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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科18巻9号

1990年09月発行

雑誌目次

背中

著者: 児玉南海雄

ページ範囲:P.795 - P.796

 脳神経外科医を志してから20数年がすぎる.この間,忙しく飛び廻り,一見たくさんの仕事をこなして来たかの如くに見えるが,ふり返って愕然とする思いがつよい.
 主たる仕事は,診療・研究・教育であるが,独断と偏見から言わせてもらえば,診療は身内を診る心算で進めてゆけば大きくはずれる事はないだろうと思われる,研究も未知の解決に対する意志と情熱を持続させて行けば,容易ではないが,それなりの成果が得られるような気がする.

総説

エンドセリン

著者: 沢村達也 ,   木村定雄 ,   眞崎知生

ページ範囲:P.797 - P.806

 エンドセリンは血管内皮細胞の培養上清中より発見された21アミノ酸残基よりなるペプチドである1).血管のトーヌスを調節する系として神経系やホルモンと同様に血管内皮細胞が重要であることが認識されてきた時に発見され,しかも血管平滑筋に対して非常に強力で持続的な収縮を惹起することからエンドセリンの発見以来2年間の間に爆発的に研究が行われてきた.
 現在では,エンドセリンは血管平滑筋のみならず,種種の組織に対し作用し,多彩な生理作用を持つことがわかっている.さらにエンドセリンは血管内皮細胞だけでなく,腎尿細管や気道などの上皮細胞や神経細胞でも産生されていることが明らかとなっており,非常に広範な役割を生体内で演じているものと考えられる.また病態との関連も報告されてきており,種々の病態の機構を解く鍵となるかが注目される.

研究

偽膜性大腸炎の臨床的検討—脳神経外科の立場から

著者: 菅原厚 ,   蝦名一夫 ,   平野友久 ,   大井洋

ページ範囲:P.807 - P.812

I.はじめに
 偽膜性大腸炎は抗生物質投与によってClostridiumdifficile(以下,C.difficile)の異常増殖がおこり,大腸に散在性の偽膜形成を伴う炎症性疾患である1,9).脳神経外科領域においても抗生物質を投与する機会が多く,本症に遭遇する危険性がある.
 過去3年間で6例の偽膜性大腸炎併発例を経験し,とくに主症状である下痢に注目し,脳神経外科の立場で臨床的検討を行ったので報告する.

短潜時体性感覚誘発電位による頭蓋内病変の臨床生理学的診断—その意義と限界について

著者: 永廣信治 ,   松角康彦 ,   生塩之敬 ,   福村昭信

ページ範囲:P.813 - P.819

I.はじめに
 体性感覚誘発電位(SEP)は各種の神経疾患における体性感覚路の機能診断法として用いられ,特に最近の短潜時成分の研究3,4,9,11,12)により,その臨床的有用性は一層高まってきた.著者らも短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)各成分の発生起源を明らかにするために,臨床例による検討や術中直接記録を行ってきた14-16).今回は頭蓋内病変を有する多数の臨床例におけるSSEPの検索から,SSEP異常型の分類を行い,その診断的意義及び脳血管障害や重症頭部外傷の予後判定におけるSSEPの有用性と限界について検討したので報告する.

小脳梗塞—自験33例の検討

著者: 安藤隆 ,   坂井昇 ,   山田弘 ,   服部達明 ,   三輪嘉明 ,   平田俊文 ,   田辺裕介 ,   大熊晟夫 ,   船越孝 ,   高田光昭

ページ範囲:P.821 - P.828

I.はじめに
 小脳は側副血行が豊富なため,虚血症状を呈しにくく小脳梗塞の発生頻度は稀とされてきた.しかしながら最近,画像診断技術の改善などにより本症の発見率は増加し報告も多く見られる様になった.小脳梗塞には症状が軽微で偶然CTスキャンで発見されるものから,梗塞に伴う広汎な浮腫により脳幹を圧迫するもの,さらには脳幹梗塞を併発し急激に死の転帰をたどるものがみられる.今回,われわれは小脳梗塞を33例経験したのでその病態,治療法などについて検討を加え報告する.

