力が減弱し,スワンネックという厄介な問題を残すこともあり,いったん除圧された硬膜が瘢痕組織により再び絞扼される危険もある.欧米では脳神経外科医により進められてきたこの種の研究は,わが国ではもっぱら整形外科医により受けつがれ,桐田ら14)の後縦靭帯骨化症に対する後方除圧に始まる一連の研究に発展した.おもな変法をあげると河合法13),小山法15),服部法10),Tsuji24)や平林ら11)の片開式脊椎管拡大術がある.

小児の脳血管障害の発生頻度とその特徴—小児総合病院における120例の検討

著者: 大井静雄 ,   山田洋司 ,   佐々木浩治 ,   松本悟

ページ範囲:P.161 - P.168

I.緒言
 脳血管障害による死亡数は本邦において毎年人口十万人に122.8人(昭和58年度14))に上り,神経疾患のなかでも最も一般的に経験されるものである.しかしながら脳血管障害は成人病としてその代表的な存在であるとされる一方で,小児における脳血管障害を総合的にその種類,頻度,特徴などにおいて体系づけた報告は少ない.この論文の目的は,この観点より小児疾患の総合臨床における脳血管障害の発生頻度とそれぞれの病態の特徴を分析することにある.

体性感覚誘発電位のN20の上行脚の成分について—ヒトの中脳からの直接記録による考察

著者: 平孝臣 ,   天野恵市 ,   河村弘庸 ,   谷川達也 ,   川畠弘子 ,   能谷正雄 ,   伊関洋 ,   塩飽哲士 ,   長尾建樹 ,   岩田幸也 ,   梅沢義裕 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.171 - P.176

I.はじめに
 手根部正中神経を電気刺激して得られる体性感覚誘発電位(SEP)は,noncephalic referenceを用いて記録される短潜時SEPと,それ以降の潜時で記録される皮質SEPとに大別される.前者には,P9,P11,P13,P15およびN1818-10,19),後者にはN20,N30,N6018),などが確認されている.これらの反応のうち,N18,N20は従来P15の後に引き続いて記録されるひとつの陰性波としてN1と呼ばれていた.しかし,その後,N18は頭皮上広範に分布し10),視床皮質間の障害において影響をうけない20)ことが見いだされた.—方,N20は頭頂葉第一次体性感覚野に一致した分布を示し13),視床皮質間の障害によって記録されなくなる4,20)ことがわかり,N1が2つの要素,すなわちN18とN20とから構成されることが確実となった.
 Abbruzzeseら1,2)は詳細な検討により,P15とN20の間にN16とN17のふたつの要素があることを報告している.また最近Eisenら11)は,digital fiterを用いた手法によって両の上行脚には少なくとも3つの陰性波が存在することを確認している.このようにSEPのP15とN20の間の成分に関しては,N18は確実としても,いまだ見解の一致をみるに至っていない.

脳動静脈奇形に対するバルーン・カテーテルによる術中一時遮断の有用性—脳保護物質(仙台カクテル)を併用して

著者: 高橋明 ,   鈴木二郎 ,   菅原孝行 ,   吉本高志

ページ範囲:P.179 - P.187

I.はじめに
 脳動静脈奇形(AVM)の治療は現在のところ手術的全摘出が理想である.しかし,天幕下のものや巨大AVMではその根治術は困難を極め,手術不能と判断されたり,他の姑息的治療法を選択せざるをえない場合も多い.われわれは以前よりAVMの摘出にあたっては,血流遮断時間を延長させるために20%マニトール投与下に導入血管を確保し,これを一時遮断したうえで,安全確実に摘出すべきことを主張してきた12).しかし後頭蓋窩あるいは多系統の流入動脈をもつAVMでは,手術そのものが困難となることも少なからず経験してきた.最近われわれはこのような症例に対してmicroballoon catheterを用いて仙台カクテル14)(20%マニトール,dexameth—azone, vitamin E)投与下に術中導入動脈一時遮断を併用して良好な成績をあげている.今回は,この方法にて摘出術に成功した4例のAVMを紹介し,術中balloon occlusionの有用性について報告する.

