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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科16巻4号

1988年04月発行

雑誌目次

最近10年間の脳神経外科の進歩—わが国へのCT導入の経緯

著者: 稲葉穰

ページ範囲:P.339 - P.340

 筆者はかつて本誌「扉」(2巻4号273-274頁,昭和49年4月号)に,「10年後の脳神経外科に望む」と題する小文を書いた.
 さて今回,この10年間の,脳神経外科の変化と,進歩の足跡をたどることは将来を展望するためにも重要なことである.そしてこの10年間の当初に,わが国へのX線CTの一括大量導入という予想を遙に越える大きな事態が発生したのであった.ここにその概要の一部を語ることは,これに関与した筆者の義務である.

解剖を中心とした脳神経手術手技

巨大脳動脈瘤の手術

著者: 鈴木二郎 ,   藤原悟

ページ範囲:P.341 - P.350

I.はじめ
 巨大脳動脈瘤(最大径25mm以上,以下GA)の治療は脳神経外科領域のなかでも最も困難なもののひとつで,ことに直達手術(direct surgery)は種々のdiagnostictechniqueやmicrosurgeryの発達した今日においても,その手術成績は思わしくなく,保存的療法を余儀なくさせられる場合が多い.
 一方,最近balloon techniqueやbypass surgeryの応用により,必ずしも直達手術によらなくてもかなり良好な治療成績を期待しうるまでになっている.

研究

孵化鶏卵漿尿膜移植法によるグリオーマ,転移性脳腫瘍に対する薬剤感受性テスト

著者: 中村治 ,   佐々木琢磨 ,   内田博之 ,   田中基裕 ,   遠藤良夫 ,   西川耕平 ,   松谷雅生 ,   高倉公朋

ページ範囲:P.353 - P.357

 I.はじめに
 癌化学療法の進展に伴い,多くの抗癌剤が開発されているが,癌細胞のみに効果を発揮し,正常細胞には影響を及ぼさない理想的な抗癌剤はいまだ存在しない.抗癌剤の感受性は,癌発生臓器により一定の傾向を示すことが知られている.一方,germ cell tumorに対するPVB療法のように,化学療法の効果が予測可能な腫瘍の組織型は限局されているとともに,大多数の腫瘍に対する抗癌剤および併用化学療法の有効率は極めて低いのが現状である.この点に関しては脳腫瘍も例外ではなく,有効な抗癌剤と効果のない抗癌剤の種類を投与前に明確にすることは極めて重要である.
 脳腫瘍に対する薬剤感受性テストとしては,C6などのラットglioma cellをラット頭蓋内に移植したモデルや,ヒトグリオーマを皮下に移植したヌードマウスなどが多用されている.今回われわれは孵化鶏卵漿尿膜に腫瘍を移植する方法9)に注目し,従来の方法に若干の工夫を加えることにより,本法の脳腫瘍薬剤感受性テストとしての有用性を検討した.

手術操作によって引き起こされる蝸牛神経損傷—第1報 イヌによる電気生理学的,形態学的研究

著者: 関谷徹治 ,   R.Moller ,   J.Jannetta

ページ範囲:P.359 - P.365

I.はじめに
 正常な聴覚機能は,日常生活を営むうえで欠くことのできないものである.しかしながら,末梢聴覚神経路は,外傷や手術操作に伴う外力によって,しばしば容易に損傷されることが知られている.近年,小脳橋角部(cerebellopontine angle, CP angle)における手術操作,例えば脳神経減圧手術(microvascular decompression,MVD)や残存聴力を有する聴神経鞘腫の摘出手術などが頻繁に行われるようになってきているが,その際,手術合併症として聴力損失を生じることがある4,9,12).しかし,その発現メカニズムについては詳しく知られていない.私達は,この点を明らかにするために動物実験を実施した.

頸椎,頸髄疾患における短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)

著者: 浦崎永一郎 ,   福村昭信 ,   伊藤義広 ,   伊東山洋一 ,   古賀一成 ,   和田伸一 ,   横田晃 ,   生塩之敬

ページ範囲:P.367 - P.375

I.はじめに
 短潜時体性感覚誘発電位(short latency somatosensoryevoked potential,以下SSEPと略す)は種々の中枢神経系疾患の機能診断に用いられているが,多数例の頸椎,頸髄疾患についての報告は少ない1,2,13).今回われわれは頸椎,頸髄疾患59症例についてSSEPを記録し,各成分の異常度と神経学的所見および放射線学的局在部位との対比を行い,SSEP検査の有用性を正確に評価した.

遅発性放射線脳壊死における脳浮腫

著者: 柴田尚武 ,   陣内敬文 ,   森和夫

ページ範囲:P.377 - P.382

I.はじめに
 遅発性放射線脳壊死(以下radiation necrosis)は,まず血管壁が直接障害を受けてフィブリノイド変性を生じ,神経組織に対する障害はその結果からくる二次的なものであるという考え方が大方の見解である.しかし,新生物でないにもかかわらず,高度の脳浮腫を伴ったmass effectがなぜ持続するのかなど,その発生機序については不明な点が多い.
 われわれはすでに前報でgliomaにおける脳浮腫の発生機序を血管透過性の面から検討を加え報告した8,9).微小血管の面から見ると,前者は正常脳血管の放射線による変性であり,後者は腫瘍の新生血管である.そこでradiation necrosisの微小血管の形態学的変化を電顕的に検索し,脳浮腫発生の一因としての血管透過性について,glioma(glioblastoma, astrocytoma)と対比して検討を加え,興味ある所見が得られたので報告する.

