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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科16巻12号

1988年11月発行

雑誌目次

胎児神経外科

著者: 牧豊

ページ範囲:P.1329 - P.1330

1982年頃までは,超音波診断で胎児の奇形が発見されれば羊水や胎児血でα—fe—toprotein定量や染色体分析が行われ,胎児鏡で確認され人工中絶が施行された.一方,脳室拡大を示す胎児で水頭症と診断され,胎児の脳室羊水短絡術が行われだしたのは,先天性横隔膜ヘルニアや腎臓水腫の胎内手術が行われだしたあとからであった.胎児水頭症のVentriculo-amnio-shuntの成績は2年間の追跡調査によれば1),42例中12例が正常発達をとげているという.この成績がよいとは思えない
 一方,奇形合併を伴わない胎児水頭症と診断されて,出産後3カ月以内に短絡術をうけた108例の10年後の追跡調査によれば2),就学可能児は29%であったという.IQが60以下が50%も占めている.この極めて低い治療成績は治療対象に問題があるのか,治療側の問題なのかよく判らないところがある.

解剖を中心とした脳神経手術手技

Deafferentation painに対するSpinalおよびMedullary DREZ破壊術

著者: 石島武一

ページ範囲:P.1331 - P.1337

I.はじめに
 Nashold2)の報告以来,脊髄後根進人部破壊術(DREZ—tomy)は多くの追試が行われ,その有効性が確認された.筆者1)も1982年から30数例の症例を経験し,効果を確認した.本稿ではこの術式の技術的な面について,筆者の経験を主体にして述べようと思う.この手術はSpinalとMedullaryと2種類あり,両者の手技は多少異なるので,それぞれ別個に述べる予定である.

研究

髄外発育を示した脊髄髄内腫瘍の検討

著者: 石川達哉 ,   岩崎喜信 ,   井須豊彦 ,   秋野実 ,   小柳泉 ,   飛騨一利 ,   阿部弘 ,   宮坂和男 ,   阿部悟

ページ範囲:P.1339 - P.1345

I.はじめに
 脊髄髄内腫瘍はその放射線学的特徴として,紡錘状の脊髄腫大像を呈することが知られている6)が,中には髄外発育を呈し,あたかも脊髄硬膜内髄外腫瘍の如き放射線学的特徴を示す場合がある.われわれは昭和56年以来過去5年間に22例の脊髄髄内腫瘍を経験したが,うち5例23%に腫瘍の髄外発育を認めたので,その臨床症状・神経放射線学的特徴につき検討した.

慢性硬膜下血腫の術後消退に影響を及ぼす血腫側因子についての検討—脳萎縮の与える影響を中心に

著者: 永田和哉 ,   浅野孝雄 ,   馬杉則彦 ,   丹後俊郎 ,   高倉公朋

ページ範囲:P.1347 - P.1353

I.はじめに
 慢性硬膜下血腫に対する治療法は,小開頭もしくは穿頭による血腫洗浄及びドレナージなど確立した感がある.しかし臨床上術後の血腫の消退速度には明らかに個人差があり,場合によっては再開頭を余儀なくされる場合もある.どのような因子が消退速度に影響を及ぼすかについては過去に多くの研究者が検討を重ねてきたが1,3,5,8-11,19,20,30),未だに明確な結論が得られていないのが現状である.その原因の一つとして血腫量の消退速度を定量的に計測する方法が従来なかった点が挙げられる.今回われわれはコンピューターを用いてCTから経時的に血腫残量を測定し,血腫の消退速度を定量的に求める手法を開発した.この手法を用いて慢性硬膜下血腫の消退に及ぼす諸因子の影響を検討し,いくつかの興味深い知見を得た.本稿ではそのうち主として血腫の術前因子,即ち患者の年齢,血腫量,血腫のCTナンバー,受傷から発症までの期間,及び脳萎縮が血腫消退に及ぼす影響について報告したいと思う.特に脳萎縮については従来の脳神経外科医の常識を覆す結果が得られたので,その原因についても併せ考察を加えたい.

Hemifacial spasmの椎骨動脈造影所見—手術症例100例の検討

著者: 馬場武彦 ,   松島俊夫 ,   福井仁士 ,   蓮尾金博 ,   安森弘太郎 ,   増田康治 ,   黒松千春

ページ範囲:P.1355 - P.1362

I.はじめに
 hemifacial spasmに対する神経血管減圧術の評価はすでに確立されており3,5-11,13,19,20),多くの施設で広く行われている.術前の血管撮影検査を行わない施設も少くないが,当施設では血管性病変の除外や術中所見を予測する目的で,術前椎骨動脈造影を全例に施行してきた.今回,hemifacial spasm100例について,手術所見と術前椎骨動脈像を詳細に対比し,圧迫血管の解剖学的検討を行ったので報告する.

