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モヤモヤ病に対する外科的治療
著者: 石井鐐二1
所属機関: 1川崎医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.1059 - P.1068
文献購入ページに移動モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)は,疫学,循環生理,臨床など種々の角度から検討されてきたが,脳底部あるいはその他の部の異常血管網(モヤモヤ血管)は側副血行路であり,両側内頸動脈末端部を中心とした進行性の狭窄こそが病変の発端であり,本質であるとする考え与が一般的である,しかし,その原因の究明は未解決のままであり,したがって本症に対する根治的な治療はなく,脳虚血発作,頭蓋内出血,けいれん発作などに対する対症的な治療法にたよらざるを得ない状態にあった.最近になり,脳虚血症状に対する血流増加と側副血行路であるモヤモヤ血管よりの出血防止を目的として種種の外科的治療が多くの施設で試みられ,その有効性についての報告が散見されるようになった.1981年,第10回脳卒中の外科研究会(会長:故川淵純一教授)では「モヤモヤ病の病態とその対策」を主題として60題にものぼる演題が出され,本症の治療への関心の高さが示された.また,3年後の1984年には第12回日本小児神経外科学研究会(会長:高久晃教授)において「小児moyamoya病の外科治療」と題するシンポジウムが行われ,白熱した議論がたたかわされた.モヤモヤ病に対する外科的治療の歴史はまだ10年余りと浅く,その手術療法も術者によりさまざまである.また,できるだけ広範囲に血行再建を図ることを目的に手術の術式をいくつか組み合わせているのが実情で,一部では混乱もあるように思われる.
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