icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科16巻3号

1988年03月発行

雑誌目次

脳神経外科医とスポーツ

著者: 堀智勝

ページ範囲:P.223 - P.224

 脳神経外科の父といわれるCushingは小学校の時から野球がうまく大学時代にはセンターを守り活躍したとのことである.先頃お亡くなりになった,清水健太郎先生は東京六大学リーグのスターで駿足好打の名捕手であったという.慶応大学の塩原先生は甲子園出場をはたした名プレーヤーとのことであるし,児玉,高久,平川,大本教授も学生時代野球部で活躍されたようである.野球以外にもテニスの国体出場選手である米増,石井教授,またはスポーツ万能の杉田教授など,日本の脳神経外科の先生も学問だけでなく,よく学びよく遊ぶ素晴らしい先生方が目白押しである.最近では全国脳神経外科野球大会が開かれ岡山大学脳神経外科教室は無敵の2連勝を誇っている.
 何故このように皆さんスポーツ好きなのであろうか.恐らく狭い手術室で数時間に及ぶ手術をこなしたあとは何か気分転換が人間にとって必要なのではなかろうか.私も手術後にテニスボールを思いきり叩くとスカーッとするし,たまの日曜日ゴルフ場の眼にしみるような緑の芝生で思いきり白球をドライバーで叩くと,たとえOBになってもある種の満足感をもつことができる.

研究

巨大脳動脈瘤症例のNatural history—特に脳血管写,CT所見よりの検討

著者: 藤田勝三 ,   山下晴央 ,   増村道雄 ,   西崎知之 ,   玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.225 - P.231

I.はじめに
 2.5cm以上の巨大脳動脈瘤は全脳動脈瘤中の7.4—13%6,11-13)の発生率が報告されているが,近年micro—surgeryの導入および巨大脳動脈瘤用の特殊クリップの開発にもかかわらず,なお手術死亡率は15-21%8,11-13)の報告があり,また手術による合併率も高く,その治療成績は満足すべきものではない.特に65歳以上の高齢者の巨大動脈瘤症例での外科的治療の決定にあたっては,手術のriskが大きいだけに,非手術例の巨大動脈瘤患者のnatural historyを正確に把握することが重要であると考えられる.今回,非手術例の巨大脳動脈瘤症例28例のnatural historyにつき,脳血管写,CT所見および臨床症状を参考にして検討した結果,興味ある知見を得たので,その結果につき報告する.

実験的くも膜下出血における延髄電気刺激による頭蓋内圧変動

著者: 辻哲朗 ,   林実 ,   藤井博之 ,   山本信二郎

ページ範囲:P.233 - P.239

I.はじめに
 頭蓋内圧亢進を有する症例において,頭蓋内圧を連続的に記録すると,上昇した頭蓋内圧に重なって急激な頭蓋内圧変動すなわち圧波がみられる11).圧波は脳血管床の変化によるものであり4,16),急性脳腫脹に随伴する必発の現象である5,11,19).圧波は多くの場合,全身血圧,呼吸,瞳孔などの自律機能の変動や脳波の変化を伴い7,11),麻酔剤,ことにバルビタール剤によってよく抑制され6,18),脳幹機能不安定状態あるいは障害によって出現すると考えられている.しかし実験的に脳損傷による頭蓋内圧亢進モデル,あるいは正常動物の脳幹の刺激による圧波の作製は困難である.著者はイヌのくも膜下腔に溶血赤血球を注入することにより頭蓋内圧亢進モデルを作製した17).さらに各時期において延髄電気刺激を行い,圧波の再現を試みた.

