Neurological Surgery 脳神経外科15巻8号

1987年08月発行

症例

悪性化を示した頭蓋咽頭腫の1例

著者： 赤地光司¹⁷ 高橋宏¹ 石島武一¹ 中村安秀² 小田雅也³ 滝沢利明⁴ 岩本宗久⁵ 栗山剛⁵ 静木厚三⁶

所属機関： ¹東京都立神経病院脳神経外科 ²東京都立神経病院小児科 ³東京都立神経病院神経病理 ⁴中央鉄道病院脳神経外科 ⁵和歌山赤十字病院脳神経外科 ⁶和歌山赤十字病院病理 ⁷現籍　東京慈恵会医科大学脳神経外科

ページ範囲：P.843 - P.848

I．はじめに
　頭蓋咽頭腫の悪性化の報告は少ない．筆者の知る限りでは，所^11）が著書『脳腫瘍』に藤原，赤崎，大橋・北畠・高橋の報告があったと記載している．しかし，Rus—sell and Rubinstein^9）ならびにZülch^14）は，それぞれの著書に明確な頭蓋咽頭腫の悪性化の報告はないと記載している．
　今回われわれは視力障害を主訴として来院した10歳女児の鞍上部腫瘍に対し，3回にわたる手術を施行したが，その手術材料の比較から本症例は頭蓋咽頭腫の悪性化したものと考えられた．文献的記載に鑑みても非常に稀な1例と考えられたので，ここに報告する．