icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科14巻8号

1986年07月発行

雑誌目次

宿酔放談

著者: 貫井英明

ページ範囲:P.941 - P.941

 朝起きて身の縮む思いがすることが今でも稀にある.前夜の言動をきれぎれにしか憶えていない時が最もつらい.宿酔(ふつかよい)は肉体的苦痛よりも精神的苦痛のほうがすさまじい.
 以前に比べれば精神的苦痛を伴う宿酔は少なくなり,肉体的苦痛のみの場合が圧倒的に多くなったが,やはり宿酔はつらいものである上もう深酒はすまいと思っても,仲間と楽しく呑み出すと止まらないのが酒呑の悪いところである.

解剖を中心とした脳神経手術手技

Surgery of facial nerve paralysis

著者:

ページ範囲:P.943 - P.955

Introduction
 The present standard of surgical treatment of thefacial nerve would not be conceivable without thepioneer work of Bunnell(1927),Martin(1931, 1936),Ballance and Duel(1932),Cawthorne(1951, 1963,1965),Maxwell(1951, 1954),Kettel(1957, 1959),Lathrop(1953, 1956, 1962),Conley(1955, 1961),Clerc and Batisse(1954),Don(1958),Jongkees(1958, 1961),Wullstein(1958),Miehlke(1960.1961),House(1961, 1963)and Fisch(1969, 1970)among others.

研究

ウイリス動脈輪閉塞症における発症年齢と転帰

著者: 森竹浩三 ,   半田肇 ,   米川泰弘 ,   滝和郎 ,   奥野武彦

ページ範囲:P.957 - P.963

I.はじめに
 ウイリス動脈輪閉塞症,いわゆる"モヤモヤ病"の病因・病態に関してはこれまで不明な点が多く,治療法についても意見が分かれていた.しかし本症が厚生省特定疾患調査研究班の課題としてとり上げられ,多施設共同の形で研究が進むにつれ,その病像は次第に明確なものとなり,治療法も確立されつつある1,7,3,12).本稿では上記共同研究と併行して行った自験例の長期追跡調査で,発症年齢の機能的社会復帰への影響を調べたところ,両者間に密接な関係を認めたので報告する.

悪性脳腫瘍に対する温熱療法の基礎的研究—加温装置の開発および正常イヌ脳に対する加温効果の検討

著者: 松本健五 ,   ,   ,  

ページ範囲:P.965 - P.972

I.はじめに
 現在,悪性腫瘍に対する新しい治療法として,温熱療法(hyperthermia)が再び注目されている.温熱療法は,古くて新しい治療といわれている.その抗腫瘍効果は古くから知られていたが,主として経験的なものであった2, 3).しかし,最近10年間に集中的に蓄積されたinvitro,in vivoの実験結果から,温熱の抗腫瘍効果,さらに放射線あるいは化学療法との併用効果が明らかとなった5, 6, 9, 21).また臨床的には皮ふ癌,頭頸部癌などの表在性腫瘍に試みられ,良好な成績をあげている11, 13).しかし,深部唾瘍に対しては,いまだその加温および温度測定法がその困難性から確立されるに至っておらず,その技術向上に今後の発展がかかっているといえる21).そこでわれわれは,悪性脳腫瘍に対する補助療法の1つとして,臨床にこの温熱療法を応用する目的で,今回Interstitial Microwave Hyperthermia Systemを開発し,その脳加温能力,温熱の正常脳組織に及ぼす影響,さらに臨床応用の可能性を検討した.

結節性硬化症に伴うSubependymal giant cell tumorの免疫組織学的研究

著者: 高安正和 ,   渋谷正人 ,   金森雅彦 ,   加藤恭三 ,   吉田純 ,   景山直樹

ページ範囲:P.975 - P.979

I.はじめに
 結節性硬化症に伴う脳室上衣下腫瘍は,組織学的にはsubependyrnal giant cell astrocytomaと呼ばれ,極めて特徴的な巨細胞がみられる.この巨細胞は,光顕上では一見,神経細胞様のものや,gemistocyte様のもの,紡錘形のものが存在することから,その発生起源に関し,従来より神経細胞由来説とグリア細胞由来説が存在した.近年,主に電顕所見などからグリア細胞説が大勢を占めてきたが,Stefanssonら(198023),198124))が3例の本腫瘍に対し免疫組織学的方法で検討を加え,神経細胞説を支持したことから,最近再び議論が活発となった.
 われわれは結節性硬化症に伴う4例のsubependymalgiant cell astrocytomaの手術標本について,neuronspecific enolase(NSE),glial fibrillary acidic protein(GFAP),S−100蛋白の局在を酵素抗体法により観察し得たので報告し,その細胞起源についても考察を加えたい.