遅発性放射線障害の治療—下垂体腺腫症例に対する長期ステロイド療法の検討から

著者: 藤井卓 ,   三隅修三 ,   柴崎尚 ,   田村勝 ,   国峯英男 ,   早川和重 ,   新部英男 ,   宮崎瑞穂 ,   宮城修

ページ範囲:P.241 - P.247

I.はじめに
 脳の放射線壊死に関する症例報告は決して珍しいものではないが5,6,9,13),その治療について論じた報告は少ない.ことに神経膠腫に対する照射後の放射線障害の治療に関しては,腫瘍の再発との鑑別が難しいだけに,その治療効果の検討は十分に行い得ないことが多い.この点,下垂体腺腫症例においては,腫瘍の再発との鑑別が比較的容易であり,放射線障害の診断は下しやすく,治療効果の判定も行いやすい.ここでは,6例の下垂体腺腫症例で見られた脳の遅発性放射線障害についての概要を示すとともに,治療法についての検討を行い,他の頭蓋内悪性腫瘍,ことに神経膠腫例における放射線障害の診断,治療の糧とすることを目的とした.

脳動脈瘤に対するCT angiographyの有用性

著者: 奥野孝 ,   森脇宏 ,   宮本和紀 ,   寺田友昭 ,   西口孝 ,   板倉徹 ,   林靖二 ,   駒井則彦

ページ範囲:P.249 - P.257

I.はじめに
 破裂脳動脈瘤は,最近の診断法および治療法の進歩にもかかわらず,いまだにmorbidity, mortalityが高い7,11,16).そのため脳動脈瘤は破裂前に診断し治療を行うことが理想である.しかし,破裂前状態の脳動脈瘤は,symptomatic aneurysm以外,発見されることが少なく10,13,15),脳動脈瘤を非侵襲的に検出できる補助検査法の出現が望まれている.computed cerebral angiotomo—graphy (以下CT angiographyと略す)は,CT scannerの性能向上と造影剤の注入方法の工夫により,脳動脈瘤を非侵襲的に検出する補助検査法として最近注目されており,その有用性が報告されている1,2,5,14,17).われわれはCT angiographyを用いて未破裂脳動脈瘤のscreen—ingを行うとともに,破裂脳動脈瘤例に対しても脳血管撮影施行前にCT angiographyを行い,その有用性を検討し,特に破裂脳動脈瘤例に対する臨床的意義について考察した.

硬膜外血腫120例の臨床的検討

著者: 杉浦誠 ,   的場愛子 ,   森伸彦 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.259 - P.265

はじめに
 硬膜外血腫は,重症頭部外傷の中でも急性期に外科的処置を必要とし,かつ手術のタイミングが予後に大きな影響を与える病態であるが,その死亡率は20%を超えるとする報告が多い4,7,12,14).一方,古い文献ではあるが,Hooper7)やMckissock14)は硬膜外血腫の死亡率は10%が納得しうる数値であると述べている.著者らは,硬膜外血腫の転帰不良例を中心に臨床所見,CT所見などから予後を左右する因子に検討を加えた.

内頸動脈多発性狭窄症およびEC-ICバイパス術における脳血行動態のモデル解析

著者: 長澤史朗 ,   菊池晴彦 ,   大槻宏和 ,   森竹浩三 ,   米川泰弘

ページ範囲:P.267 - P.273

I.はじめに
 虚血性脳血管障害は人口の高齢化とともに増加している.そのなかでも最近は内頸動脈の起始部狭窄症や多発性狭窄症の見いだされる頻度が増えており,これにより低灌流症状をきたす場合には種々の血行再建術が試みられてきた.しかしながらこれら症例における血行動態の把握あるいは血行再建術に伴う血行動態の予想や評価は,病変の数・部位や形状さらには側副血行などの要素が症例により異なり,かつ相互に複雑に関係しあっているため,十分にはなされていないのが現状である.たとえばEC-ICバイパス術の施行後に同側あるいは反対側の内頸動脈狭窄部の完全閉塞をきたした症例が報告されているが2,7,9),この成因についての詳細な血行力学的検討はなされていない.
 このような問題に対処するには,これら諸要素を分けて検討することが必要であり,モデル実験はその有効な方法の一つと考えられる.従来より流体1,3,4,10,13),電気あるいは数学などを応用した脳血管モデルがいくつか考案されてきた.しかしこれらをそのまま応用するには種種の制限があるため,本研究ではまず新しく脳血管モデルを作製した.これを用いて一側あるいは両側性内頸動脈狭窄症の進行に伴う内頸動脈の流量や内圧の変化,大脳半球流量の変化,さらには狭窄性病変の除去やEC-ICバイパス路がこれら循環諸量に与える影響などについて検討したので報告する.