BRW型CT定位的脳手術装置を用いた悪性グリオーマに対する密封小線源治療

著者: 松本健五 ,   富田享 ,   桜井勝 ,   前城朝英 ,   重松秀明 ,   松久卓 ,   津野和幸 ,   国塩勝三 ,   三島宣哉 ,   古田知久 ,   西本詮

ページ範囲:P.829 - P.836

I.はじめに
 今回,われわれは,再発または脳深部に限局した悪性グリオーマに対して,BRW型CT定位的脳手術装置を用いた密封小線源治療を行ったのでその方法を紹介すると共に,その有効性及び問題点について若干の文献的考察を加え報告する.

開頭術の脳循環代謝に及ぼす影響—PETによる未破裂脳動脈瘤根治術での検討

著者: 鐙谷武雄 ,   佐山一郎 ,   朝倉健 ,   波出石弘 ,   水野誠 ,   鈴木明文 ,   安井信之 ,   宍戸文男 ,   上村和夫

ページ範囲:P.837 - P.844

I.はじめに
 開頭術自体の脳循環代謝に及ぼす影響を明らかにすることは,手術施行例で脳循環代謝の変化を評価する場合に重要である.なぜなら,術前後で測定された脳循環代謝の変化が病態の変化だけではなく,手術操作の影響も含んでいる可能性があり,それを無視し得ないと思われるからである.また,脳循環予備能の低い症例では,手術の操作自体が脳循環代謝の抑制を引き起こし脳虚血の合併症をおこす可能性もあり,それを予見する上でも重要である.今回われわれは未破裂脳動脈瘤症例で開頭術前後に15O標識ガスsteady state法を用いたPET(positron emission tomography)studyを施行して,開頭術(動脈瘤clipping術のための全ての操作を含める)の影響を明らかにすることを試みた.

症例

全摘したPineocytoma

著者: 新島京 ,   米川泰弘 ,   生田房弘

ページ範囲:P.845 - P.849

I.はじめに
 松果体部腫瘍は諸外国に比して,本邦に多いとされているが,脳腫瘍の中では稀な部類に属する.しかも,その大半はgerminomaであり,松果体そのものから発生した腫瘍は更に稀で,中でもpineocytomaの報告は少ない.
 Pineocytomaの1症例を経験し,この腫瘍の全摘を行って良好な結果が得られたので,若干の考察を加えて報告する.

前方除圧のみにより消失した外傷性脊髄空洞症の1例—脊髄空洞症の外科治療に関する示唆

著者: 鳴海新 ,   齊木巖 ,   木戸口順 ,   金谷春之 ,   富田幸雄 ,   阿部弘

ページ範囲:P.851 - P.854

I.はじめに
 脊髄空洞症の外科的治療法に関しては種々の方法があり意見の一致を見るにいたっていないのが現状である.20年前に頸髄損傷を受け,最近になり神経学的悪化をきたした患者について精査したところ,C5椎体の脱臼骨折による頸髄の著明な圧迫所見に加えその部より上位(C5—C2)に脊髄空洞症を合併していた.この患者に対し,前方除圧術を施行したところ,syrinxの消失と神経学的改善が認められたので,その詳細を報告するとともにその治療法について若干の考察を加える.

放射線照射後,頭蓋内主幹動脈の多発性閉塞及び狭窄を認めた1例

著者: 加藤正仁 ,   上山博康 ,   阿部弘 ,   会田敏光 ,   瀧川修吾 ,   黒田敏

ページ範囲:P.855 - P.859

I.はじめに
 脳腫瘍に対する放射線療法の効果は,現在広く認められている.一方その合併症についても,急性のものから遅発性のものまで種々知られており中枢神経系の血管に対するものは小血管病変を中心に数多くの報告がある.しかし,放射線照射後の脳主幹動脈の傷害に関する報告は比較的少ない.今回われわれは,放射線照射後,右中大脳動脈水平部の完全閉塞,両側の脳主幹動脈の多発性狭窄並びに,モヤモヤ様血管の新生をきたした1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

小脳Gangliogliomaの1例

著者: 木村正英 ,   鈴木幹男

ページ範囲:P.861 - P.865

I.はじめに
 GangliogliomaはCourville1)が命名して以来報告が散見される稀な脳腫瘍であるが,小脳の発生例はさらにその約1割で絶対数は極少数である.最近われわれは小脳gangliogliomaの1例を経験した.そこで文献的にその臨床像を検討するとともに組織学的診断上および画像診断上の問題点について考察する.