新生児,乳児期水頭症の頭蓋内圧環境と脳灌流圧の臨界域

著者: 佐藤博美 ,   佐藤倫子 ,   玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.385 - P.392

I.はじめに
 新生児,乳児期の頭蓋内圧環境には不詳な点が少なくない.近年,水頭症病態における脳循環動態の重要性が指摘されているが23),新生児,乳児期における知見は乏しい.新生児,乳児期の水頭症の頭蓋内圧環境を脳循環動態の因子を加えて定性および定量的に分析し,この時期の水頭症の圧環境を検討した.

頭蓋咽頭腫の再発治療

著者: 佐々木司 ,   設楽信行 ,   高倉公朋 ,   間中信也

ページ範囲:P.395 - P.401

I.緒言
 頭蓋咽頭腫の治療方法は,初回治療では可及的に根治手術を目指し,全摘に伴う障害が大きいと判断される場合は亜全摘にとどめ,術後,放射線治療を加える方法が一般的と考えられている1,13).初回治療において手術時,全摘と判断された症例でも再発が認められることがある.全摘手術により好成績を得ているSweet20),Katz(Matson)9)の報告でも,全摘手術後の再発率はそれぞれ8.7%,26.5%と決して低いものではない.初回,全摘できなかった症例においては,再発はほとんど免れないことであり,腫瘍の再燃の時期が問題になる.これら初回治療に関しては,共同研究者の間中ら13)がすでに報告した.今回われわれは当施設で行った48例の再発頭蓋咽頭腫の治療方法とその効果を解析し,若干の知見を得たので報告する.

症例

Tentorial cavernous angiomaの1治験例

著者: 松本正人 ,   菊池晴彦 ,   永田泉 ,   山形専

ページ範囲:P.403 - P.407

I.はじめに
 頭蓋内のcavernous angiomaは中枢神経系の血管奇形の5-13%10,19,24),剖検によると0.02%−0.13%10)と稀な疾患である.このなかでextra-axialに発育したcavernous angiomaは,極めて少ないとされる.われわれは小脳テントから発育したcavernous angiomaの1例を経験しsubtemporal approachにて全摘し得たので文献的考察を加えて報告する.

松果体部および肝にAngiosarcomaを認めた1例

著者: 瀬戸弘 ,   松角康彦 ,   倉津純一 ,   高木修一 ,   友田邦彦

ページ範囲:P.409 - P.413

I.はじめに
 angiosarcomaは悪性血管内皮腫ともいわれる稀な腫瘍であり,好発部位としては骨,筋肉,肝臓,脾臓,皮膚,皮下などがあげられる.今回われわれは松果体部腫瘍として発症し,約1年後に肝のangiosarcomaより出血をきたして死亡したが,剖検の結果,松果体部腫瘍もangiosarcomaであった極めて稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

側頭葉てんかん症例にみられたMicrotumorの1例

著者: 井出光信 ,   神保実 ,   山本昌昭 ,   田中典子 ,   武山英美 ,   久保長生

ページ範囲:P.415 - P.419

I.はじめに
 側頭葉てんかん症例の側頭葉切除標本から脳腫瘍が発見されることは稀ではない.しかし,肉眼的に腫瘍塊の形成がみられず,病理維織学的検索によりはじめて腫瘍細胞が認められたという報告は少ないようである5)
 最近,われわれは難治性側頭葉てんかん患者に側頭葉切除術を行ったところ,その切除標本の組織学的検索でoligodendroglia様細胞の巣状の増生がみられた例を経験した.本症例にみられた病理組織像は,ラット実験脳腫瘍にみられるmicrotumorに酷似しており,興味ある症例と考えたので報告する.

多発脳動脈瘤を合併したPersistent primitive hypoglossal arteryの1剖検例

著者: 藤井幸彦 ,   新井弘之 ,   竹内茂和 ,   佐々木修 ,   鎌田健一 ,   小川宏 ,   新保義勝

ページ範囲:P.421 - P.426

I.はじめに
 persistent primitive hypoglossal artery (PPHA)は胎生期に存在する4本の内頸・脳底動脈吻合血管(carotid—basilar anastomosis)の遺残動脈の1つで,比較的稀な血管奇形である.遺残胎生期動脈に血管異常,特に脳動脈瘤を合併する確率が高いことは周知のことであるが,この事実は動脈瘤の成因に関して興味深い.われわれはPPHAに多発脳動脈瘤を合併した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

新生児Optic gliomaの2例

著者: 安藤彰 ,   大熊洋揮 ,   蛯名国彦 ,   鈴木重晴

ページ範囲:P.429 - P.433

I.はじめに
 新生児期に発症する脳腫瘍は,先天性の色彩が濃く,性格についてもいまだ一致した見解を見出していないが,小児脳神経外科学,小児神経学の発達およびCTscanの普及に伴って,近年次第に報告例が増加している.しかし脳腫瘍全体の中に占める割合は,現在のところ例外的といえるほど少ない5,6,13).最近著者らはそのなかでも稀と考えられる生後2カ月以内の新生児期に発症したoptic gliomaの2症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

同時多発高血圧性脳内血腫の1例

著者: 中村勉 ,   角家曉 ,   梅森勉 ,   鈴木尚 ,   郭隆璫

ページ範囲:P.435 - P.439

I.はじめに
 CTの普及によって,脳内血腫の診断が容易になって以来,再発による脳内多発血腫の症例報告は少なくないが8),明らかな原因なく脳内に血腫がほとんど時期を同じくして多発した報告例は極めて少ない1,3,5,9-11,13).著者らは,発症後3時間以内のCTで,同一半球に2カ所の出血を呈した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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「引用」についての豆知識

ページ範囲:P.426 - P.426

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基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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