症例

周辺血管の2度にわたる狭窄寛解を観察した破裂細菌性脳動脈瘤の1例

著者: 上家和子 ,   鮄川哲二 ,   小笠原英敬

ページ範囲:P.275 - P.280

I.はじめに
 細菌性脳動脈瘤は極めて短期間に形成され,その形態は短期間に変化することが知られている4-6,8,9,13,15-20,22).また,周辺血管では,攣縮,狭窄,閉塞などの所見も動脈瘤と同時に観察されている場合もある1,2,5,8,9,11,13,15-20,22).それらの周辺血管の変化については,一般にくも膜下出血においてみられる脳血管攣縮と同様の血管攣縮,あるいは血管炎による狭窄,細菌塞栓による閉塞,感染に伴う脳血管攣縮などが考えられるが,充分な検討はいまだなされていない.
 今回われわれは,心内膜炎からの細菌性脳動脈瘤の破裂後,動脈瘤の形状の変化のみならず,周辺血管の2度にわたる狭窄と寛解を観察し得た症例を経験した.細菌性脳動脈瘤における周辺血管の変化を中心に若干の考察を加えて報告する.

興味ある組織所見を認めた腰仙部脂肪腫の1例

著者: 大林正明 ,   上田伸 ,   松本圭蔵 ,   津田敏雄 ,   曽我哲朗 ,   四宮禎雄

ページ範囲:P.283 - P.287

I.はじめに
 腰仙部脂肪腫は比較的稀な疾患で,すべての原発性脊髄腫瘍の1%程度といわれている4).本症の神経症状発現機序は牽引説1),圧迫説4),外傷説3)に大別されるが,現在ではこの3つの要素が相互に関与していると考えられている14),その発生は神経管のretrogressive dif—ferentiationの障害により,pluripotentialな性格をもつcaudal cell massの分化により生じる可能性が示唆されている17,18).われわれは典型的な腰仙部脂肪腫の1例を経験し,high resolution CT,手術所見および組織学的検討を行い興味ある所見を得たので若干の文献的考察を加え報告する.

静脈洞交会部巨大髄膜腫の1手術成功例—術前後における静脈側副路の変動について

著者: 鈴木晋介 ,   溝井和夫 ,   加藤正哉 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.289 - P.294

I.はじめに
 主要な静脈洞近傍より発生し,同部を圧迫浸潤し,ついには洞の狭窄ないし閉塞に至らしめる髄膜腫は,静脈圧勾配の変化のために,さまざまな側副路(accessoryvenous drainage)の発達により頭蓋内静脈灌流は変動して行くものである.
 われわれは最近,静脈洞交会部下面に付着部を有し,同部が完全閉塞されたために,板間静脈,導出静脈,表在静脈,深部静脈などによるさまざまな静脈側副循環がみられた巨大な髄膜腫の1手術成功例を経験した.特に本例では,術後のfollow-up脳血管写にて,術前にみられたこれらの静脈側副路は消退し,硬膜静脈によると思われる新たなチャンネルが発達し,その静脈灌流動態がより正常に近い状態に復するといった所見が認められた.本症例は,脳静脈系の側副路が需要に応じてダイナミックに変化し得ることを示唆した興味ある症例と思われ,若干の文献的考察を加え報告する.

細菌性脳動脈瘤—3治験例報告と文献的考察

著者: 梅津博道 ,   関要次郎 ,   相羽正 ,   中西成元 ,   関顕 ,   布施勝生

ページ範囲:P.297 - P.302

I.はじめに
 動脈壁の細菌感染により形成される細菌性脳動脈瘤は,その大部分が細菌性心内膜炎に合併し,臨床症状,好発部位,治療などにおいて,いわゆる"berryaneurysm"とは異なった,いくつかの特徴を有する.
 最近,著者らは,細菌性心内膜炎に合併した細菌性脳動脈瘤3例を経験したので,特にその診断および治療に関して,文献的考察を加え報告する.

