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研究
症候性脳血管攣縮への血管周囲アシドーシスおよび血小板凝集の関与—実験的研究
著者: 木村正英1 鈴木重晴1 岩渕隆1
所属機関: 1弘前大学脳神経外科
ページ範囲:P.525 - P.531
文献購入ページに移動クモ膜下出血後の脳血管攣縮による脳虚血症状発現には,従来,血管の機能的あるいは器質的内腔狭窄による循環障害が重要視される傾向があったが,近年,血管内因子,特に血小板の役割も指摘されるようになった2,6,10,14),その機序として,血管攣縮発生が予測される症例では,脳血管は多量のクモ膜下腔凝血塊中に埋没して一定時間経過する事実から,凝血塊の嫌気的解糖によって生じる低pHの環境にさらされることが血小板凝集を引き起こす誘因となるとの意見8,9,10)があり,また,脳血管攣縮好発期の手術時,頭蓋内洗浄液には低pH値を示す生理食塩水は好ましくないという報告11)もある.しかし,クモ膜下出血後の脳血管攣縮あるいは脳虚血症状へのクモ膜下腔アシドーシスの関与を指摘した動物実験の報告は極めて少ない12).そこで,今回,実験的にクモ膜下出血を作成した動物の,クモ膜下腔を低pH溶液で灌流してアシドーシス環境の増強を行い,その虚血症状発現に対する影響を高pH溶液での灌流結果と比較検討したところ若干の知見を得たので報告する.
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