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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科17巻1号

1989年01月発行

雑誌目次

一教師の喜びと願い

著者: 角家暁

ページ範囲:P.5 - P.6

 この頃高校生活で大学受験のために厳しい勉強を強いられた反動だろうか,大学に入ってから遊ぶのが若者の一般的な風潮らしい.私どもの大学でもこの例外ではあり得ず,低学年,それも入学してきたばかりの1,2年生の学習意欲が低く,そこで脱落し,またこの時の不勉強がたたって基礎医学の知識が足らず,高学年でついていけなくなる学生が少なくない.学生にしてみれば受験一色に明け暮れた灰色の学生生活にようやく別れを告げ,これから6年間の医学部生活とあれば,最初の2-3年は精一杯青春生活を謳歌しようと思うのも無理はない.また先輩も遊んでも大丈夫などと,かっこうよく無責任なことをいうものだから始末が悪い.このような学生をどのように初年度から勉強させるかについては,どの大学でもいろいろと苦労されているようだが,私どものところでも一つの試みとして,新入生の一学期に特別講義の時間を設けて,医の倫理,臓器移植など社会で真剣に討議されている問題などを交えながら,大学生活の6年間に身につけなければならない知識の概略とその習得方法について話すことにした.私も"脳神経外科の世界"の題で,顕微鏡を使って傷つけてはいけない神経組織,血管を丁寧に避けながら良性腫瘍を摘出し,動脈瘤をクリップする手術をビデオで紹介し,このような手術ができるようになるには,もちろんその人に備わった素質も無視はできないが,最も大切なのは人体の解剖とその病態の正確な知識であると話した.

脳腫瘍の組織診断アトラス

(1)Ependymoma(上衣腫)

著者: 久保長生

ページ範囲:P.7 - P.14

 EpendymomaはWHO分類においてependymal andchoroid plexus tumorのなかにいれられており,
 1)Ependymoma(grade 1 or rarely grade 2)Variants:

研究

慢性硬膜下血腫の術後消退に影響を及ぼす手術因子についての検討—特に血腫腔内残存空気の与える影響について

著者: 永田和哉 ,   浅野孝雄 ,   馬杉則彦 ,   丹後俊郎 ,   高倉公朋

ページ範囲:P.15 - P.20

I.はじめに
 慢性硬膜下血腫の治療法には大開頭血腫被膜除去,小開頭もしくは穿頭による血腫洗浄法,twist-drillによるclosed system drainage法などがあるが,現在もっとも普及しているのは小開頭もしくは穿頭による血腫洗浄法であろう.しかしながらその血腫洗浄法にしても,小開頭により充分な洗浄を行うべきか,それとも穿頭のみでよいか,また術後ドレーンの留置は行うべきか否か,更には残存したcavityをairが残ったままで閉頭するか生食を満たすのか,それとも内膜を一部切除して髄液との交通をつけるのかなど,いまだ検討されるべき諸問題が残されている.その理由の一つとして何れの方法でもそこそこの治療成績が挙げられるため術式の厳密な検討が充分に成されていない上に,術後の血腫腔の消退速度について充分な数量的な検討が行われていないことが挙げられる.われわれは先にコンピューターにより血腫消退速度を数学的に定量化する手法を報告し,これを用いて術前諸因子の影響を検討した結果,年齢と血腫量が消退速度に相関する一方,脳萎縮がその消退に影響を及ぼさないことを見いだした18).今回は術式やドレーン留置などといった手術因子がその消退に及ぼす影響を中心に検討を加える.即ち本論文の主たる目的は,この血腫消退速度の比較から上記の手術法を中心とした諸問題について検討を加え,よりよい手術方法を検討することである.

脳血管攣縮発生時の脳血流速度の経時的変化と臨床症状の推移ならびに予後について

著者: 京井喜久男 ,   橋本浩 ,   徳永英守 ,   森本哲也 ,   平松謙一郎 ,   角田茂 ,   多田隆興 ,   内海庄三郎

ページ範囲:P.21 - P.30

I.はじめに
 1982年,Aaslidなどが頭蓋内血管の血流速度を非侵襲的に信号としてとらえることのできる経頭蓋骨的超音波ドプラ血流速度測定装置(Transcranial DopplerUrtrasonography)を開発して以来,虚血性脳血管障害,脳動脈奇形,くも膜下出血後の血管攣縮の診断に応用されて来ている.特に,血管攣縮のtime courseを確認する方法は,現在では血管撮影による以外には方法はなく,また,血管撮影は攣縮発生患者の神経症状を悪化させる要因ともなり,非侵襲的で,反復検査のできる経頭蓋骨的ドプラ法の臨床的有用性が注目されているが未だ詳細な報告は少ない.
 今回,われわれは,破裂脳動脈瘤手術患者18例を対象として,手術施行の翌日より3-4週間に亙り主幹動脈の血流速度を経時的に測定し,術後脳血管攣縮の発生に伴う脳循環の変化を臨床症状の推移,血管撮影ならびにCT所見と対比検討した結果,若干の知見を得たので文献的考察を加えて報告する.