症例

家族性脳動脈瘤の3家系—特に同胞例について

著者: 重森稔 ,   中山顕児 ,   大島勇紀 ,   中嶋修 ,   渡辺光夫 ,   倉本進賢

ページ範囲:P.189 - P.194

I.はじめに
 家族性に脳動脈瘤が発生することは比較的稀である3,7,12).しかし,脳動脈瘤の家族発生は嚢状脳動脈瘤の発生原因として,先天的および何らかの遺伝的要因の関与を示唆する事実として以前から興味を持たれてきた4).そして,家族性脳動脈瘤ではその発生部位や発生年齢などにおいて,一般の脳動脈瘤とはかなり異なる特徴を有することが指摘されている1,3,7,12).さらに,家族性脳動脈瘤であっても,兄弟,姉妹例の場合にはさらに特異な特徴があることも知られている1)
 著者らは1982年,比較的稀な脳血管奇形を合併した脳動脈瘤を有する1姉妹例につき報告した13).その後さらに1姉妹,1母子例の計4例の家族性脳動脈瘤を経験した.そこで今回はこれら6症例をまとめ報告するとともに,とくに兄弟,姉妹など同胞例の特徴を中心に若干の文献的考察を行ったので報告する.

小脳橋角部原発性脈絡叢乳頭腫の1例

著者: 平井収 ,   山下純宏 ,   高橋潤 ,   半田肇

ページ範囲:P.197 - P.200

I.はじめに
 小脳橋角部唾瘍はほとんどが良性腫瘍であり,70%あるいはそれ以上を聴神経鞘腫が占めるとされているが4,18),稀な腫瘍または血管腫も存在するために,CT診断が日常化した現代でも鑑別は必ずしも容易ではない.著者らは頭痛発作のみで他に何ら神経症状を伴わない小脳橋角部脈絡叢乳頭腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

前頭眼窩動脈に破裂脳動脈瘤を認め,その末梢枝に前篩骨動脈との吻合を有した1症例

著者: 榎本一巳 ,   後藤浩 ,   村瀬幹雄

ページ範囲:P.203 - P.206

I.はじめに
 大部分の脳動脈瘤は,Willis輪の一部を形成する内頸動脈と前交通動脈,および中大脳動脈本幹に認められ,それより末梢枝に出現することは少ない.そのうち,前大脳動脈末梢部では,pericallosal arteryの分枝部に認められている4)
 著者らは,今回,くも膜下出血で発症し,前大脳動脈の一分枝である前頭眼窩動脈に,破裂脳動脈瘤が認められ,かつ,その末梢枝が眼動脈の分枝のひとつである前篩骨動脈と吻合を有した症例を経験したので報告する.

脳有鉤嚢虫症の1手術例

著者: 清水幸彦 ,   香川茂樹 ,   小沼武英

ページ範囲:P.209 - P.213

I.はじめに
 有鉤嚢虫症は本邦では稀な疾患であるが27),通常,脳および皮下,筋肉内に多発性に寄生することが多い10,17,18,28).今回われわれは,脳実質内の単発性の病巣がCTにより確認された脳有鉤嚢虫症の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

脳動静脈奇形と髄膜腫の合併例

著者: 大野正弘 ,   永井肇 ,   三沢郁夫 ,   杉山尚武

ページ範囲:P.215 - P.219

I.はじめに
 髓膜腫は,発生頻度が原発性脳腫瘍の約20%14)を占めるslow growingな良性腫瘍であり,剖検例や他の頭蓋内病変の手術例でincidentalに発見されることが比較的多い腫瘍であることが知られており20,24),脳動脈瘤との合併についても多く報告されている9,13,15,17).しかし,髄膜腫と脳動静脈奇形との合併例の報告は極めて稀で,著者らが検索し得た範囲では文献上2例4,6)に見られるに過ぎない.
 近年,脳神経外科領域においてCT scanのように被検者への負担が軽く,頭蓋内病変について詳細な情報が得られる検査機器が普及して,頭蓋内病変が偶発的に発見されることも多く,このような合併例の発見も多くなることが考えられる.

妊娠に関連した脳出血—4症例報告と文献的考察

著者: 原田廉 ,   藤岡敬己 ,   岡本博文 ,   篠原伸也 ,   沖修一 ,   魚住徹

ページ範囲:P.221 - P.225

I.はじめに
 妊娠,分娩,産褥期における母体の循環動態は特有の変化をきたすことが認められており,発生頻度としては少ないが,脳出血をきたすことがある.われわれの経験した妊娠に関連した脳出血の4症例を検討し,文献的考察を加え報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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