症例
特発性胸腰部脊髄硬膜外血腫—自験例と文献的考察
著者:
佐々木真人1
野垣秀和1
石田和彦1
長尾朋典1
所属機関:
1長尾病院脳神経外科
ページ範囲:P.537 - P.541
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最近,我々は特発性脊髄硬膜外血腫の1例を経験したので報告するとともに胸腰部に発生したものにつき文献的考察を加え,その特徴を論じた.(症例)71歳男性.1984年10月6日朝,トイレの後,急に季肋部の痛みと左下肢のしびれと麻痺が出現,2時間後には,右下肢にもしびれと麻痺が現われ,数時間以内に完全対麻痺となり,膀胱直腸障害も出現した.入院時,意識清明,両下肢弛緩性麻痺,Th10以下の感覚低下,L2以下の全感覚脱失,sacral sparing,膀胱直腸障害を認めた.両下肢腱反射は消失,両側Babinski反射も認めなかった.MyelographyにてTh9—L2にかけて陰影欠損,部分的ブロックを認め,Myelo CTにて,同領域のextradu—ral spaceに脊髄を背外側から圧迫するisodensity masslesionを認めた.Th9—L2の椎弓切除を施行.同領域脊髄背側全面を被う被膜に包まれた血腫を認め除去した.術後,感覚障害は早期に改善傾向を示したが,運動機能回復は現在のところあまりみられていない.