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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科14巻7号

1986年06月発行

雑誌目次

遠きにありて思うこと

著者: 六川二郎

ページ範囲:P.829 - P.829

 沖繩へ赴任してから早くも5年が過ぎた.医学の研究・教育を自らの胎内で初めて体験することになったこの地において,気になることが多いが,中央から遠隔にあるという地理的条件は決定的である.
 私自身変動する学界におくれまいという焦躁感と同志と交らなければという孤独感を少しでも軽減させるため,さらに今から伸びる医局員・学生・パラメディカルの職員に医学に向けた価値感・情熱・競争心を抱かしめるための糧は何であろうかと模索してきた.

研究

悪性神経膠腫におけるGFAP染色性とその臨床病態

著者: 田鹿妙子 ,   久保長生 ,   田鹿安彦 ,   遠山隆 ,   氷室博 ,   井上憲夫 ,   坂入光彦 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.831 - P.835

I.はじめに
 glial fibrillary acidic protein(GFAP)はastrogliaに特有のglia filamentの主要成分といわれ,astrocytomaの腫瘍分化度とGFAPの染色性はよく対応するとの諸家の報告がある.
 今回,著者らは,組織学的悪性度およびGFAP染色性と臨床像との相関を検索したので報告する.

大後頭孔,上部頸椎良性腫瘍の画像診断

著者: 西浦巌 ,   小山素麿 ,   田中公人 ,   相井平八郎

ページ範囲:P.837 - P.845

I.はじめに
 頭蓋頸椎移行部から上部頸椎に発生する腫瘍はその部位の解剖学的特徴から臨床症状に乏しい場合が多く,各種の補助診断を駆使しても見落とされることが少なくない.ところがこのレベルには,良性腫瘍が多く発生し,手術的療法により完全な社会復帰を果たしうる場合も少なくない.
 1980年以来,5年間にわれわれが経験した脊髄,脊椎腫瘍80余例のうち上部頸椎良性腫瘍は12例であった.脊髄腫瘍に対する診断はCT器械の進歩により,より正確になされるようになったが,このレベルの神経放射線学的所見を総合的に検討した報告は少ない6,17,23)

脳血管攣縮に対する塩酸パパベリンの脳槽内投与の効果

著者: 瀬川弘 ,   斎藤勇 ,   岡田崇 ,   永山一郎 ,   喜多村一幸 ,   高倉公朋 ,   佐野圭司

ページ範囲:P.847 - P.854

I.まえがき
 くも膜下出血後の脳血管攣縮に対してさまざまな治療法が試みられているが,臨床的にみられた血管攣縮そのものを,薬剤により血管撮影上明らかに寛解させたという報告は散発的にみられるものの,まとまったものはない2,8,17)
 塩酸パパベリンは古くから用いられている鎮痙剤で,直接平滑筋に作用して脳血管に対しても強力な拡張作用があることが知られている6).実験的に誘発された脳血管攣縮に効果があったという報告がみられ,動注では効果は一過性であるのに対して9,13),局所投与では比較的長時間持続するという9,14).しかし,臨床例での効果に関する報告はほとんどみられない.

症例

Gangliogliomaの1小児例

著者: 岡本右滋 ,   林隆士 ,   原田克彦 ,   正島和人 ,   宇都宮英綱 ,   前原史明 ,   山本正士

ページ範囲:P.857 - P.863

I.はじめに
 中枢神経系に生ずるgangliogliomaは極めて稀な腫瘍である.最近われわれは,7歳の男子で左頭頂葉皮質下に生じたgangliogliomaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

Conloined lumbosacral nerve roots— Metrizamide myelographyおよびMetrizamide CTによる画像診断

著者: 京嶌和光 ,   西浦巌 ,   小山素麿

ページ範囲:P.865 - P.871

I.はじめに
 腰仙部神経根奇形には種々のものがあるが1-6),なかでも隣接した2本の神経根が硬膜嚢の同一部位より起始する奇形,すなわち"conjoined roots"が最もよく知られている4,7-11).この奇形は,それ自体では無症状であるが,椎間板ヘルニアやlateral recessus stenosis8,13)で発症した場合には,同時に複数の神経根症状,いわゆる"biradicular syndrome"を呈するため,責任部位の同定が難しくなり,術前これを見過ごすと,不要な椎間板の切除を行ったり,神経根を損傷する危険性がある.したがって腰仙部の根性痛の診断や手術に際し,この奇形の存在を常に念頭に置かねばならない.
 脊髄撮影に油性造影剤を用いていた時代では,その術前診断は極めて困難であったが,水溶性造影剤(metri—zamide)の登場により12)今日では比較的正確に診断できるようになり,これを扱った欧米の文献8-11)が散見されるようになった.そこで,この奇形に対する注意を喚起する目的も含め,われわれの経験した典型例を提示し,診断上の注意点につき若干の考察を加える.

一側総頸,内頸および外頸動脈本幹の欠損症に伴った多発脳動脈瘤の1例

著者: 国塩勝三 ,   角南典生 ,   山本祐司 ,   浅利正二

ページ範囲:P.873 - P.879

I.はじめに
 内頸動脈欠損症の報告は比較的稀で,これに脳動脈瘤が合併したのは文献上17例の報告1,2,4-6,8,10-12,15-18,20,21)をみるのみである.最近われわれはくも膜下出血にて発症し,多発性脳動脈瘤を合併した一側内頸動脈欠損症で,同側の総頸動脈および外頸動脈本幹をも欠損した症例を経験した.このような例は,われわれの渉猟したかぎり1例も報告されておらず,興味ある症例として文献的考察を加えて報告する.

