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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科18巻10号

1990年10月発行

雑誌目次

Leksell先生とガンマーユニット

著者: 大江千廣

ページ範囲:P.893 - P.894

 ストックホルムのカロリンスカ病院で,はじめてLeksell先生にお目にかかったのは確か,1970年の夏の頃で,私は群馬大学に移ったばかりでしたがLeksell式の器械を使ってステレオの仕事を始めようと計画をしていた時だったと思います.Leksell先生といえば言うまでもなくその頃でも大変御高名な先生でしたから,出かける前に恐る恐る手紙を差し上げたところ,大変優しいお返事をいただき先ずほっと一安心.お目にかかってみるとそのとおりにいつも笑顔を絶やさず,陽気で,話し好きでもあり,とても親切,それに白髪,長身の魅力あふれる先生のお人柄にたちまち魅せられてしまったものです.
 その時Leksell先生には私がこれから始めようとするステレオのことについて話を伺いに行ったわけですが,先生がみせて下さったのはそればかりではなく,その頃実用になりはじめたガンマーユニットでした,いまでこそこのガンマーユニットは世界中の脳外科医が熱い視線をもって注目しているものですが,その頃は本当に有効であるのかどうか,まだ疑問視されていました.

脳腫瘍の組織診断アトラス

(14)Histiocytosis X

著者: 和賀志郎 ,   伊藤浩二

ページ範囲:P.897 - P.903

I.名称,定義,分類
 Eosinophilic granuloma of bone(以下EGB),Hand—Schuller-Christian disease(以下HSC病),Letterer—Siwe disease(以下LS病)と別々に言われていた各疾患を1953年Lichtensteinは細網組織性肉芽腫を形成するものとしてHistiocytosis Xと総称した22).それ以来,異論はあるものの15,23,24,35),この名称が広く用いられるようになってきた.しかし,その病態は組織球の異常増殖を主体とし,骨,リンパ節,肺,皮膚などをおかす網内系疾患とされているものの,その本態については未だ十分解明されていない9,27,36).今まで臨床的にEGB,HSC病,LS病は一般的に次のように分類されている.
 EGB:頭蓋骨,その他の骨髄に単発または多発し, 病変部の疼痛,腫脹などの局所症状を呈するが,良  性の経過をたどるもの.

研究

脳血管攣縮におけるTranscranial Doppler Velocimeterおよび脳血流量測定の意義

著者: 水野誠 ,   朝倉健 ,   波出石弘 ,   西村弘美 ,   三平剛志 ,   鈴木明文 ,   安井信之

ページ範囲:P.905 - P.913

I.はじめに
 頭蓋内血管のDoppler法による血流速度(FV)の測定は開頭手術時4,15),あるいは子供におけるopen fontanelを通じてのみ14)測定されていた.これは従来のDoppler装置(5-10MHz)では,頭蓋骨が超音波の頭蓋内侵入を阻み大きな壁になっていたためである.しかしAaslidら1)はより低い1−2MHzのfrequencyでは骨による減衰作用がかなり弱まることから,1982年2MHzのTranscranial Dop—pler(TCD)装置の開発に成功し,非侵襲的に頭蓋内主要血管のFVが測定可能となった.以来,臨床応用の報告が散見されている2,9,10,13).一方,破裂脳動脈瘤患者に発生する脳血管攣縮(VS)は予後を左右する重要な因子であるが,脳が非可逆的な虚血状態に陥る以前にVSの発生を捉らえ,しかもその進行程度を把握し得る簡便な検査法が待ち望まれて来た.

Diffuse Axonal InjuryのCT診断

著者: 岩立康男 ,   小野純一 ,   興村義孝 ,   須田純夫 ,   礒部勝見 ,   山浦晶

ページ範囲:P.915 - P.920

I.はじめに
 閉鎖性頭部外傷において,びまん性脳損傷はつねにある程度存在すると考えられ4,8,25),臨床症候学的には意識障害の程度により脳しんとうから一次性脳幹損傷にいたる種々の病態をもたらす2,9,22).その力学的機転の中心をなすのが回転加速度により生じるshear strainであり8,10),びまん性脳損傷重症例は,その発生機序からshearing injuryとも呼ばれている11,27,34,35).このshearstrainがaxonal retraction balls, microglial clusters, de—myelinationといった不可逆性の形態学的変化を,脳梁・脳幹を含めた脳全体にびまん性にもたらす場合がAdamsらの定義したDiffuse Axonal Injury(DAI)である1),すなわち,DAIは基本的に病理学的な概念であり,Gennarelliの臨床上の分類9)ではsevere DAIが最もこれに近く,予後はきわめて不良である1,2,8,9)