各種薬剤の虚血性細胞障害に対する保護効果—海馬切片を用いた検討

著者: 天笠雅春 ,   溝井和夫 ,   吉本高志 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.1363 - P.1371

I.はじめに
 脳切片を用いた電気生理学的方法は神経科学における基本的実験手技であり,近年さまざまな分野への応用が行われている5,15).脳切片を低酸素あるいは虚血モデルとして用いた報告も増加しており薬剤効果の実験には有用なモデルである2,4,5,29,37).われわれはこれまでにinvivoの実験で各種脳保護物質マンニトール,ビタミンE,フェニトイン,ステロイドの有用性を報告してきた36)が今回はこれらの効果を海馬切片を用いてin vitroで電気生理学的および組織学に検討したので報告する.

頭部外傷における大脳・脳幹誘発電位の臨床的検討

著者: 二階堂雄次 ,   下村隆英 ,   平林秀裕 ,   内海庄三郎 ,   京井喜久男 ,   宮本誠司

ページ範囲:P.1373 - P.1381

I.はじめに
 閉鎖性頭部外傷による脳損傷では,衝撃により発生する一次性脳損傷自体が局所にとどまらず広範囲に及ぶ場合が少なくなく,さらに二次性脳損傷の影響も加わって脳損傷自体が量的かつ質的にも変容を示すという特徴を有している.このような頭部外傷での脳損傷の特異性に注目し,その病態把握のために各種の誘発電位(EP)を組み合わせて施行し多角的な脳機能の評価を行おうとする試み4,5)が生まれた.ただし,各種EPを単に記録しその成績を積み重ねて検討するというのでは不十分であり,脳損傷の状況を総合的に評価する視点からの検討がなされなければならない.本稿では,聴覚脳幹誘発電位(ABR),長潜時体性知覚誘発電位(SEP),視覚誘発電位(VEP)の3種類のEPを応用した統合的評価法について述べるとともに,損傷脳の病態把握における意義について報告する.

症例

遅発性頭蓋内圧亢進をきたした急性特発性硬膜下血腫の2例

著者: 高松和弘 ,   滝澤貴昭 ,   佐藤昇樹 ,   佐能昭 ,   高橋一則 ,   村上裕二 ,   大田浩右

ページ範囲:P.1383 - P.1387

I.はじめ
 明らかな外傷の既往や脳動脈瘤,動静脈奇形など出血源となる基礎疾患のない急性発症の硬膜下血腫は,急性特発性硬膜下血腫と呼ばれている11).この急性特発性硬膜下血腫は,皮質動脈破綻が原因と言われ,昭和45年以降コンピューター断層撮影(CT scan)の出現に伴い報告例が増加し3,7,11),われわれの調べ得た範囲で,少なくとも本邦で15例の報告がある1,4,6,8,12,16,17,19,20
 われわれも急性特発性硬膜下血腫と考えられる症例を2例経験し,手術にて皮質動脈破綻を確認したが,1例は発症12日目に,他の1例は15日目に急速な意識障害の出現とCT scan上の著名な正中変位を認めたため緊急手術を必要とした.

急性硬膜下血腫にて発症した円蓋部髄膜腫の1例

著者: 徳永孝行 ,   久保山雅生 ,   古城信人 ,   松尾浩昌 ,   重森稔 ,   倉本進賢

ページ範囲:P.1389 - P.1393

I.はじめに
 脳腫瘍由来の頭蓋内出血の多くは転移性腫瘍や悪性グリオーマによるものであり,髄膜腫による出血はまれである.今回,われわれは円蓋部髄膜腫に起因する急性硬膜下血腫の1例を経験した.そこで,本症例の出血機序を中心に文献的考察を加えて報告する.

内耳奇形による髄液漏の1治療例

著者: 加藤正哉 ,   関博文 ,   鈴木晋介 ,   三条雅英 ,   小林俊光 ,   草刈潤

ページ範囲:P.1395 - P.1398

I.はじめに
 外傷性髄液漏は側頭骨及び,頭蓋底骨折に伴いしばしば遭遇する疾患である2).それ以外に髄液漏は中耳及び側頭骨の手術損傷,炎症性耳疾患,脳神経外科領域では聴神経腫瘍の術後などに認められるが9),こよような原因を持たない,いわゆる特発性髄液漏と呼ばれる疾患群がある1,14,20,24).このなかに,内耳奇形を合併し,幼小児に発症して特徴的な臨床像を示す1群が報告されている4,13,15).今回われわれは,髄膜炎を繰り返した特発性髄液漏の1例を経験したので報告する.