Large cerebral aneurysm術後に発生したTraurnatic aneurysmの1治験例

著者: 林明宗 ,   小田正治 ,   関野典美 ,   藤津和彦

ページ範囲:P.881 - P.885

I.はじめに
 巨大な脳動脈瘤の外科的治療に際しては,さまざまな技術的困難が伴っている11,13,14).今回われわれは,azygosanterior cerebral artery7)に発生したlarge aneurysmのクリッピング手術後に,traumatic aneurysmの発生を認め,これを治療する機会を得たので,若干の考察を加えて報告する.

頸静脈孔神経鞘腫に対する手術アプローチの工夫—術中頭部回転を利用したCombined suboccipital and infralabyrinthine approach

著者: 山滝昭 ,   藤津和彦 ,   藤井聡 ,   持松泰彦 ,   桑原武夫

ページ範囲:P.887 - P.890

I.はじめに
 頸静脈孔神経鞘腫は比較的稀な腫瘍であるが,頭蓋内に発育する場合には,聴神経鞘腫と同様にsuboccipitalapproachで摘出可能である.しかし,ときに頸静脈孔を拡大し,腫瘍の大部分が孔内に存在している場合がある.今回われわれは,嗄声を主訴とした左頸静脈孔神経鞘腫で,腫瘍の大部分が孔内を占拠し,その一部分が頭蓋内外に進展していた1症例を経験した.これに対して,手術手技を工夫し,全摘することができた.そこで,この症例を呈示し,頸静脈孔腫瘍に対する手術アプローチにつき検討を加え報告する.

脳内海綿状血管腫の1家系例

著者: 中原成浩 ,   尾上尚志 ,   神田龍一 ,   関野宏明 ,   福永真治

ページ範囲:P.893 - P.898

I.はじめに
 脳内海綿状血管腫は比較的稀な疾患と考えられていたが,CT scanにて診断可能なことからその報告例も徐々に増加し2,7,16)必ずしも稀な疾患とは考えられなくなった.しかし,その家族内発生については数例の報告を見るにすぎない4,5,9,12,14,18)
 今回われわれは,親子に発生した脳内海綿状血管腫の症例を経験したので呈示し,文献的考察を加え報告する.

肺動静脈瘻を合併した脳動静脈瘻の1手術例—Hereditary hemorrhagic telangiectasiaとの関連について

著者: 中尾哲 ,   福光太郎 ,   山本豊城 ,   坂本廣子

ページ範囲:P.901 - P.906

I.はじめに
 脳動静脈奇形,脳血管腫などの先天性脳血管病変において,他臓器に血管異常を合併することは稀である.今回われわれは,右頭頂葉脳動静脈瘻の患者で,肺動静脈瘻を合併した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

脊髄空洞症の4例その発生病理と治療法について—その発生病理と治療法について

著者: 福島武雄 ,   吉永真也 ,   松田年浩 ,   朝長正道 ,   高橋昭喜 ,   種田二郎 ,   永松啓爾

ページ範囲:P.909 - P.916

I.はじめに
 CT scanの普及により脊髄空洞症の診断は比較的容易となったが,その発生病理,病態については未解決の部分も多く,その治療法も確立されたものはない.著者らは,各々異なる発生機序と考えられる4例の脊髄空洞症を経験した.これらの症例を基にし,その発生病理,治療法について検討を加える.

人工塞栓術中,腫瘍内およびくも膜下出血をきたしたのう胞性髄膜腫の1例

著者: 正島和人 ,   林隆士 ,   宇都宮英綱 ,   森高一彦 ,   本田英一郎 ,   東原英之

ページ範囲:P.919 - P.924

I.はじめに
 のう胞性髄膜腫の発生頻度は髄膜腫の1.2-4.2%程度であるといわれ,稀とされている4,22).また,髄膜腫由来の腫瘍性頭蓋内出血は文献上稀である1,9,11,14,21)
 われわれは腫瘍摘出術前の処置として行った人工塞栓術中,腫瘍内およびくも膜下に出血をきたしたのう胞性髄膜腫の1例を経験したので,その出血の発生機序について,考察を加え報告する.

頭蓋内悪性Germ cell tumorに対するPVB療法と放射線照射の同時併用について

著者: 平孝臣 ,   別府俊男 ,   松森邦昭 ,   久保長生

ページ範囲:P.927 - P.933

はじめに
 embryonal carcinomaやyolk sac tumorに代表される頭蓋内悪性germ cell tumorは,通常のgerminomaと異なり,放射線治療にある程度は反応するものの,再発は必死であり,平均生存期間は1年から2年と極めて予後不良である21).しかし近年,泌尿生殖器系の悪性germ cell tumorに対するcisplatin, vinblastin, bleomycinの三者併用療法(PVB療法)8,13)が頭蓋内原発の悪性germ cell tumorにも導入され,効果をあげている10,24,26).しかし,この治療を行った症例が増加するにつれ,PVB療法後の再発例でPVB療法に反応しない症例もみられるようになった15,19).またcisplatinは髄液移行が悪いため11,28),germ cell tumorにしばしばみられる髄液播種に対する効果は疑問である.このようにPVB療法は,頭蓋内germ cell tumorに有効な治療法とは考えられるが,いまなお十分に検討する余地があると思われる.
 一方,PVB療法の主剤であるcisplatinには放射線増感作用があり4-7,23),この効果を期待したcisplatin投与下での放射線治療の基礎的の17)および臨床研究9,29)の報告もなされている.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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