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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科15巻10号

1987年10月発行

雑誌目次

一つの提案

著者: 田渕和雄

ページ範囲:P.1045 - P.1045

 つい先日もウインブルドンテニスや全英オープンゴルフ競技の実況中継テレビ放送があるなど,海外でのどんな出来事もいながらにして瞬時に見聞でき,また,テレビ国際シンポジウムが企画されれば,各国間の懸案の政治とか経済問題などが,茶の間のテレビに浮き彫りにされるという便利な時代となった.
 いま私が住んでいるこの地方都市では町外れに,広い駐車場を持った場外馬券売り場がある.聞くところによると,県外での競馬の実況中継を無線,電話回線それに光ケーブルを使って4畳程の大きさのスクリーンに映しだしている由である.一方,数年前からNTTにより,テレビ会議サービスが開始され,次第に普及しつつあるようである.このテレビ会議システムを利用している企業では,全国の各支店から会議に出席する目的のためだけに,社員がわざわざ本社へ出張することはなくなり,時間と経費の節約が計られている.

解剖を中心とした脳神経手術手技

三叉神経痛に対する後頭蓋窩神経血管減圧術—特にlnfratentorial lateral supracerebellar approachについて

著者: 松島俊夫 ,   福井仁士 ,   山下正憲 ,   L.Rhoton Jr.

ページ範囲:P.1047 - P.1054

I.はじめに
 三叉神経痛に対する後頭蓋窩神経血管減圧術は,Jannettal0-12)によるマイクロサージャリーの導入以後,すぐれた外科治療法として発展・普及してきた.この手術手技についてはJannetta1O,12)の記載をはじめいくつかの報告4, 5, 13, 21)がすでにあるが,手術をより安全に行い,術後合併症を起こさないために解剖学的理解が大切と考えるので,ポイントとなる局所解剖を中心にわれわれが日常行っている手術手技を述べることとする.

研究

神経原性ストレス胃潰瘍について—ラットにおける実験的研究

著者: 坂田一記 ,   野々村修 ,   伊藤善朗 ,   土屋十次 ,   大橋広文

ページ範囲:P.1057 - P.1063

I.はじめに
 くも膜下出血(SAH)症例,特に破裂脳動脈瘤直達手術後にストレス潰瘍性病変が往々に合併し1,28,33,35),予後を悪化させる事例があることから,その発来機序解明と対策への示唆を得るため,筆者らはSAHが病因的に関連したストレス胃潰瘍ラットモデルを考案し検討を加えてきた13,31,36,37),その一環として,本研究で筆者らはSAHによる視床下部自律神経中枢の,ストレスに対する過反応性を含む,胃に表現される機能障害を解析し,そしてまた視床下部に病変を有する生体の胃に表現される対ストレス反応性を解明するため,定位的視床下部核破壊ラットモデルとSAHラットモデルとを併用して,これらに軽度拘束水浸ストレスを負荷した場合の胃機能変化と病変形式について検討を加えた.

慢性硬膜下血腫術後再発例についての原因分析

著者: 吉井久美子 ,   関要次郎 ,   相羽正

ページ範囲:P.1065 - P.1071

I.はじめに
 慢性硬膜下血腫(以下CSH)の治療法については,1932年Flemingらにより穿頭血腫洗浄術が行われて以来,本法が初回手術法として一般化している.しかしながら,血腫再貯留による再発例を経験することが稀ではなく,その原因・治療法などに関し問題を残している.今回われわれは,術後再発例についてその原因分析を試みた.

症例

異なる組織像を示したMulticentric gliomaの1剖検例

著者: 中瀬裕之 ,   久永学 ,   岩永秀昭

ページ範囲:P.1073 - P.1077

I.はじめに
 多発性病巣をきたす疾患として,多発性神経膠腫は鑑別診断として忘れてはならない疾患であるが,実際には転移性脳腫瘍として治療され,剖検にて診断されることが多い2,6,14).今回われわれは,CTで多発性病巣を認め,手術および剖検にて組織の異なるmulticentricgliomaと確認し得た1症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

