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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科15巻11号

1987年11月発行

雑誌目次

評価

著者: 岩渕隆

ページ範囲:P.1153 - P.1154

 人間が人間を評価するというのは,どうも気が重い.出来ることなら避けて通りたい.しかし職務とあらば,逃げる訳にもいかない.例えば期末試験をして,100点満点で採点する.30点以下はしようがないとしても,47点位のは通してやりたいと思ったとする.もしもう一寸ましな先生についていれば60点位は取った学生かも知れない.そうすればこちらにも責任がある.13点を加えれば60点になって合格である.しかし公平を期して全員に13点を加えると,87点以上取った学生が居れば100点を越えて,どうも具合が悪い.最高点を100点以下に押さえて,その間を一定の割合で水増しするにはどうすればよいか,簡単な数学の問題で解くのは易しい.今までは簡便確実な方法として方眼紙に直線グラフを画いて換算表を作って来た.今は大抵の人がパソコンを叩く時代である.しかし意外にも書いてある本がない.探せば良いのかも知れないが大変である.そこで及ばずながらプログラムを作ってみた.BASIC N88であればFig.1-1のようになる.機種によっては四捨五入の命令に%の記号が使えないものもあるというので,そのときはFig.1-2のようにすればよいであろう.そしてRUNさせるとFig.2のように次々聞いて来るので,その時の都合で丸印の数字を打込んでやると,たちどころに換算式と換算表が出て来る.

総説

破裂脳動脈瘤の手術時期に関する国際共同研究における日本の成績

著者: 北村勝俊 ,   ,   ,   佐々木富男 ,   石井昌三 ,   景山直樹 ,   菊池晴彦 ,   佐野圭司 ,   杉田虔一郎 ,   鈴木二郎 ,   西本詮 ,   端和夫 ,   半田肇 ,   水上公宏 ,   安井信之 ,   澤田浩次

ページ範囲:P.1155 - P.1166

I.はじめに
 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の基本的な治療法は,動脈瘤頸部を閉塞して再破裂を防止することにある.この点については今や全く疑問の余地はない.しかしながら,その手術時期については機会あるごとに議論されており,いまだに結論を得ていない.この問題について,厚生省特定疾患脳脊髄血管異常調査研究班(班長:北村勝俊)でも全国的な動向を調査し,日本では早期手術が行われる傾向が比較的大きいこと,早期手術は軽症例では成績がよいが重症例では手術死亡率が高いことが明らかにされたが,なお系統的な研究が強く望まれた.このような状況下で,破裂脳動脈瘤の手術時期に関する国際共同研究が1981年1月より1984年6月にわたって行われ,日本の脳神経外科医も参画し,その連絡調整には著者の一人北村が当たった.共同研究全体の成績はすでにKassellら1-3)により数次にわたり報告されているが,そのなかでの日本脳神経外科医の成績は一部北村4)が第11回日本脳卒中学会総会における会長講演として報告したのみであるので,今回さらに詳細を述べて参考に供したい.

研究

重症頸髄損傷のFollow-up CTミエロ

著者: 岡田慶一 ,   小野田公夫 ,   川島康宏 ,   武藤敦 ,   小林洋一

ページ範囲:P.1169 - P.1173

I.はじめに
 頸髄損傷の診断にCTミエロは,今や必須の検査となったが,われわれは重症頸髄損傷のfollow-up CTミエロを行い,損傷頸髄の変化を観察したので報告する.

非機能性下垂体腺腫における高プロラクチン血症—85例の検討

著者: 斉藤洋一 ,   森信太郎 ,   有田憲生 ,   早川徹 ,   最上平太郎 ,   奥謙 ,   大西利夫 ,   魚住徹

ページ範囲:P.1175 - P.1179

I.はじめに
 下垂体腺腫の中にはプロラクチン(PRL),成長ホルモン(GH),ACTHなどの下垂体ホルモンを分泌し,さまざまな臨床症状を示すものもあれば,α—subunit分泌腺腫も含めて臨床症状を発現しない非機能性下垂体腺腫も存在する.そのような非機能性下垂体腺腫の鞍上部伸展により,下垂体茎または視床下部が圧迫をうけて高PRL血症をきたすことはよく知ら7,11).われわれは経蝶形洞手術を施行した85例の非機能性下垂体腺腫について,それらの患者の病態を解析し,特に血清PRL濃度に注目して検討した.

主幹動脈閉塞症に対する血管吻合術の適応—脳血流量と神経症状からの検討

著者: 瀬川弘 ,   佐野圭司 ,   斉藤勇 ,   森本正 ,   谷口真 ,   北原茂実 ,   高倉公朋

ページ範囲:P.1181 - P.1187

I.はじめに
 脳の主幹動脈の閉塞例に対して,血管吻合術が広く行われてその効果が強調されてきた3,5,14).しかし最近の臨床的なfollow-upを中心としたcooperative studyでは,死亡率と再発に関しては手術の効果に否定的な結果が報告された4).またSTA-MCA血管吻合術の神経症状に対する効果について疑問視する報告もある2,16).したがってわれわれは脳神経外科医として手術適応について,より厳密な検討をする必要に迫られている.
 われわれは今回retrospective studyで内頸動脈と中大脳動脈閉塞症に行ったSTA-MCA吻合術が脳の血行動態に及ぼす影響について,脳血流測定と脳血管撮影により分析した.そしてどういう症例で血流が増加し,神経症状が改善するかを検討し,手術適応について考察した.