MRIによる脳梗塞急性期例の検討

著者: 福田修 ,   佐藤秀次 ,   鈴木尚 ,   遠藤俊郎 ,   高久晃

ページ範囲:P.31 - P.36

I.はじめに
 近年,中枢神経系疾患の画像診断法としてMRIが注目され,脳血管障害においても,その有用性が報告されてきた3-5,16,19,20).しかし,装置が急速に普及している現在でも,脳梗塞臨床例を急性期から経時的に追跡,検討した報告は少なく19,20),発症後の梗塞巣の検出時間,経時的変化などいまだ不明な点も多い.
 今回,われわれは脳梗塞急性期16例のMRI所見を発症直後より慢性期に至るまで,経時的に追跡検討する機会を得た.その結果とともに臨床病態評価におけるMRIの有用性につき,若干の文献的考察を加え報告する.

脳内血腫例における非出血側体性感覚誘発電位の検討

著者: 竹内茂和 ,   新井弘之 ,   山崎一徳 ,   宮川照夫 ,   鎌田健一 ,   小池哲雄 ,   田中隆一

ページ範囲:P.37 - P.40

I.はじめに
 近年,体性感覚誘発電位(somatosensory evokedpotential:SEP)の研究が盛んに行われ,日常臨床の中で病態把握や診断のみならず,術中や病室でのモニターとしても応用されている5,8).SEPの有用性は周知の事実といえるが,その検討は病巣側のみに限られたものが多い.病巣側を非病巣側と対照して比較検討した報告4)もみられるが,非病巣側に焦点を当てて検討したものは少ない2,3,7).今回,一側大脳半球内血腫例で,非出血側SEPに注目し,同時期に行ったCT scan上でのmidlineshiftの程度,血腫部位,さらに意識障害との比較検討を行った.

小脳圧排の方向と蝸牛,前庭神経損傷の起こり方の相関関係について

著者: 関谷徹治 ,   岩淵隆 ,   真鍋宏

ページ範囲:P.41 - P.49

I.はじめに
 小脳橋角部における不用意な小脳圧排によって,蝸牛神経損傷が起こりうることは良く知られている6).しかし,蝸牛神経と並走するもう一つの神経,前庭神経の手術操作に伴う損傷については,これまで言及されていない.本研究では,小脳圧排の方向と,それによって引き起こされる蝸牛神経,前庭神経の損傷の相関関係につき実験的に検討した.

症例

小脳出血を呈した横静脈洞血栓症の1例

著者: 牛渡一盛 ,   齊木巖 ,   村上寿治 ,   金谷春之 ,   今野譲二 ,   和田進

ページ範囲:P.51 - P.55

I.はじめに
 脳静脈・静脈洞血栓症はしばしば出血性梗塞をきたすことが知られているが2,5),その出血性梗塞は天幕上に発生し,天幕下の報告はみられない.今回われわれは小脳血にて発症した一側の横静脈洞血栓症による小脳の出血性梗塞の1例を経験した.横静脈洞血栓症による小脳の出血性梗塞は稀なものと思われるので,その発生機序を中心に若干の考察を加えて報告する.

Ethmoid Sinusより発生したEctopic Meningioma—症例報告と文献的考察

著者: 南茂憲 ,   角田茂 ,   榊寿右 ,   橋本宏之 ,   京井喜久男 ,   内海庄三郎 ,   松永喬

ページ範囲:P.57 - P.62

I.はじめに
 1922年,Cushingらにより命名されたmeningiomaはarachnoid cell由来の腫瘍であり,通常頭蓋内もしくは脊椎管内に発生する.しかしまれではあるが,これらの場所以外に発生することもあり,ectopic meningiomaと呼ばれている.その発生部位としては,眼窩,皮膚,頭蓋骨,耳下腺,副鼻腔,鼻腔などがある3,11.20.28.29).なかでも副鼻腔由来のものはきわめてまれであり現在までに37例の報告をみるにすぎない1-3,5-7,9-11,13-31).今回われわれは,ethmoid sinusより発生したectopicmeningiomaを1例経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