聴神経鞘腫「術後」のMRI所見—特に内耳道内で観察される「神経浮腫」について

著者: 関谷徹治 ,   岩淵隆 ,   岡部慎一 ,   石井正三

ページ範囲:P.921 - P.926

I.はじめに
 聴神経鞘腫のMRIによる術前診断に関しては,すでに多くの報告があり,その有用性はすでに確立している3-5,7,8).しかし聴神経鞘腫「術後」のMRI所見については充分な検討がなされていない.本研究では聴神経鞘腫の術前,術後のMRI所見を比較検討し,特に術後内耳道内で観察される所見について詳細な検討を行い二,三の知見を得たので報告する.

頭蓋内血腫溶解に関する研究—特にTPA及びその合剤の局所投与に関する基礎的研究

著者: 蛯名国彦 ,   岡部慎一 ,   真鍋宏 ,   岩渕隆

ページ範囲:P.927 - P.934

I.はじめに
 最近,各施設で普及しつつある定位的脳内血腫吸引除去術に於いて,その凝血塊の安全かつ速やかな除去が最も重要な問題の一つである2,3,7,10,11).一方,脳動脈瘤の最も緊要な術後合併症の一つであるvasospasmの直接的誘因はクモ膜下腔内血腫と考えられ1),ために脳動脈瘤根治手術に続いて広汎血腫除去術6,13)やクモ膜下槽ドレナージ21)などが試みられているが,その侵襲の大きさや効率の面で未だ議論が多い16).これらの血腫を安全かつ迅速に溶解,排出し得るなら,その効用は,きわめて大きいものがある.しかし,血管外に存在する血腫の溶解に関する知見は未だ少なく,また現在臨床に供されているurokinaseのみでは,その溶解能は低く,十分目的を達しているとは言えない17,21).そこで,今回は種々の溶解剤,特にTD−2061, tissue plasminogen activator(t—PA)の局所投与に於ける有効性,毒性,臨床応用の可能性について検討してみた.

腎癌脳転移の治療成績の検討

著者: 渋井壮一郎 ,   西川亮 ,   野村和弘

ページ範囲:P.935 - P.938

I.はじめに
 腎癌は肺・リンパ節・骨など広範囲に転移を来しやすく,脳転移も剖検例の10-20%に認められると言われている3,6,10).腎癌の脳転移は肺癌に比べ,予後は比較的良好とされているが,一方では放射線治療に比較的抵抗性であるともいわれ1,4,7),肺癌などとは異なった腎癌独自の治療計画が必要である.今回,われわれの経験した腎癌脳転移例について,各種治療法による成績を比較するとともに,bromodeoxyuridine(BrdU)標識率などからその生物学的特徴を調べ,この疾患に対するより効果的な治療法の検討を行った.

悪性髄膜腫の検討

著者: 小島精 ,   和賀志郎 ,   伊藤浩二 ,   松原年生 ,   久我純弘

ページ範囲:P.939 - P.946

I.はじめに
 髄膜腫は一般に良性腫瘍と言われているが中には組織学的に悪性像を示すもの,また臨床的に再発もしくは再増大を示すものがしばしばみられる.しかしながら悪性髄膜腫の組織像に関しては多くの研究がなされているにもかかわらず未だ厳密な定義はなく,議論の多いところである.
 われわれは手術治療を行った25例の悪性髄膜腫を含む110例の頭蓋内髄膜腫の長期Follow-upを行ったので,その組織学的特徴と臨床経過を比較検討し報告する.