くも膜下出血後の脳循環動態—転帰不良例における検討

著者: 山形専 ,   菊池晴彦 ,   伊原郁夫 ,   永田泉 ,   諸岡芳人 ,   鳴尾好人 ,   小泉孝幸 ,   橋本研二 ,   南川順 ,   宮木享

ページ範囲:P.1189 - P.1196

I.はじめに
 くも膜下出血後の脳血流量(CBF)測定の目的はその病態を知ると同時に,いかに早期にCBFの変化をとらえ,これに対しCBFを保つべく必要かつ十分な治療を行っていくことにある.特に重症例においては,CBFの低下がくも膜下出血直後より認められ,その後も脳血管攣縮などによりさらに増強される.このため,CBFを維持するためにいつ積極的な治療を開始し,その後はどの程度の治療を行い,またその治療によるCBFの維持がどれほど可能であるかを知る指標が必要となることだろうと思われる.このような脳循環動態を知るためには,できれば連続的な測定が必要となる.われわれはこれまで脳血流量のモニタリングシステムを開発し,臨床応用を試み,くも膜下出血後の症例に対してもその有用性を報告してきた14-16).このなかで今回は転帰不良となった症例を取り上げ,その脳血流量の経時的変化とともに頭蓋内圧の変化および臨床経過より,これらの症例に対する病態と現時点での治療法の限界について検討する.また同時にくも膜下出血後の脳循環動態,特に脳血管攣縮に関連した脳虚血について考察を加える.

下垂体腺腫に対する経蝶形骨洞法再手術

著者: 橋本信夫 ,   山上達人 ,   小島正行 ,   米川泰弘

ページ範囲:P.1199 - P.1204

I.はじめに
 脳下垂体腺腫に対する経蝶形骨洞法の手術法についてはそのvariationを含め多くのすぐれた著述がなされているが3-5,7,9,12,13),その再手術に関する手術法の詳しい記載は少ない10).再手術は鼻粘膜などの損傷の可能性が高いことと,正常解剖の同定が難しいことなどに加えて,その有効性が低いなどと難しい点が多い11).経蝶形骨洞法再手術の経験のなかから,再手術時の問題点およびそれらの対策などについて検討したので報告する.

症例

TranscervicalおよびTransoral approachにて摘出した斜台—第3頸椎脊索腫の1例

著者: 長尾省吾 ,   篠山英道 ,   鈴木健二 ,   土本正治 ,   柳生康徳 ,   大橋威雄 ,   西本詮

ページ範囲:P.1207 - P.1212

I.はじめに
 頭蓋底正中深部に発生する脊索腫は緩徐に発育するため,症状発現あるいは診断時にはすでに大きく成長していることが多い.腫瘍は周囲の骨,硬膜組織を浸潤破壊して発育し9,17),しかも放射線照射や化学療法に抵抗性であり,ときに血行性6)あるいは髄液を介して転移すること16)も知られている.したがって早い時期に手術によって全摘出するのが最良の方法であるが,腫瘍の発育様式,解剖学的位置,手術手技などの問題からそれは非常に困難である.その治療成績を少しでも向上させるために,この部位の脊索腫に対し種々のアプローチ法が試みられてきた.
 われわれはtranscervical approach(2回)およびtrans—oral approach(1回)で可及的に腫瘍摘出を試みた斜台—第3頸椎脊索腫の1例を経験したので,これらアプローチ法について考察を加えるとともに,MRI診断の有用性についても報告する.

後下小脳動脈に発生した解離性脳動脈瘤の1例

著者: 植木敬介 ,   寺岡暉 ,   吉田伸一 ,   堀智勝

ページ範囲:P.1215 - P.1219

I.はじめに
 頭蓋内に発生する解離性動脈瘤は,非常に珍しい病態として症例報告の対象となってきたが14,9,20),最近急速に報告例が増加し,また積極的な外科的治療の対象とすべきものがかなり含まれるという報告がFriedmanら6),Shimojiら15)によって相次いでなされ,脳神経外科領域において新たな認識をよんでいる.われわれは最近,後下小脳動脈の解離性脳動脈瘤の1例を治療する経験を得たが,これはいわゆる主幹動脈以外に発生する解離性脳動脈瘤として極めて珍しく,また,臨床上いくつかの貴重な示唆を与えるものと思われるので,以下に報告し,あわせて若干の考察を述べたい.