脊髄硬膜外膿瘍—5症例の経験から

著者: 辻直樹 ,   五十嵐正至 ,   小山素麿

ページ範囲:P.1079 - P.1085

I.はじめに
 脊髄硬膜外膿瘍は,すでに16世紀後半Morgagniによって記載されたが21),初めて手術を行ったのはMacewen21)である.欧米では今日まで300余りの報告があるが,比較的稀な疾患で,Baker1)によれば入院患者10,000人に対して0.1-1.2人の頻度といわれている.しかし,わが国での報告は非常に稀で,われわれが調べたかぎり8例にすぎない6,7,14,15,18)
 脊髄硬膜外膿瘍は背部痛で発症し,その後,神経根圧迫あるいは脊髄圧迫症状を示し,診断が遅れると,機能的予後が悪く,早期診断治療が強調されている疾患の1であるが4,9),実際には今日でも他の疾患と誤診されている例が少なくない5,8,13,17,20,22)

網膜芽細胞腫の放射線治療後に発生した中頭蓋窩腫瘍の2例

著者: 渋井壮一郎 ,   野村和弘 ,   松岡浩司 ,   金子明博 ,   中島孝

ページ範囲:P.1087 - P.1091

I.はじめに
 網膜芽細胞腫は二次発癌の多発する疾患のひとつとして知られている.Abramsonら1)によれば,700例余りの網膜芽細胞腫の患者のなかから90例以上の二次腫瘍が発生し,しかもその大半が放射線照射部位に一致して出現しているという.この事実は網膜芽細胞腫の発癌遺伝子の問題,および放射線による発癌作用の問題の両者と深い関係があり,極めて興味深い.
 今回,われわれは網膜芽細胞腫の放射線照射部位に出現した中頭蓋窩腫瘍を2例経験したので,ここに報告する.なお,症例1は金子ら6)が既に報告したものと同一例である.

椎骨脳底動脈合流部の巨大,紡錘形および解離性動脈瘤—特に症候と非根治手術の予後

著者: 長尾省吾 ,   衣笠和孜 ,   武家尾拓司 ,   西本詮 ,   原田泰弘

ページ範囲:P.1093 - P.1100

I.はじめに
 椎骨動脈—後下小脳動脈(VA-PICA)分岐部や,椎骨動脈—脳底動脈合流部(VA-B junction)には巨大あるいは紡錘形,ときには,解離性動脈瘤が比較的よく発生するが17),解剖学的位置,手術手技の困難さ,瘤の複雑な病態などから根治手術不能となる例がある.今回われわれは種々の事情で手術を施行しなかったり,流入動脈の閉塞を行ったこれら動脈瘤5症例を経験したが,その症候,手術を考慮する上で問題となる動脈瘤の病態,予後などについて検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Parietal encephaloceleを伴ったHoloprosencephalyの1例

著者: 城山雄二郎 ,   三谷哲美

ページ範囲:P.1103 - P.1108

I.はじめに
 胎生期3-5週という初期における中枢神経系の障害により,prosencephalonが分化,発達せず,左右大脳半球分離不全,olfactory bulb, olfactory tractの欠如などを生じ,しばしば顔面正中の奇形を合併するholo—prosencephalyは中枢神経系先天性異常のうちでも比較的稀で,重篤な疾患の1つである2,8).本疾患は,1882年にKundrat6)がarhinencephalyと命名後,1963年にDeMyer and Zeman3)がdiencephalonをも含めたpro—sencephalonの分化,発達の障害に注目しholopro—sencephalyとして発表し.以後この名称が一般的に使用されている.今回,われわれは,のholopro—sencephalyにencephaloceleを合併し,さらに興味深い脳室形態を示した1例を経験したので,その幾つかの問題点をふまえて報告する.

回虫抗体が陽性を示した脳内肉芽腫の1幼児例

著者: 平孝臣 ,   別府俊男 ,   松森邦昭 ,   久保長生

ページ範囲:P.1111 - P.1114

I.はじめに
 脳内にみられる肉芽腫の多くは結核,梅毒,真菌あるいは寄生虫などの慢性炎症によりひき起こされることが知られている1)が,最近ではこれらの感染症の減少により稀なものとなっている.今回筆者らは痙攣で発症し,術前脳腫瘍の診断で摘出手術を行った右前頭葉内の肉芽腫の1幼児例を経験した.術後の検索により,糞便中に寄生虫卵が検出されないにもかかわらず,血清中にヒト回虫に対する抗体が検出された.患児の生活歴にネコとの濃厚な接触が認められたため,本肉芽腫はtoxocaraの幼虫移行症larva migrans5,8,10)によることが示唆された.toxocarasisはイヌやネコの回虫卵を経口摂取することにより幼虫larvaが成虫になることなく体内にとどまることで発症するもので,visceral typeとoculartypeとに大別される14).本症例は好酸球症がみられないことなどocular toxocariasisと類似した症候を示した.
 toxocariasisは世界中に広く分布しており幼児は常に経口感染の可能性がある8, 10).本症による脳障害の報告11)もあり,念頭においておくべき疾患であると思われるので報告する.