CT上髄腔内播種と診断される悪性脳腫瘍の予後と病態

著者: 加藤恭三 ,   吉田純 ,   景山直樹

ページ範囲:P.981 - P.987

I.はじめに
 悪性腫腫瘍のなかでもmedulloblastomaやgermi—nomaは髄腔内播種をきたしやすい腫瘍とされている.播種後の予後は一般に不良で,その診断および治療は現在でも重要な課題となっている7, 10).これに対し,ma—lignant gliomaもCT上,脳室壁あるいは脳底槽にそって増強効果を伴う線状陰影が出現し,腫瘍の髄腔内播種が疑われると,その後の予後は極めて不良なことは日常よく経験するところである.今回われわれはこれら,CT上髄腔内播種と診断されたmalignant gliomaをmedulloblastomaの髄腔内播種と比較検討したので報告する.

症例

脊髄悪性リンパ腫—2例報告と文献的考察

著者: 高橋一則 ,   西浦巌 ,   小山素麿 ,   相井平八郎

ページ範囲:P.989 - P.994

I.はじめに
 脊髄の悪性リンパ腫は欧米ではありふれた硬膜外腫瘍の1つで,転移性癌についで多く,全脊髄腫瘍の10%前後を占めるといわれる1, 10).しかし本邦では稀な疾患とされ,原発性の脊髄悪性リンパ腫に限ると今までに数編の報告が見られるのみである18)
 最近,われわれは原発性の脊髄悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)と考えられた2症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.また,この疾患に特有なCT所見を検討した論文は,われわれの調べ得たかぎり見当らない.そこで,この2症例で得られた所見についても詳細に報告する.

Holocord cystを伴う脊髄終糸のMyxopapillary ependymomaの1例

著者: 田中秀樹 ,   清水弘之 ,   石島武一 ,   中村安秀

ページ範囲:P.997 - P.1003

I.はじめに
 脊髄全長にわたり実質内発育を示す腫瘍は特にholo—cord tumorと呼ばれ,大部分は小児期に遭遇する疾患である.holocord tumorは,その発育が緩慢で,特異な神経症状を呈することがあり,脳性小児麻痺や神経症などと誤診される場合が少なくない.本症は,その頻度は比較的稀とはいえ,診断・治療においてさまざまな問題点を有しており,小児脊髄疾患の診断において常に念頭においておくべきものの1つと考えられる.
 われわれは,脊髄終糸に発生したmyxopapillary epen—dymomaで,脊髄円錐部より延髄にまで達する嚢腫を形成している症例を経験したが,嚢腫の内減圧,腫瘍実質部の全摘出により臨床症状の著しい改善をもたらすことができた.本症例および過去の報告例をもとにholo—cord tumorの臨床症状の特徴,診断・治療上の問題点につきまとめたので,若干の考察を加えて報告する.

後頭蓋窩陥没骨折に急性中心性頸髄損傷を合併した1症例

著者: 本崎孝彦 ,   大塚信一 ,   佐藤慎一 ,   中尾哲 ,   伴貞彦 ,   福光太郎 ,   山本豊城

ページ範囲:P.1005 - P.1008

 I.はじめに 頭部外傷の際に,後頭骨から横静脈洞をわたり後頭蓋窩におよぶ線状骨折はよく見うけられるが,後頭蓋窩のみに限局した陥没骨折は,その周囲には豊富で強靱な筋肉層が存在していることなどにより,極めて稀なものと思われ,著者らの渉猟しえた範囲では,これまでわずかに今永ら3)の報告の中に1例をみるにすぎない.
 われわれは最近,後頭蓋窩に限局した陥没骨折により,脳幹部,小脳圧追症状および下位脳神経障害を呈し,また同時に頸椎の過伸展による"急性中心性頸髄損傷症候群"を合併した症例を経験する機会を得たので,その発生機序などにつき,考察を加えて報告する.