SLEにみられたレンズ核線条体動脈瘤の1例

著者: 木戸口順 ,   千葉明善 ,   村上寿治 ,   斉木巌 ,   金谷春之 ,   田沢稔 ,   田村昌士

ページ範囲:P.1221 - P.1225

I.はじめに
 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythemato—sus,以下SLE)は,代表的な自己免疫疾患であり,病理組織学的には全身の血管炎であることが知られている.本疾患の25%に精神神経症状を,2.2%に意識消失を認め,中枢神経系の障害はSLEの主要症状の1つとなっている12).SLEの血管炎により,動脈は瘤様に拡張し,血管壁は脆弱となり,脳出血の原因となると述べられているが4,5),その臨床症状,放射線学的所見および病理学的所見との相互関係の詳細については報告が少ない.最近,われわれはSLE患者において結節性動脈周囲炎(periarteritis nodosa,以下PN)様の血管炎を呈し,脳内出血にて発症したレンズ核線条体動脈瘤破裂の1症例を経験したので報告する.

著明な頭蓋内外進展をきたしMRIが有用であったGlomus jugulare tumorの1例

著者: 森迫敏貴 ,   呉屋朝和 ,   脇坂信一郎 ,   木下和夫

ページ範囲:P.1227 - P.1231

I.はじめに
 glomus jugulare tumorは側頭骨頸静脈球付近より発生する腫瘍で,その多くは耳鼻科領域で扱われてきた.今回われわれは脳幹部を圧迫し,著明な頭蓋内外進展をきたした1例を経験した.MRI(magnetic resonance imaging)は,診断,治療に際し,腫瘍の進展様式およびその広がりを知る上で非常に有用であった.本腫瘍について若干の文献的考察を加え報告する.

中頭蓋底より後頭蓋窩に進展したChondromyxoid fibromaの1例

著者: 森川栄治 ,   佐々木富男 ,   馬杉則彦 ,   橋本敬祐 ,   岩田純一

ページ範囲:P.1233 - P.1238

I.はじめに
 chondromyxoid fibromaは,1948年にJaffeおよびLichtenstein8)により1つのentityとして確立された良性の骨腫瘍である.その発生頻度は全骨腫瘍の1%以下5,13)と非常に稀で,しかも大部分が下肢の長管骨のmetaphysisに発生する3,5,8,13).頭蓋骨への発生例は極めて少なく,現在までに数例の報告を見るのみである2,9,10,12,16-18)
 今回われわれは,精神症状で発症し,血小板減少を伴った,頭蓋底部の巨大なchondromyxoid fibromaの1手術治験例を経験したので,ここに報告し,文献的考察を加える.

Cleidocranial dysostosisにArachnoid cystを合併した1例

著者: 中原一郎 ,   野崎和彦 ,   石川純一郎

ページ範囲:P.1241 - P.1246

I.はじめに
 鎖骨頭蓋異骨症cleidocranial dysostosisは,遺伝性を有し,頭蓋骨異常,鎖骨形成不全,歯牙発育異常を特徴とする先天性骨系統疾患である.1898年MarieおよびSaintonによって疾患概念が確立され,本邦では1933年羽根田3)の報告以来,今日までに約150例の報告がある1,10,22).また,本症には種々の神経疾患の合併が報告されているが,これらの症例は主にCTスキャン出現以前のものであり,その脳内病変の詳細な検討は行われてはいない.
 われわれは高血圧性脳内血腫にて来院し,本症にくも膜嚢腫を合併した症例を経験したのでこれを報告し,本症に合併する神経疾患について考察を加える.

石灰化慢性硬膜下血腫の1例

著者: 姉川繁敬 ,   鳥越隆一郎 ,   古川保浤 ,   原田克彦

ページ範囲:P.1249 - P.1254

I.はじめに
 石灰化慢性硬膜下血腫は比較的稀であり,全慢性硬膜下血腫の0.4%から2.6%とされている2,16,18).また,高齢者における本疾患は全身状態が必ずしも良好でないこともあり,いずれの報告においても手術の成績は不良で,このため手術適応に関する意見はさまざまである1,14,22).著者らは,82歳という高齢者の慢性硬膜下血腫に対して手術を施行し,良好な結果をおさめることができた.さらに,手術中に血腫上の頭蓋骨穹隆部の骨肥厚を認め,皺状に肥厚した窓隆部表面ならびに硬膜上に骨髄の存在を認めた.本例につき臨床経過を記すとともに,高齢者石灰化慢性硬膜下血腫の手術適応ならびに骨変化につき若干の文献的考察を加え報告する.

直達手術困難な頭蓋内巨大内頸動脈瘤症例の長期予後

著者: 宮城潤 ,   重森稔 ,   李宗一 ,   徳永孝行 ,   渡辺光夫 ,   倉本進賢

ページ範囲:P.1257 - P.1263

I.はじめに
 直達手術が困難な頭蓋内巨大内頸動脈瘤に対しては,従来から頸部での総頸ないしは内頸動脈の結紮術6),内頸動脈結紮術にEC-IC bypassの併用2),copper wireによるelectrothrombosis5,8),さらに最近のintravascular surgeryの応用7,9)など多くの方法が試みられている.しかし,いずれの方法にも限界があり,保存的に経過を見ざるを得ない症例も多い.したがって,このような症例の長期予後を知ることは治療方針の決定上極めて重要と考えられる.
 今回著者らは頭蓋内巨大内頸動脈瘤症例のうち,長期にわたりCT所見と神経症状の推移を追跡しえた8症例の長期予後を検討し,若干の知見を得たので報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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