症例

後頭骨巨大骨腫の1例

著者: 西谷和敏 ,   岡島和弘 ,   津田敏雄

ページ範囲:P.947 - P.952

I.はじめに
 頭蓋骨骨腫は,日常臨床において比較的よくみられる良性頭部腫瘍であるが,小さなものが多く,そのまま放置されることが多い.
 今回,われわれは,後頭骨に発生し,小脳の圧迫が示唆された,比較的稀と思われる巨大な頭蓋骨骨腫の1例を経験したので,症例を呈示するとともに,若干の文献的考察を加え報告する.

新生児期に発症したAVMの1例

著者: 宇野昌明 ,   上田博弓 ,   大島勉 ,   松本圭蔵 ,   泉谷智彦 ,   三宅一

ページ範囲:P.953 - P.958

I.はじめに
 脳動静脈奇形(以下AVMと略す)は先天性疾患であるにもかかわらず,新生児期に脳内出血で発症する例は非常に少ない.今回われわれは生後12日目に脳内出血で発症したAVMの1手術例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

Anterolateral Approachにより全摘し得た第4胸椎巨細胞腫の1例

著者: 大槻浩之 ,   井須豊彦 ,   岩崎喜信 ,   小柳泉 ,   秋野実 ,   阿部弘 ,   岡安健至 ,   金田清志

ページ範囲:P.959 - P.962

I.はじめに
 骨巨細胞腫は長管骨骨端部に好発する骨腫瘍であり,椎体に発生することは比較的稀である.本腫瘍は放射線治療により悪性転化することがあり,外科的治療が第一選択と思われる.
 今回われわれは,第4胸椎椎体に発生し硬膜外より脊髄を圧迫し対麻痺を星し,Anterolateral Approachにより全摘し得た骨巨細胞腫の1症例を経験したので報告する.

小脳症状にて発症した頭蓋内舌下神経鞘腫の1例

著者: 山口文雄 ,   高橋弘 ,   岡田卓郎 ,   矢嶋浩三 ,   中澤省三

ページ範囲:P.963 - P.967

I.はじめに
 頭蓋内神経鞘腫は全脳腫瘍のうちの8%を占め,そのほとんどが聴神経および三叉神経より発生し,他の神経より発生するものは甚だ少ない.頭蓋内舌下神経鞘腫も極めて少なく,現在われわれが渉猟し得た限りでは40例が報告されているに過ぎない(Table1).この診断には舌下神経麻痺症状が重要で,CTや断層撮影などの画像診断とともに診断の有力な根拠となっている.今回われわれは術前に舌下神経麻痺がなく小脳症状のみを呈したため確定診断が甚だ困難であった舌下神経鞘腫の1例を経験したので報告する.

両眼外転位を呈したDisproportionately Large Communicating Fourth Ventricleの2症例

著者: 岡部慎一 ,   尾金一民 ,   鈴木重晴 ,   岩渕隆 ,   乙供通則

ページ範囲:P.969 - P.973

I.はじめに
 Disproportionately large communicating fourth ventricle(以下DLCFV)はisolated fourth ventricle(以下IFV)と同様に第4脳室が嚢状に拡大するものの,中脳水道が開存し,側脳室—腹腔短絡管(以下V-Pシャント)設置後にその縮小をみるもので,1980年,Scottiら9)により提唱された.今回われわれは,それぞれ脳動静脈奇形および脳動脈瘤破裂による脳室内血腫鋳型形成後に全脳室系特に第4脳室が拡大し,それに伴って,両眼外転位を呈した2症例を経験したので報告し,第4脳室拡大および両眼外転位の発現機序に関し若干の文献的考察を加えた.

V-P Shunt Tubeによる下行結腸穿通—腹壁膿瘍を形成した1例

著者: 小笠原邦昭 ,   金子宇一 ,   石橋孝雄 ,   崎村恭也

ページ範囲:P.975 - P.978

I.はじめに
 脳室腹腔短絡術(以下V-P Shunt)後合併症のうち腹腔側に関するものとして,感染,チューブの屈曲,閉塞,腹腔内の嚢胞形成,腹水貯留,臓器穿通等が報告されているが,このうちシャントチューブによる腸管穿通は稀とされている7).今回われわれはV-P Shunt6年後に偶然に無症候性の腹側チューブによる下行結腸穿通を認め,その1年後に腹壁膿瘍を形成した症例を経験したので報告するとともに,その機序について考察を加える.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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