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魔法の弾丸
著者: 大江千廣1
所属機関: 1群馬大学脳神経外科
ページ範囲:P.477 - P.477
文献購入ページに移動私はこの,ねらった的に必ず当るという「魔法の弾丸」に大変興味があります.医学の研究は,ある意味では病変,病原だけをとり除き,生体に害を与えないという「魔法の弾丸」の開発の歴史ともいえるでしょう.この言葉を最初に使ったのは梅毒の特効薬としての「魔法の弾丸」サルバルサンを作ったポール・エーリッヒです.いうまでもなくエーリッヒの時代は細菌学の全盛時代で,病原体のみを殺し(射ちおとし),生体に害を加えないものが作れるはずだという信念のもとに,エーリッヒが多くの失敗を重ねながらも(606号という別名があるくらい)遂に"Magischekugerl"を作り出した話を,かつて大変興奮して読んだ覚えがあります.エーリッヒがそのような信念を抱いたもとには,彼が化学薬品を用いた染色のことを永くやっていて,ある有機物がある色素で特異的に染るということを知っていたからで,理論的に実験を押し進めていったことも重要だと思われます.これが現在の化学療法のはじまりであることは周知の通りです.
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