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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科15巻10号

1987年10月発行

文献概要

症例

回虫抗体が陽性を示した脳内肉芽腫の1幼児例

著者: 平孝臣12 別府俊男1 松森邦昭1 久保長生2

所属機関: 1国立相模原病院脳神経外科 2東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科

ページ範囲:P.1111 - P.1114

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I.はじめに
 脳内にみられる肉芽腫の多くは結核,梅毒,真菌あるいは寄生虫などの慢性炎症によりひき起こされることが知られている1)が,最近ではこれらの感染症の減少により稀なものとなっている.今回筆者らは痙攣で発症し,術前脳腫瘍の診断で摘出手術を行った右前頭葉内の肉芽腫の1幼児例を経験した.術後の検索により,糞便中に寄生虫卵が検出されないにもかかわらず,血清中にヒト回虫に対する抗体が検出された.患児の生活歴にネコとの濃厚な接触が認められたため,本肉芽腫はtoxocaraの幼虫移行症larva migrans5,8,10)によることが示唆された.toxocarasisはイヌやネコの回虫卵を経口摂取することにより幼虫larvaが成虫になることなく体内にとどまることで発症するもので,visceral typeとoculartypeとに大別される14).本症例は好酸球症がみられないことなどocular toxocariasisと類似した症候を示した.
 toxocariasisは世界中に広く分布しており幼児は常に経口感染の可能性がある8, 10).本症による脳障害の報告11)もあり,念頭においておくべき疾患であると思われるので報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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