MRIで部分的血栓化が証明されたSpinomedullary JunctionのRadiculomeningeal Arteriovenous Fistulaの1例

著者: 織田祥史 ,   小西常起 ,   鈴井啓史 ,   藤本直規 ,   中村和雄 ,   松本正朗 ,   奥村禎三 ,   姜裕 ,   菊池晴彦

ページ範囲:P.63 - P.68

I.はじめに
 脊髄動静脈奇形についての報告は,数多く見られるが,延髄前面にまで延び,多彩な症状を示した1症例を経験した.本例のごとく,MRIにより,血管撮影では造影されない血栓化した血管奇形と,延髄自体の変化を証明した報告はまだ少なく治療上の問題点とも関連して,文献的考察を加えて報告する.

成人期に発症したTethered CordSyndrome—1治験例と56文献例

著者: 山村明範 ,   丹羽潤 ,   端和夫 ,   中村徹

ページ範囲:P.69 - P.73

I.はじめに
 腰仙部脂肪腫やtight film terminaleなどの奇形によって引き起こされるtethered cord syndromeの大部分は,新生児期から小児期にかけて発症するが1,10,11),稀に成人期に初めてこれらの症状が発現する場合もある3,13).これらは臨床病態として興味ある一群をなしているがその臨床像に関する詳細はよく知られていない.われわれは腰仙部脂肪脊髄髄膜瘤によりtethered cord syn—dromeが成人期に発症した症例を経験した.本症例の報告と共に過去の報告例を検討し,成人期に発症したtethered cord syndromeの臨床所見・tetheringの原因疾患・手術成績及び成因の特徴について報告する.

家族性に発生した脳内海綿状血管腫

著者: 金秀浩 ,   光野亀義 ,   石川正恒 ,   菊地晴彦 ,   本崎孝彦 ,   山本豊城

ページ範囲:P.75 - P.79

I.はじめに
 脳内血管奇形のうちcavernous angiomaは稀な疾患と考えられてきたが,X線CTの出現により報告例は増加してきた.さらに,極めて稀であった脳内cavernousangiomaの家族発生例の報告も徐々に増え,遺伝様式についても次第に明らかにされてきた.最近われわれは同一家系同一世代6人中4人の脳内cavernous angiomaの症例を経験し,このうち3例は手術を行い病理組織学的に確認された.また1例については家族発生例であることをあらかじめ予測した上で診断と治療を行い得た.脳内cavernous angiomaの家族発生例は早期診断,早期治療の観点から重要であると考えられるので,症例を呈示し文献的考察を加えて報告する.

Vacuolated Meningiomaの1例

著者: 国塩勝三 ,   松本健五 ,   槌田昌平 ,   中村成夫 ,   西本詮 ,   田口孝爾 ,   溝渕光一

ページ範囲:P.81 - P.86

I.はじめに
 Meningiomaは髄膜に発生する腫瘍で,特定の組織学的entityを意味するわけではなく,多くの組織分類の試みがある.今回variantの一つとして考えられている極めて稀なvacuolated meningiomaの症例を経験したので神経放射線学的所見および病理組織学的所見を中心に,若干の文献的考察を加えて報告する.

頸静脈孔髄膜腫の1小児例

著者: 有田和徳 ,   魚住徹 ,   大庭信二 ,   斎藤裕二 ,   沖修一 ,   鈴木衛 ,   原田康夫

ページ範囲:P.87 - P.92

I.はじめに
 後頭蓋窩髄膜腫は髄膜腫中約10%16)を占めるが,頸静脈孔およびこの付近に発生する髄膜腫の報告は少ない.今回われわれは,頸静脈孔に発生し頭蓋内外に進展した小児髄膜腫の症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

上皮性嚢腫(Epithelial Cyst)の2例

著者: 欅篤 ,   牧田泰正 ,   鍋島祥男 ,   鄭台頊 ,   高橋潤 ,   新阜宏文 ,   宮本義久

ページ範囲:P.93 - P.98

I.はじめに
 CT, MRI等の画像診断法の進歩に伴い頭蓋内嚢腫性病変の診断は容易になりつつあり,嚢胞性腫瘍と非腫瘍性嚢胞の画像上の鑑別も可能な場合が多い.しかしながら,非腫瘍性嚢胞において,くも膜嚢腫と上皮性嚢腫(epithelial cyst)の鑑別は神経放射線学的手法によっても困難で,嚢腫壁を構成する細胞の組織学的検索によらねばならない15).今回,私達は臨床上,又画像診断上くも膜嚢腫が疑われたが光顕・電顕による組織学的観察により上皮性嚢腫と診断された2症例を経験したので報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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