第三脳室内限局性の頭蓋咽頭腫の1例

著者: 浦崎永一郎 ,   福村昭信 ,   伊藤義広 ,   伊東山洋一 ,   山田真晴 ,   生塩之敬 ,   横田晃 ,   和田伸一

ページ範囲:P.1399 - P.1404

I.はじめに
 第三脳室内に限局して発生する頭蓋咽頭腫は稀であり,現在までに22例の報告をみるにすぎず2,4,6,7,9,10,12,14,15,17,19,22-24),トルコ鞍隔膜上あるいは鞍内を好発部位とする同腫瘍とは臨床症状や放射線学的にも異なったclinical entityに属すると考えられる.今回,われわれはこのような第三脳室内限局性の頭蓋咽頭腫を経験し,全摘出術を施行して良好な結果を得たので文献的考察を加えて報告する.

椎骨動脈の解離性動脈瘤—2例報告と文献的考察

著者: 田辺英紀 ,   萬野理 ,   田野辺歓男 ,   青柳實 ,   志熊道夫 ,   太田富雄

ページ範囲:P.1405 - P.1410

I.はじめに
 椎骨脳底動脈(以下VBA)の解離性動脈瘤(以下DA)は従来考えられていたほどには稀ではない2,19).しかしその診断および治療は困難なことが多く10),mortality及びmorbidityの高い疾患である.近年SAH発症例に対する外科的治療が有効であった例が相次いで報告されているが7,21,25),虚血症状にて発症した本疾患に対する外科的治療例は,関野ら18),及びMiyazakiらの1例12)の計2例に過ぎない.今回われわれはWallenberg症候群で発症した右椎骨動脈(以下VA)の解離性動脈瘤に対し,椎骨動脈近位部clippingを施行し良好な結果を得た2例を報告し,本疾患の早期診断と早期外科的治療の必要性を述べると共に,本疾患に関し文献的考察を加えた.

MRIが有用であった乳児脊髄脂肪腫の1例

著者: 永根基雄 ,   江口恒良 ,   高柳和江 ,   大内敏宏 ,   井合茂夫 ,   谷口民樹 ,   河本俊介

ページ範囲:P.1411 - P.1415

I.はじめに
 腰仙部脊髄脂肪腫は比較的稀な疾患とされ,全脊髄腫瘍の約1%を占めると言われている.潜在性二分脊椎症に合併することが多く,皮下脂肪腫も伴いやすい.腰仙部皮下脂肪腫は主に新生児,乳児期に発見されるが,その際二分脊椎,脊髄脂肪腫の併存を疑い精査を進める必要がある.私たちは,腰仙部皮下脂肪腫,潜在性二分脊椎を合併した脊髄脂肪腫で,手術を施行した乳児を経験し,診断上CTに加えMRI(magnetic resonance imag—ing)が有用であったので,画像診断と手術所見につき,若干の文献的考察を加え報告したい.

後頭蓋窩出血で発症し死亡した斜台部脊索腫の1症例

著者: 古賀信憲 ,   門田静明 ,   畑下鎮男 ,   保坂泰昭 ,   杉村純 ,   榊原常緑 ,   高木偉

ページ範囲:P.1417 - P.1421

I.はじめに
 頭蓋内脊索腫は,頭蓋底部に好発し,周囲の組織を圧迫しながら骨に浸潤,破壊しつつ,緩徐に発育するのを特徴とする.また,病理組織学的に腫瘍内出血をしばしばみるものの,臨床的には急激な症状の変化をおこしたり,致命的となる腫瘍出血を認めることは稀である.今回,われわれは,発症以前には全く症状を呈さず,脳卒中様の急激な発症で来院し,短時間にて死亡した斜台部脊索腫の腫瘍出血例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

Radial Artery Graftによるバイパス術の検討—内頸動脈瘤の2例

著者: 柿崎俊雄 ,   森本哲也 ,   榊寿右 ,   平松謙一郎 ,   角田茂 ,   京井喜久男 ,   内海庄三郎 ,   乾松司 ,   竹村潔

ページ範囲:P.1423 - P.1428

I.はじめに
 Neck clippingが困難な内頸動脈瘤に対する根治術として,時にtrappingが行われているが,いかに脳虚血.を最小限に食い止めるかが予後を左右する最大の因子であろう,われわれは,このようなtrapping時のEC-ICbypassに際し,radial artery graftを用いて良好な結果を得たので,その2症例を呈示する.また,従来からの浅側頭動脈(STA),saphenous vein graftと対比し,ra—dial artery graftの特徴と今後の応用についても検討した.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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