著明な頭蓋外進展を示した三叉神経鞘腫の1例

著者: 伏見進 ,   三浦俊一 ,   須田良孝 ,   藤井聡 ,   古利田正悦

ページ範囲:P.1117 - P.1122

I.はじめに
 近年,CTの解像力の向上や診断技術の進歩から,三叉神経腫瘍は比較的早期に診断されるようになったが,一方では巨大に発育して著明な頭蓋外進展を示した症例も稀ながら報告されており,現在まで文献上で7例1, 5-7, 9)の報告がある.本邦では山田ら9)が頭蓋底を破壊して側頭下窩に達した1例を報告している.
 最近,15年来の顔面の知覚異常を訴える症例で,主として頭蓋外に著明に進展した三叉神経鞘腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胸腔および脊椎管にDumbbellに進展した胸椎血管腫の1例

著者: 本田英一郎 ,   林隆士 ,   徳永孝行 ,   本田直美 ,   宇都宮英綱 ,   佐藤能啓 ,   正島和人

ページ範囲:P.1125 - P.1130

I.はじめに
 脊椎の血管腫は胸部X線写真(胸写)や胸腰椎単純写でincidentalに発見されることも少なくない.また剖検例の7-12%20)に認められ,無症状に経過していた血管腫がほとんどである.しかし脊髄症状を発現して直接的に手術が行われた症例報告は本邦では整形外科領域に散見される程度で,脳神経外科領域でも極めて少ない.この理由は椎体血管腫は極めて易出血性であり,術中止血のcontrolが困難なためである.もう一つは近年embolization3, 13)やradiation8, 27)による有効な治療結果が報告されているためでもある.
 今回われわれは胸椎に発生し,大部分の血管腫が胸腔と脊椎管に進展した症例を経験した.この血管腫に対し,脊椎管内のみの摘出に終ったが,2年間のfollow—upでも症状は完全に消失し,再発や出血はなく良好な経過をたどり,しかも胸写にて軽度ながらも胸腔内hemangiomaの縮小をみている.

中頭蓋窩に進展し,特徴あるCT所見を示した顔面神経鞘腫の1例

著者: 堀本長治 ,   馬場啓至 ,   河野輝昭 ,   柴田尚武 ,   森和夫 ,   中島成人 ,   隈上秀伯

ページ範囲:P.1133 - P.1138

I.はじめに
 頭蓋内神経鞘腫は全脳腫瘍の約8%を占めるが,ほとんどが聴神経から生じ26),顔面神経鞘腫は稀である5,812,14,15,20).1930年Schmid22)によって報告されて以来,主として耳鼻科領域において150例以上の報告がある17).また症例の多くは側頭骨内に限局して存在し,VII・VIII脳神経症状を呈するが,ときには頭蓋内へ進展する場合があり5,7,8,16,17,20,27),他の脳腫瘍との鑑別が問題となる17).われわれは顔面神経膝部から発生し中頭蓋窩へ進展した1例を経験し,また特徴的なCT所見を認めたので報告する.

頸椎骨折に合併した外傷性両側椎骨動脈閉塞の1症例

著者: 奥山徹 ,   南田善弘 ,   佐々木敏之 ,   堀川大 ,   泉山修 ,   水口守 ,   東海林哲郎 ,   金子正光 ,   新谷俊幸 ,   端和夫

ページ範囲:P.1141 - P.1145

I.はじめに
 頸部の血管外傷のうちで椎骨動脈損傷は少ないながらも存在する.損傷部位は,その特殊な解剖学的走行と頸部の伸展,屈曲や回転といった運動に関連して主に第5,6頸椎やatlanto-axial joint,atlanto-occipital jointで起こり,muralhemorrhageやintimal disruptionが生ずることが知られている12).Rich andSpencer10)は統計的に7048例の血管外傷中15例で椎骨動脈損傷があることを,また,Flintら4)は1957-73年に経験した全頸部血管外傷中,約3%の7例に椎骨動脈外傷が見られたことを報告している.
 われわれは,第6頸椎の圧迫骨折に合併した外傷性両側椎骨動脈閉塞の症例を経験した.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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