頭蓋外椎骨動脈および頸動脈狭窄に対し同時に血行再建を行った1症例

著者: 藤本俊一郎 ,   寺井義徳 ,   伊藤隆彦

ページ範囲:P.305 - P.310

I.はじめに
 Fieldsら5)は一過性脳虚血性発作を呈した316例のうちで64例(20%)が頸動脈系と椎骨脳底動脈系の両者に狭窄性病変を有していたと報告した.われわれの日常診療においても脳虚血性疾患に対する血管撮影で頸動脈系および椎骨脳底動脈系に多発性の狭窄性病変を認めることが多く,内科的治療が無効な場合,血行再建の方法に苦慮することが少なくない.
 頸動脈系と椎骨脳底動脈系の両者に狭窄性病変があり,椎骨脳底動脈循環不全症を呈している症例では,頸動脈内膜剥離術のみで椎骨脳底動脈循環不全症が改善するという報告がある6,10,14).しかし,一方では効果がほとんどないとする報告もあり5,12),頸動脈内膜剥離術に対する一定の評価が得られていないのが現状である.そのため最近では,このような症例には,頸動脈系と椎骨脳底動脈系の両者に血行再建を行うという報告も散見される2-4,11,13)

頸静脈孔近傍神経鞘腫の4例

著者: 城山雄二郎 ,   阿美古征生 ,   青木秀夫 ,   井上信一 ,   津波満

ページ範囲:P.313 - P.319

I.はじめに
 脳神経から発生する頭蓋内神経鞘腫は全脳腫瘍の約8%を占め,聴神経に発生する頻度が圧倒的に高い.そのほか三叉神経,迷走神経,舌咽神経,副神経,舌下神経などにもみられるが,かなり稀である.そして,頸静脈孔近傍の神経鞘腫はその解剖学的部位,症状の多彩さ,頻度の少なさより,やや発見が遅れがちである.今回われわれは頸静脈孔近傍神経鞘腫についての検討を行い,自験例4例を報告し,特に臨床症状につき若干の文献的考察を行った.

前額部打撲により発生した後頭蓋窩急性硬膜外血腫の1例

著者: 阿部秀一 ,   古川公一郎 ,   遠藤重厚 ,   星秀逸 ,   金谷春之

ページ範囲:P.321 - P.325

I.はじめに
 後頭蓋窩硬膜外血腫は全硬膜外血腫の約5.4%17)とテント上硬膜外血腫に比し非常に少ない.しかしCT導入後,その報告は増加している11,16,22).また後頭蓋窩硬膜外血腫のほとんどは後頭部打撲により発生し10,12,17),後頭部打撲,後頭骨骨折があれば同部の硬膜外血腫の発生に注意すべきと強調されている.最近われわれは,前額部打撲後,反対側の後頭蓋窩に急性硬膜外血腫の発生をみた稀な1手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

転移性脳腫瘍による慢性脳内血腫の1例

著者: 松本健五 ,   浅利正二 ,   西本詮 ,   難波真平

ページ範囲:P.327 - P.331

I.はじめに
 非外傷性脳内出血の原因として脳腫瘍の占める割合はO.9-10%と少ないが,そのなかでは転移性脳腫瘍が約半数を占めており5,6,19,24),多くは脳卒中様発作で発症する22,24).今回われわれは,比較的緩徐な経過をとり術前診断の困難であった転移性脳腫瘍による脳内出血の症例を経験したので報告する.

--------------------

「引用」についての豆知識

ページ範囲:P.294 - P.294

 「引用」の範囲を超えて他人の著作物を,自身の著作物へ取り込む場合("転載")には相手方(著作権者・出版社)の許諾が要ります.(許諾の条件として著作権使用料を請求される場合もあります)但し,「引用」の条件を満たして利用する場合は自由に利用できます.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?