上小脳動脈末梢部嚢動脈瘤の1例

著者: 伊東山洋一 ,   植村正三郎 ,   濱田潤一郎 ,   萬谷昭夫 ,   生塩之敬

ページ範囲:P.867 - P.870

I.はじめに
 後頭蓋窩の脳動脈瘤で上小脳動脈末梢部に発生するものは比較的稀であり,今まで約20例の報告を見るに過ぎない4).最近われわれは右上小脳動脈のcorticalbranchに発生した破裂脳動脈瘤を手術する機会を得たので,若干の文献的考察を加えて報告を行う.

Staged Operationにて全摘出しえたLarge Basal Ganglia AVMの1例

著者: 堤一生 ,   塩川芳昭 ,   久保田勝 ,   青木信彦 ,   水谷弘

ページ範囲:P.871 - P.876

I.はじめに
 出血で発症した基底核脳動静脈奇形(AVM)は他の部位のAVMに比べ再出血率が高く保存的治療の予後は不良であるため何らかの治療が必要とされる4).しかし周囲を重要構築に囲まれ深部に位置するためその摘出術は容易ではない.術後の合併症を考えると,その手術適応には慎重にならざるを得ない1,8).斎藤10)はその手術適応を①出血,特に血腫がある,②AVMが比較的小さい,③脳室と関係がある,④神経症状がある,と述べているが現時点においては少なくともこれらの条件の3つを満たすものに手術は限られるであろう.基底核AVM手術の報告は散見されるが2,3,6,8,15,16),そのほとんどは小さなAVMであり大きなものはinoperableとされているのが現状と思われる.今回,われわれは最大径5cmの基底核外側部AVMをstaged operationにて全摘出する機会を得たのでその詳細に付き述べ考察を加えた.

脊髄動静脈奇形を伴ったKlippel-Trenaunay-Weber症候群の1症例

著者: 唐梃洲 ,   高木卓爾 ,   永井肇

ページ範囲:P.877 - P.881

I.はじめに
 Klippel-Trénaunay-Weber症候群は臨床的に,1)四肢における片側性の骨格と筋肉の肥大,2)血管性母斑,3)血管系の形成異常が3大特徴とされている.この症候群のなかで血管系の形成異常として脊髄動静脈奇形を伴うことは比較的稀で,文献的には過去に19例しか報告されていない.
 今回,著者らは脊髄動静脈奇形を伴ったKlippel—Trénaunay-Weber症候群の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

報告記

第4回国際脳血管攣縮カンファレンスについて

著者: 佐々木富男

ページ範囲:P.883 - P.883

 佐野圭司東京大学脳神経外科名誉教授が会長となられ,第4回国際脳血管攣縮カンファレンスが平成2年5月16日−18日の3日間,東京の虎ノ門パストラルで開催された.日本,米国,カナダなど15カ国から基礎および臨床の研究者245名(日本:185名,海外:60名)が参加して,クモ膜下出血後に発生する脳血管攣縮の発生機序や治療法などについて活発な議論が交わされた.
 発表の内訳は,教育議演(7題),シンポジウムI & II(11題),一般講演(92題),ポスター(47題)であった.
 脳血管攣縮の発生機序に関して,プロティンキナーゼCの関与を示唆する演題が幾つか発表され注目されていた.内皮細胞傷害との関連においては,内皮依存性弛緩の障害のみならず内皮由来収縮因子であるエンドセリンの関与も新たに示唆され,その妥当性と問題点について議論された。

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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