外頸動脈が内頸動脈に連続移行した内頸動脈起始部欠損症の1例

著者: 西沢茂 ,   山本清二 ,   杉浦康仁 ,   植村研一

ページ範囲:P.1011 - P.1015

I.はじめに
 内頸動脈欠損症は,1787年Tode10)により剖検例が最初に発表され,1929年Dandyにより血管造影を行った症例が初めて報告された.以来,多くの報告例がみられるようになり,その発生学,血管造影所見について詳しく論じられている.内頸動脈欠損症の脳動脈血行路は,さまざまな型をとりうるものであるが,今回われわれは文献上極めて稀な動脈血行路を持った内頸動脈欠損症の1例を経験したので,発生学的観点から考察を加え報告する.

術後緊張性気脳症の3例

著者: 姉川繁敬 ,   重森稔 ,   吉田昌史 ,   古城信人 ,   鳥越隆一郎 ,   白水徹 ,   倉本進賢

ページ範囲:P.1017 - P.1022

I.はじめに
 緊張性気脳症は頭蓋内の硬膜外,くも膜下,脳室内あるいは脳実質内に空気ないしはガスが貯留し,頭蓋内圧上昇をきたすものをいう.
 著者らは,現在までに稀な原因により発生した3例の術後緊張性気脳症を経験したが,これらの発生には種々の人為的な操作による髄液圧の低下が大きな役割を果たしていると考えられた.そこで症例を呈示し,若干の文献的考察を加え報告する.

椎骨動脈・脊髄動脈分枝分岐部動脈瘤の1症例

著者: 高橋康 ,   嘉山孝正 ,   桜井芳明 ,   小川彰

ページ範囲:P.1025 - P.1029

I.はじめに
 椎骨脳底動脈領域の動脈瘤の発生頻度は脳動脈瘤の5%前後と少ないものであるが9, 14),このうち椎骨動脈瘤は,椎骨動脈後下小脳動脈分岐部に発生するものが大部分であり10, 11, 19),後下小脳動脈分岐部以外の椎骨動脈瘤の発生は稀である.
 われわれは,後下小脳動脈分岐部より近位側に発生した椎骨動脈と脊髄枝との分岐部の動脈瘤を経験し治癒せしめたので,臨床経過,検査所見を報告するとともに若干の考察を述べる.

Central pontine myelinolysisの1例

著者: 下田雅美 ,   松岡隆則 ,   加藤哲夫 ,   上田守三 ,   山本勇夫 ,   津金隆一 ,   佐藤修

ページ範囲:P.1031 - P.1037

I.はじめに
 central pontine myelinolysis(CPM)は,1959年Adamsら1)が発表して以来,橋底部にみられる暁界明瞭な左右対称性の,中心性脱髄で,神経細胞,軸索は保たれ,血管異常,炎症などの所見を欠く特異な病変とされている.従来,その成因として慢性アルコール中毒,栄養障害,肝障害などが重視されていたが,最近低Na血症,特にその急速補正によるものが注目されている.また,その診断は剖検によることが多かったが,ComputerizedTomography(CT),聴性脳幹反応(BSAR)により生前に診断された報告も散見される.今回,われわれは臨床経過,CT,BSARによってCPMと診断し得た症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

Raimondi腹側管の再度離断例—断端破面の走査電顕所見について

著者: 坂本哲也 ,   小島寿志 ,   二渡克弥 ,   古和田正悦

ページ範囲:P.1039 - P.1042

I.はじめに
 本来,Raimondi腹側管は管の屈曲による短絡術後の合併症を防止するために考案されたものであるが,この腹側管による腹腟内臓器穿通例および離断例が報告されている1,4,5,7).最近,Raimondi腹側管の離断を再度繰り返した症例を経験し,その離断スプリングワイヤーの断端破面を走査電顕で2回にわたり観察する機会があったので,離断の機序について若干の考察を行い報告する.

新生児脳内出血の2例

著者: 原田克彦 ,   林隆士 ,   正島和人 ,   岡本右滋 ,   宇都宮英綱 ,   前原史明 ,   橋本武夫

ページ範囲:P.1045 - P.1049

I.はじめに
 新生児頭蓋内出血の中で脳内出血が占める割合は過去の報告で2.5-19.5%2,7-9)であり,それを成熟児のみに限定すると7.2-18%2,3,8,9)である.成熟児では硬膜下出血が多く,大半は天幕や大脳鎌の裂傷に基づくものと考えられている2,4,8,9,15).ところが脳内出血に関しては,その発生頻度が少ないためか,多くは考察はされてない1,12,15)
 われわれは最近,新生児脳内出血の成熟児2例を経験したので,その発生機序を中心に報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?